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午前七時二十八分。空はまだ曇天を引きずっていて、春のはずなのに肌寒い風が吹きつける。

世一はベッドの中で目を開けていた。

起きてから三時間が経っていたが、身体は鉛のように重く、喉は何かに締めつけられているような感覚が続いていた。

世一

誠士郎……今日学校、行くやろ?

掠れた声で言うと、隣のキッチンから聞き慣れた足音が返ってくる

カチャリ

マグカップの音と、冷蔵庫の扉が閉まる音。だが返事はない

世一

……無視しないで

そう言って起き上がろうとした世一の腕を、誠志郎の手が掴んだ

誠志郎

まだ寝とき、世一。俺、別に行きたくない。今日くらいサボってもいいでしょ

穏やかな声。けど、それが嘘だと世一は分かっていた。誠志郎はいつだって「お前のため」に動く。

 学校に行きたがってるのは世一自身じゃなく、きっと誠志郎だった。世一が壊れた今、誠志郎まで壊れかけていた。

世一

……ほんとうに?

誠志郎

世一がいいんだったら、俺はいい。全部、世一に決めてほしい。おれは……世一がおればええから

その言葉は、心地良い毒だった。

その日の学校

誠志郎が登校すると、教室の空気が歪んでいた

玲王が前日の出来事を根に持っているのは明らかで、机に拳を叩きつけた音がまだ残響のように耳に残っている。

豹馬

なあ、誠志郎。ちょっと、話ある

声をかけてきたのは豹馬。いつも話しかけないでスマホを見ているやつ。

誠志郎

……別に、いいけど

廊下に呼び出され、豹馬は一瞬だけ真面目な顔になった

豹馬

玲王、かなりやばい。世一のこと、何か勘違いしてる。『誠志郎はまだおれのことが好き』って……あいつ本気で信じてる

誠志郎

……は?

誠志郎は額に手を当てて、眉をしかめた。言葉を選びかけて、やめた。

誠志郎

で?お前は、味方?

豹馬

俺? まあ……面白そうやから見てるだけ。けど、あいつが暴走したらお前も世一も終わるで

その頃、家では

世一は窓を見て、曇り空をぼんやり見つめていた。

あの事件以来、玲王の影がどこにいてもつきまとう。玄関のチャイムが鳴るたびに心臓が跳ね、誰かの足音がすれば息が詰まった。

世一

(なんで……俺、こんなんなってしもたんやろ)

自分でもわからない。いや、わかりたくないのかもしれない。

凪が玲王に会ってた——それだけで全身が崩れてしまう自分の脆さに。

夕方

カーテンを閉め、布団に潜った世一の耳に、玄関の音が届く

誠志郎

ただいま

誠志郎の声。温かくて、怖い。優しくて、苦しい。

世一

おかえり……

立ち上がろうとするも、身体が言うことをきかない。扉が開く音。そして誠志郎が静かに近づいてきて、世一の額に手を当てる。

誠志郎

熱……下がってない

世一

だって……なあ、誠士郎。俺、まだ苦しい

誠志郎

……うん、知ってる。全部、おれのせい

世一がゆっくりと顔を上げる。誠志郎の瞳が近くて、真っ直ぐすぎて、逃げ場がない。

誠志郎

なあ……“あれ”、またやる?

その“あれ”が何を意味するか、二人にはもう言葉なんていらなかった。

凪の部屋で二人は新しいノートを開いていた

表紙には、赤ペンでこう書かれている

《二人だけのルール》

世一がペンを握る。誠志郎がそれを見守る。最初に書いた一行目は、こうだった。

「兄は弟を疑わない」

次に誠志郎が書く。二行目。

「弟は兄を絶対に裏切らない」

 その赤い文字が増えるごとに、部屋の空気が少しずつ閉ざされていく。

翌朝——

学校の門をくぐる誠志郎。いつもと同じ無表情。けれど、玲王はすぐに近寄ってきた。

玲王

おい、誠志郎。昨日、世一……泣いてたな?

誠志郎

……見てたの?

玲王

当たり前や。俺は、お前を誰にも渡さへん。アイツにもな

誠志郎の拳が震えた。だが、殴ることはしなかった。ただ一言

誠志郎

……放課後、来い。決着つける

next300♡and2comment

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コメント

3

ユーザー

伸びないので、続き書きます〜

ユーザー

なぜこのような神作がかけるのでしょうかぁぁぁ? 大好きですほんと

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