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俺の名前は寒谷(かんこく) 日向(ひなた)。高校3年の歴とした受験生だ。もう既に季節は冬である。
今日は毎年恒例となっている行事、クリスマスの前日。
暗澹、憂鬱と言った感情を忘れ去るために、窓に視線を遣ると大変都合の良いことに光の粒のような雪がしんしんと降りしきり、閑静な住宅街を真っ白に染め上げている。
そして、家々の壁や木々に飾り付けられたイルミネーションやオーナメントが、純白一色となった街にアクセントを与え、色鮮やかな景色へと一変させていた。
日向
椅子に座り机に片膝をつきながら、今頃、街中ではとても幸せそうなカップルが跋扈しているのだろうなと考える
彼女どころか好きだと思えるような異性も居ない。街中の広場や公園でクリスマスを満喫している人達の蚊帳の外で、家族とクリスマスをひっそりと過ごす俺は一層虚しく感じた。
こんな今の自分を変えたいと常に考えつつも、そうは問屋が卸さない自分の意識に辟易する毎日。
いっその事、俺が女の子だったら良いのに。そしたらきっと、消極的で、自分に自信が持てない今とはまた違う結果になっていたはずだ。
ふと思い立ち、机の上にあった小さなノートのページを切り離すと、その紙にサンタクロース宛ての手紙を書き下ろす。至って内容は簡単だ。
日向
無理難題なのは承知だった。でも、
俺には今の自分を根本から変える手段などこれ以外に考えられない。そもそも論を言えば、俺はサンタの存在など信じていないが。
日向
机のランプと外の光のみが照らす暗い部屋で一人ぐちる。誰にも届かせる気のない、いや、届いたら人間関係に亀裂が入りそうな願いを記した紙を折り畳むと、枕の片隅に潜ませた。
俺は灯りを消して、毛布に包まり就寝の準備を済ませる。
軽い木製ドアのノック音と共に母親の「ちゃんと寝なさいよ、おやすみ」という声が部屋に入り込んだ。
俺はそれに条件反射の如く雑な返事をすると、大した期待もせずに瞼を閉じた。
次回 TS