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千堂和葉は、昔から「比べられること」が苦手だった。
勉強でも、部活でも、友達関係でも。
誰かと並べられるたび、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
「和葉って優しいよね」
そう言われても、(本当は“あの子”の方が優しいでしょ?)と心の中で呟いてしまう。
塾の帰り道、星七と並んで歩くときも同じだった。
彼は何気ない一言で笑わせてくれるし、時々すごく頼もしい顔をする。
隣にいるだけで安心する――それでも和葉の胸には、言葉にできないざわめきが広がっていく。
千堂 和葉
夜、布団の中で体を小さく丸める。
昼間は笑顔でごまかせても、ひとりの時間になると、不安が押し寄せてくる。
千堂 和葉
口に出すと、余計に切なくなった。
他の誰かに勝ちたいんじゃない。
ただ、比べられない関係でいたいだけなのに。
その夜、スマホが震えた。
星七からのメッセージ――
海堂 星七
他愛ない言葉。
でも、和葉の胸は少しだけあたたかくなる。
千堂 和葉
答えはない。
けれど、和葉はどこかで信じたかった。
――この人なら、きっと。