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――夜の港。人気のないコンテナ街。
ひとつのコンテナの上に、 灯は腰かけていた
星明かりが水面に反射し
微かに“糸”のように揺れている
朱鷺 トキ
朱鷺の声は、ほんの数メートル後方から
聞こえるが、その姿は見えない なぜなら
朱鷺は、“糸の繭”の中にいた
灯特製の“結界”――繭結界(コクーン)
これも灯の異能力「白い罠」の 一つの性質
その内部で、朱鷺は冷静にノートPCと通信機器を操作していた
朱鷺 トキ
灯 アカリ
灯 アカリ
朱鷺の声は、繭の内から灯の耳元へ
一本の糸を通じて届いている
いわば、戦場の指揮官と刺客の秘密通信だ
そしてそのとき――
中原中也
‘‘狩る側’’のように
重たい足音とともに、 地面を靴音が打った
風を切るように、ひとりの男が姿を現す
中原中也
その体から、地面を歪ませるような圧が広がっていく
灯 アカリ
灯 アカリ
声が糸を通じて小さく届く
朱鷺 トキ
朱鷺 トキ
灯 アカリ
中也は帽子を軽く押さえ、構える
中原中也
中原中也
中也はしゃがみ込み地面を触る
その瞬間、地面が陥没した
灯が立っていた足場ごと 重力がねじ曲がり、破壊される
けれど、彼女の姿はすでに空中
灯 アカリ
障害物の間に張られた無数の糸を足場に
灯は空中を舞う
中也が追撃しようと足を踏み出すと
――その瞬間、空間が変わった
細い糸が数十本、空に網のように広がり、戦場をまるごと封鎖していた
中原中也
灯の姿はすでに戦闘態勢
無数の糸を駆使し、空中を跳ね、斬り、縛り、建物ごと切り裂く
朱鷺は“何もない空間”に、静かに座っていた
灯の張った**極細の“糸の繭”**が、彼女を全方位から覆っている
異能も、すべて遮断する“隠れ処”
朱鷺はその中から、音声通信で灯に指示を送っていた
朱鷺 トキ
灯 アカリ
灯 アカリ
爆風が起きる。 中也の重力が地面をめくり、 建物の外壁が崩れる
だが灯は笑っていた
灯 アカリ
灯 アカリ
灯 アカリ
灯 アカリ
空間のすべてに糸が張り巡らされている
立体機動で翻弄する灯
読みで操作する朱鷺
ふたりは、完全に“狩る側”だった