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メイカ

ユーウーゴー!

メイカ

あんたのせいでショウリがペナルティ2になっちゃったじゃないのよ!

メイカに気が重くなるセリフで詰め寄られる。

ぼくより身長が低いのに、迫力のせいで自分より大きく見える。

ユトリ

ま、待ってください。
私もユウゴさんも、同じくペナルティ2になってしまいましたし

メイカ

そんなもん、あんた達の実力じゃないの。

メイカ

ショウリは邪魔されて、ペナルティが増えてんのよ

ユトリが間に入って仲裁してくれたけど、言い返され、あっさりと論破された。

ショウリ

ま、待って……メイカ、はや……速い……

かなり遅れて、ショウリが息を切らせながら走ってきた。

ショウリ

とにかく、待って……

ショウリ

くれなかったみたいだね

顔を真赤にしているメイカ、 青い顔をしているぼく、 困り顔のユトリ、 少し離れてニヤニヤ顔で我関せずのアルク。

この5分ほどで起こったことの大体は察したみたいだ。

ショウリ

メイカ、あやまりなさい

メイカ

なんでー、だってユウゴが変な魔法を使ったせいじゃん

ユウゴ

うぐっ

これを言われると、何も言い返せない。

ぼくの闇《ケイオス》の魔法は、いまだに正体不明で不安定。

ストリクト先生にも、ブロンズクラスになり魔法の基礎を身につけるまでは使うなと、何度も念押しに釘を刺されていた。

ショウリ

アミ戦は実力勝負なんだ。
他の誰かを責めたところで、結果が変わるわけじゃないだろ

メイカ

でもでも~

ショウリの理路整然とした説得に、それでも納得いかない様子のメイカが頬をふくらませる。

ただ、次の言葉が出てこない。

アルク

まー、ショウリもそのくらいにしなって。

アルク

ユウゴにクリアの邪魔をされたのは間違いないんだからさ

離れて見ていたアルクが2人の間に入る。

それを言い出したら、アルクがレイド戦にぼく達を巻き込んだのが原因な気もするけど、話がさらにこじれそうな気がするから黙っていた。

アルク

彼氏が退学リーチになったら、誰かのせいにしたいって思うでしょ

メイカ

ふえっ?

アルクに頭をぽんと叩かれると、メイカの動きが一瞬止まり、顔がさらに赤くなっていった。

メイカ

か、かか、か、彼氏とか違うし。そういうの知らないし。

メイカ

ただ、ショウリが可愛そうって思っただけだし。

メイカ

ほんと、違うし

両手をバタバタと振って、メイカがしどろもどろになって、早口でまくし立てる。

いつものショウリべったりな態度からは、想像できない反応だ。

ショウリ

落ち着いて、6つ数えようね

ショウリがメイカを抱きとめて、背中をポンポンと叩いてなぐめる。

メイカは

メイカ

違う、違うもん~

を何度もつぶやきながら、少しづつ落ち着きを取り戻していった。

ユトリ

アルクさん、相手は9歳の子供なんですから

アルク

あいつ、年下って気がしないのよね

それは同感。

態度が大きいのもあって、いつも同級生か年上かとも思ってしまう。

メイカはショウリにまかせるとして、1番の問題は放置されたままだ。

さっきのレイド戦で未クリアになった、ぼく、ユトリ、ショウリの3人はペナルティ2になってしまった。

ペナルティが3回付くと、クラスが1段階降格になる。 ノービスクラスの場合は、下のクラスがないので問答無用で退学になってしまう。

そのため、ノービスクラスでペナルティが2回付くことは、退学リーチと呼ばれている。

ブロンズクラス以上であれば、降格を避けるためにペナルティ2になったらアミ戦を避ける生徒もいると聞いたことがあるけど、ノービスクラスには魔法の授業がない。

属性別の魔法訓練授業はあるけど、それは魔法になれるためのもので、本格的に学べるわけではない。

魔法を学ぶ機会がないのに、アミ戦を避けて、アミキティア魔法学校にい続けることに意味はない。

ストリクト先生

退学リーチの生徒が出たと聞いたから、誰かと思って来てみたら、君達ですか

ストリクト先生が音もなくあらわれた。

一切の比喩なしで。

歩いて来たのでも、飛んで来たのでもなく、気がついたらそこに立っていた。

突然話しかけられたようなビックリ感もない。

ずっとそこにいたけど、ただ会話に参加していなかっただけかのように、自然に話しかけられ、ぼく達も受け入れていた。

ストリクト先生

見れば、入学早々騒ぎを起こした者ばかり。

ストリクト先生

あの時から想像できていた事が、ただ起こっただけですね

アルク

あたしはクリアしたよー

メイカ

ショウリがクリアできなかったのは、ユウゴとユトリのせいだよ

ストリクト先生の小言に、アルクとメイカが反論する。

いつの間にか、戦犯にユトリの名前も加わっているし。

ショウリ

話がややこしくなるから、メイカはさがっていようね

ショウリがメイカの肩をつかんで、強めに引っ張ってさがらせた。

ストリクト先生

退学リーチになったのは、ユウゴ、ユトリ、ショウリの3人ですか。

ストリクト先生

生徒の中にはペナルティ2になるとアミ戦から逃げ続けて、何年もただこの学校に籍だけを置き続ける者もいます。

ストリクト先生

教師としては望ましい姿ではありませんが、個人の価値観は人それぞれですから、それも生き方のひとつでしょう

ユウゴ

でも、ぼく達はノービスクラスなので……

ストリクト先生

ノービスクラスでは魔法の授業は受けられないから、この学校にただいても意味はない。
ですね?

ユウゴ

は、はい

ストリクト先生

そのためには無理をしてでもアミ戦を行い、クリアして10ポイントを稼がねばならない。
ですね?

ユウゴ

は、はい

ストリクト先生

しかし、アミ戦の競技は事前にわからないから、自分が不得手な競技になってしまう可能性もある。
ですね?

ユウゴ

は、はい

ストリクト先生の話は、いつも高圧的だけど、理論的でわかりやすい。

ぼく達が置かれた状況を、綺麗にまとめてくれた。

アルク

そんな事はわかってんのよ。

アルク

ユウゴ達が次のアミ戦で絶対クリアできる裏技でもあるってんなら聞くけど

アルクが業を煮やして口を挟む。

ぼく達のために言ってくれてるんだろうけど、心証がよくない。

ストリクト先生

神聖な学び舎のシステムに、裏技や抜け穴などあるはずがないでしょう

ごもっともな答え。

ストリクト先生

ですが、正攻法ならあります

その一言に、ぼくの肩がピクッと震えた。

ユウゴ

今、裏技はないって

ストリクト先生

学び舎は神聖なものだとも答えました。

ストリクト先生

学び舎とは、未来ある若人の貴重な青春と未来を無駄に浪費させないためにあるのです

アルク

せんせー、言い方がすっごいまどろっこしいです。

アルク

未来ある若人の時間を無駄に浪費してまーす

アルクぅぅ、急にケンカ腰になるのやめてー。

アルクが一言しゃべるたびに、心臓がつかまれる思いだ。

ストリクト先生

ノービスクラスの生徒が退学リーチになった時、1度だけ使える救済処置があります

ストリクト先生が、ぼく、ユトリ、ショウリの顔を順に見てから言った。

ストリクト先生

名称は、リバイブ・サバイバル。

ストリクト先生

退学リーチになった生徒だけを集めて行う、チーム制のアミキティア・サバイバルです

ユウゴ

チーム制ってことは、ぼく達3人で同じアミ戦に挑むってことですか?

ストリクト先生

そうなりますね

メイカ

あたしもやる。
ユウゴ達と一緒じゃ、ショウリが退学になっちゃう

メイカが手を上げて主張する。

ひどい。

けど、今の状況だと否定しきれない自分が情けない。

ストリクト先生

リバイブ・サバイバルに参加するのは退学リーチの生徒だけです。

ストリクト先生

それに未クリアになったとしても退学にはなりません

ユウゴ

未クリアの場合、ペナルティ3になってしまいますけど?

ストリクト先生

言ったでしょう、救済処置だと。

ストリクト先生

リバイブ・サバイバルは、参加した時点でペナルティはリセットし、未クリアでもペナルティはつきません。

ストリクト先生

反対に、クリアできた場合のポイントは、きちんと加算されます

ユトリ

それは、お得ですね

ずっと緊張していたユトリの表情が少しほころんだ。

たしかに話を聞く分には、いい事ずくめな気もする。

ショウリ

やるのは今すぐですか?

ショウリが疑問を投げかける。

ストリクト先生

時間をかけて考えたりするようなことはないでしょう

ストリクト先生の言うとおりだ。

リバイブ・サバイバル……リバ戦は、やるかやらないかの2つに1つ。

やれば退学リーチがなくなり、やらないなら退学リーチの状態で自力でアミ戦に勝たなければならない。

2択の選択に見えて、実質一択。

ぼく達には、やる以外の選択はない。

ストリクト先生

早く決めてください。

ストリクト先生

くわしい説明は、移動した先で話します

ガイド妖精が1体飛んで来て、扉に変化する

いつものようにガイド妖精が変化した扉で移動するようだ。

ユウゴ

ぼくは、やります

ぼくがまっ先に手を上げた。

退学リーチのまま寄宿舎に帰っても、ナミスケに馬鹿にされるか、シシロウに見下されるかだ。

ユトリ

私も、やります

続いてユトリも参加表明に手を上げた。

ショウリ

ぼくも……

メイカ

待って!

最後にショウリが手をあげようとした時に、メイカがさえぎって止めた。

ショウリ

でも、このままだと退学リーチで

メイカ

5分。

メイカ

ううん、3分でいいから待っていて!

ショウリがこたえ終わらないうちに、メイカがスケボーに乗って走り出した。

かと思ったら、近くを歩いていた生徒にぶつかってトラブった。

ガイド妖精が飛んで来て、アミ戦が始まる。

秒でメイカが未クリアで負けた。

すぐに走り出して、また別の生徒にぶつかる。

後の流れは同じ。

メイカがスケボーに乗って、シャーっと戻ってきた。

メイカ

退学リーチになったので、あたしもショウリと一緒に、それやります

ストリクト先生

当たり屋みたいな真似をするんじゃありません!

ストリクト先生に普通に怒鳴られた。

メイカ

でも退学リーチだし。
ペナルティ2だし

ストリクト先生

ううーん

ストリクト先生が腕を組んで苦虫を噛み潰したような顔で考え込む。

ストリクト先生

……通りなさい

メイカ

やったー!

ショウリ

もう、無茶しないでよね

ショウリが力なくつぶやく。

まだリバ戦を始める前なのに、ものすごく疲れた顔をしている。

ストリクト先生

では、リバイブ・サバイバルの参加者は、ユウゴ、ユトリ、ショウリ、メイカの4人ですね

アルク

頑張ってねー

アルクが満面の笑みでぼく達を見送っている。

自分は安全圏にいるから、かなり気楽そうだ。

ストリクト先生

4人とも、無事にかえってくることを祈っていますよ。

ストリクト先生

教師として

アルク

えっ、ストリクト先生は行かないの?

ストリクト先生

リバイブ・サバイバルも、他のアミキティア・サバイバルと同じく、ガイド妖精が進行します

アルク

そ、そうですか~

アルクの表情が露骨に曇った。

笑顔だったのはストリクト先生と離れられると思っていたからか。

ストリクト先生

さて、アルクはこの後どうしますか?

アルク

寄宿舎で待ってまーす

扉が閉まったので、その後どうなったのかは、こっちからはわからなくなった。

アミキティア魔法学校の闇

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