テラーノベル
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*:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽:.。.. 好き、って、いつからだったんだろう。
──思い出すのは、あの日。 春の終わりかけ、少し肌寒い放課後。
急に降り出した雨に みんなが傘も持たずに笑いながら走り去っていく中、 私は屋根の下から出れずにいた。
諦めて濡れながら帰ろうと決心した私に、声をかけてくれたのが ──及川だった。
及川 徹
そう言って、ためらいもせず傘を差し出してくれて。 ふつうに言ったその一言が、なんだか優しくて。
秋保 楓花
及川 徹
誰かに優しくされるのって なんでこんなにあったかいんだろう。
きゅうっと胸の奥が苦しくなって、 でも、同時にとてもあたたかくて──
きっと、あの時から。 私は、及川のことが ずっと気になってたんだと思う。
傘の中で、彼の肩が濡れていくのを見ていた。 それを黙って見ていた、自分が悔しくて ほんの少しだけ、その袖の先に触れた。
気づいていたかは、わからない。 でも、私の中に芽生えた気持ちは── それからずっと、止まらなかったよ。
体育館の裏手 まだちょっと暑さの残る夕暮れ。 部活終わりの缶ジュースを片手に 俺はいつものメンバーと並んで腰を下ろしていた。
及川 徹
岩泉 一
及川 徹
松川 一静
花巻 貴大
岩泉 一
……びっくりして 思わず缶を落としそうになった。
及川 徹
岩泉 一
及川 徹
花巻 貴大
松川 一静
及川 徹
及川 徹
花巻 貴大
松川 一静
岩泉 一
及川 徹
岩泉 一
及川 徹
*:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽:.。. 体育祭
風が気持ちよくて 空が高く感じた日だった。
日差しがじりじりと照りつける午後、 グラウンドの熱気は まるで真夏みたいだった。
私は、借り物競争に出ることになって ドキドキしながらスタートラインに立っていた。
運動は得意じゃない。 競争なんて、勝てる気もしない。
そして、紙に書いてあった文字を見て 足が止まった。
──「好きな人」
喉が詰まるような思いがして 心臓がどくどくと脈打つ。 目の前が少し、にじんだ気がした。
「次の競技、借り物競争です。 出場者はスタートラインに並んでくださーい!」
昼過ぎのグラウンド。 暑さも少しやわらいできて、風が気持ちよかった。 応援席で水を飲みながらぼんやり眺めてると── 走者の列に、彼女の姿を見つけた。
及川 徹
スタートのピストルが鳴って 次々にクラスメイトが走り出す。 彼女は少し遅れて、掲示された「借り物」を読んで、ぴたりと止まった。
及川 徹
彼女の視線が、観客席にいる俺の方を向いて、止まった。
及川 徹
少し戸惑ったように眉を下げて それから、おずおずと小走りで こっちに来る。 そして
秋保 楓花
耳まで赤くしながら、そう言った。
花巻 貴大
松川 一静
岩泉 一
及川 徹
視線が集まってるのがわかる。 笑い声やひやかしも、全部聞こえる。 でも、俺の手を引いた彼女は、 顔を真っ赤にしながらも ちゃんと前を向いていた。
秋保 楓花
──そんなの むしろ嬉しすぎて、どうしたらいいかわからなかった。
及川 徹
秋保 楓花
──この日。 体育祭のグラウンドの真ん中で、 俺の世界は 彼女に全部塗り替えられた気がした。 あとでクラスメイトに めちゃくちゃ冷やかされたけど、 別にいい。 この記憶は、俺の宝物だ。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡30
コメント
1件
いいねありがとうございます(ノ*˙˘˙)ノ⌒♡