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君にだけ、全部見せたい

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君にだけ、全部見せたい

1 - 第1話

♥

26

2025年07月15日

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女友

おはよー優斗〜!

教室に入ってきた女友達Aが、優斗に手を振った。優斗はにこっと微笑みながら手を振り返す

優斗

おはよ、今日も早いね

女友

だってさ〜!今日転校生来るんでしょ?それ聞いて、朝からそわそわ止まんなくて!

女友達Bも机にドカっと鞄を置きながら加わる

女友2

「イケメンらしいよ〜?前の学校じゃファンクラブとかあったとか…

女友

やば!めちゃくちゃ楽しみ!

優斗

(転校生かぁ…俺とは関係ないかな)

心の中でそう思いながらも、教室のざわめきにどこか居心地の悪さを感じていた。教室の窓から見える桜は、もうほとんど散っていた

チャイムが鳴る直前、担任の中谷先生がドアを開けて入ってくる

中谷先生

はい、席につけー。…今日からこのクラスに新しい仲間が加わるぞ

ガラッ

その瞬間、空気が変わった。入ってきたのは、背が高くて整った顔立ちの少年。けれど、その表情には一切の感情がなく、教室を見渡す目はまるでガラスのように冷たかった

中谷先生

自己紹介、お願いできるか?

……魁。話しかけなくていい。以上

中谷先生

お、おぅ……

教室中が静まり返る。 けれど次の瞬間、女子たちから小さくも確かな「キャーッ」という声が漏れた

女友

(小声)「やば…ガチでかっこよくない?

女友2

(小声)「でもなんか怖い…近寄りがたいって感じ…

男友

なにあれ、態度最悪じゃん

男友2

マジ無理w初日からイキリすぎw

優斗は、魁のその“完璧すぎて浮いているような姿”を、ただじっと見ていた。冷たいようで、どこか、孤独を感じる目だった。

魁は無言で最後列の窓側の席に腰を下ろした。隣の席は、空席。もともと優斗の一つ後ろの席だ。

優斗は購買で買ったパンと牛乳を手に、静かな場所を求めて屋上へ向かっていた。生徒の出入りは少ない場所で、彼のお気に入りだった。

カチャ

屋上の扉を開けた瞬間、そこには見覚えのある後ろ姿があった。

……は?

優斗

あ、ご、ごめん!使ってた?

別に。出てけなんて言ってねぇし

優斗

(え、喋った…)

魁はフェンスにもたれたまま、優斗の方をチラと見て、また空を見上げる。

優斗

…一緒にいても、いい?

好きにしろ

優斗は隣のベンチに腰を下ろした。2人の間には風の音だけが流れる。しばらく無言だったが、ふと、優斗は思い切って口を開く

優斗

…さっき、男子に何か言われてたよね

……気づいてたか

優斗

……うん

前の学校でもそうだった。女には好かれるけど、男には嫌われる。…ウザいんだってさ

優斗

そっか

お前も、そう思ってんだろ

優斗

思ってないよ。……ていうか、なんでそんなに突き放すの?

自分を守るためだよ理解しろよ

その言葉が、風の中に溶けて消えた

その日以降、魁に対する男子の態度は明らかに悪意を含んでいた。体育のバスケでは、魁にはパスが回らない。グループワークでは、わざと魁を除外する。

男友

お前、イケメン気取ってんじゃねーよ

男友2

女にチヤホヤされて調子乗んな

魁は何も言わない。ただ黙ってそれを受け入れているように見えた。優斗はそれを見ていられなかった。 ある日、グラウンドの片隅。体育の授業終わり、魁のタオルが男子たちによって泥だらけにされていた。

優斗

ちょっと、やめろよ!

男友

は?なに、擁護してんの?

優斗

こんなの…いじめだよ!

その瞬間、空気が変わった。

男友

なに正義ぶってんだよ、優斗

男友2

へぇ〜優斗ってアイツと仲良しなんだ?

優斗

別に…そういうのじゃ…

……優斗、やめとけ

優斗

でも…

お前まで巻き込まれる。バカかよ

でも、その日から。 優斗の机には落書きがされ、ノートが勝手に捨てられていた。すれ違えば男子たちに肩をぶつけられ、体育ではシューズが隠されていた。

……言っただろ

優斗

でも、後悔してないから…

……お前、本当にバカだな

優斗

よく言われる

ふっと、魁の口元が緩む。 それは、ほんの小さな変化だった。でも確かに、それまでとは違っていた。

……お前の前だと、力が抜ける

優斗

…魁?

なんでもねぇよ

その日の帰り道、校門前で優斗は魁に呼び止められた。

優斗。……一個、聞いていいか」

優斗

なに?どうしたの

なんで、俺を庇った?

優斗

…なんでって…、放っておけなかったから

……そっか

優斗

理由なんて、そんなもんだよ

……優斗

優斗

ん?

お前って……ほんと、変なやつだな

優斗

…よく言われる笑

その日、魁はほんの一瞬――本当に一瞬だけ、優しく笑った。

その笑顔が優斗の胸の奥で、何かが小さく光った

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