主
主
主
前からずっと思ってた。 自分を持っててかっこいいなって っていうか俺、気持ち悪いな リクエストボックスってこれでいいの? 放送委員のやつに見られねえの?
もしかしてと思い、放課後こっそり人目を気にしながら放送室前のリクエストボックスを見に行くと、折りたたまれたルーズリーフが入っていた。
今回も僕の返事の続きにさとみ君の返事が書かれている。
帰り道、何度も文章を反芻し、家に帰ってからも机の上で何度も何度もさとみ君の文字を見つめた。
“好きだ”から始まった会話。
始めは単語だけの、曖昧なやり取りだった。
けど、今はちゃんと会話になっている気がする。
どういう意味かと聞かれ、僕が答えて、さとみ君が返事する。
紙に連なる文字を順番に見つめていると、さとみ君と会話してるんだと実感する。
そして今までとは少しだけ違った気持ちが生まれてきたのが分かった。
嬉しいとか、楽しいとか、そんな感じ。
始めはあんなに複雑な気持ちだったのに、不思議だ。
なんとなく、引き出しにしまっていた最初の手紙を取り出した。
ノートの切れ端で、なおかつしわくちゃのラブレター。
ルーズリーフの彼の字は止めはねが大きく、さらさらと書いた感じがする。
習字を習っていたのだろうか。とても綺麗だ。
でも、僕の少し丸みを帯びた文字と並ぶと、一文字が大きく書かれているのがわかる。
The男の子という文字だとおもった。
でも最初に受け取った『好きだ』の文字はとても丁寧に書かれているような気がした。
文字がちょっと硬い。
紙はそこら辺にあるのを適当に選んだようだけど、書くのは少し緊張したのかもしれない。
さとみ
そう言ってくれるのは嬉しいけど、さとみくんが僕なんかを気にする理由がわからない。
前って、一体いつからだろう
何かきっかけになるようなものがあっただろうか?
話したことはないはずだ。相手がさとみ君だったら忘れるはずがない。
それに、“自分を持っていてかっこいい”だなんて。
誰のことを言ってるのかと不安になるほど僕に似合わない言葉だ。
自分でそんなこと思ったことがない。
むしろ真逆だと思っている。
友達に合わせてばかりの僕のどこを見て“かっこいい”なんて思ったのだろう。
そんなふうに思われる人になりたい。とは常々思っているけれど。
それでもさとみ君は冗談でそんなことを言っているわけではないことはわかった。
今日もすぐに返事をくれたくらいだ。
僕からの反応を待っていたのだろう
始めて手紙をもらった時よりも、彼の気持ちがうれしく感じる。
かといって。
ころん
口にして、うん、と自分で頷いた
今までの手紙にははっきりと書かれていなかったけど、彼は多分、“お付き合い”を求めているのだろう。
けど、相手も僕のことをあまり知らないに違いない。
きっとそうだ。
何か勘違いしているんだろう。
お互いによく知らない状態で付き合うのは無理だ。
知らないまま付き合ってうまくいかないことは、ななもり先輩と付き合ったことでよくわかってる。
ころん
ふうっと小さく息を吐き出して、最後にもう一度紙に目を通した。
“俺、気持ち悪いな”っていう一言にかわいらしさを感じてしまう。
さとみ君がこんなこと言うなんてイメージが全くなかった。
今までは、常に自分に自信があって、緊張したり、不安に感じることなんてないんじゃないかって思ってた。
勝手んそう思い込んでただけで、実際どんな人なのか、僕は全く知らない。
本当の彼はどんな男の子なんだろう。
主
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主
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コメント
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ブクマ失礼します!