主
主
8時半を過ぎると、教室はだいぶ騒がしくなった。
遠井さん
僕の近くに再びやってきた莉犬と向かい合って、 昨日のテレビの話や、漫画の話をして話していると、遠井さんがやってきた。
今日も相変わらず元気だ。
莉犬
ころん
遠井さん
胸を突き出して自信満々に答える遠井さんに莉犬が
莉犬
と笑った。
遠井さん
放課後開けといてよね。
と、付け加えられて何のことかと首をかしげると
遠井さん
と、あきれたように言われた。
そういえば、そんなことを言ってたっけ。
さとみ君からの手紙のことで、すっかり頭から抜け落ちていた。
莉犬
莉犬
遠井さん
僕を見て不思議そうな顔をした莉犬が問いかけてくる。
それに返事をしたのは遠井さんだった。
遠井さんの中では、僕が行くと返事したことで、相手が欲しいと解釈してしまったのだろう。
莉犬が、今度は僕に返事を求めるように
莉犬
と、真剣な顔で聞いてきた。
どう答えたらいいだろう?
遠井さんに誘われたから、という返事だと、遠井さんが強引に誘ったように思われるかもしれない。
でも恋人がほしいんだと思われたままで、今後合コンがあるたびに誘われるようになったら困る。
頭の中でぐるぐると考えを巡らせていると、莉犬が
莉犬
と言った。
莉犬
ころん
あまりに心配そうに言われて、しどろもどろになってしまった。
もしかすると、僕がさとみくんのこと好きだと思ってるから止めてるのかもしれない。
誘われると断れない気の弱い僕の性格をわかってるからこそ、心配してくれているのだろう。
莉犬
遠井さん
遠井さん
莉犬の発言に、遠井さんが少しすねたように唇を突き出す。
ころん
莉犬
今度は莉犬が少し怒った口調で言う。
はっきりって言われても、何を言えばいいのだろう。
遠井さんは遠井さんなりに僕のことを思って誘ってくれたと思うし、 莉犬が心配してくれているのもわかる。
2人ともちょっと誤解してるけど、そんなことは大した問題ではない。
どんな理由にしろ、『行く』といったのは僕だ。
えっと、ともう一度呟いてからゆっくり言葉を紡いだ。
ころん
ころん
ころん
でも、心配してくれてありがとう、と、最後に付け足した。
莉犬
遠井さん
莉犬はあまり納得できてない様子で、ほんの少し呆れたように肩をすくめた。
それに対して遠井さんは明るい声を出す。
けらけらと楽しそうに笑って言うものだから、莉犬もつい噴き出して
莉犬
なんて冗談を返す。
ほんの少し、微妙になった空気が遠井さんの豪快な笑顔によって洗い流されたようだ。
遠井さん
予鈴が鳴り、立ち去っていく、莉犬と遠井さん背中を見つめながら、 ほっと胸をなでおろした。
その場の空気を探りながら、無難な発言しかできない僕は、きっぱりはっきりと相手に意見を言える莉犬の性格にあこがれる。
けれど、莉犬の歯に衣着せない発言には、たまにひやりとしてしまう。
目の前で誰かが口喧嘩するようなことになってしまうと、本当にどうしていいかわからなくなる。
理性的な莉犬と、感情的な遠井さんの間では、さっきのように少し、不穏な空気になってしまうときがある。
そんな時、僕はいつも戸惑ってしまう。
それでも2人は仲がいいので、僕がひやひやする必要はないだろう。
一番の問題は、何も言葉にできない僕、か。
主
主
主
主
コメント
4件
え、大丈夫ですか?
大丈夫ですか!?!?!?😭