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*:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽:.。..。 及川と屋上でお弁当を食べていた昼休み

陽ざしは少し強くて でも、及川の隣にいるだけで それも柔らかく感じる。 風が吹いて、髪がふわっと揺れたとき――。

絵梨奈

……あれ、徹じゃん!

パキンと何かがはじけるような 明るくて澄んだ声がした。 振り返ると、 制服のスカートをひらりとなびかせて 一人の女の子が及川に駆け寄ってくる。

肌が透けるように白くて 瞳がきらきらしていて。 誰が見ても、きっと “ヒロインみたいな子”。

絵梨奈

久しぶりじゃん!
最近ぜんっぜん話してくれないんだから!

及川 徹

……絵梨奈ちゃん?
バスケ部で忙しいんじゃなかったっけ

絵梨奈

ちょっとー、それはこっちのセリフでしょ。
徹こそバレーばっかり!

笑い合う二人を、私はすぐ隣で見ていた。 気づかれないように、そっと目を伏せる。

絵梨奈

……誰?

絵梨奈さんがこちらを向いた。 その笑顔は、太陽みたいに明るいのに どこか、冷やかだった。

及川 徹

友達。
楓花ちゃんっていうんだ!

絵梨奈

へぇ……楓花ちゃん、か。
かわいい名前だね

徹と、仲いいんだ?

秋保 楓花

……あ、いえ、そんな……

絵梨奈

ふーん……でもさ、借り物競争で徹選んでたよね。
あれ、見てたよ〜

まるで何でもない話をするみたいに。 けれど私は、はっきりと“視線の温度”が変わったことに気づいていた。

*:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽:.。..。. 放課後の教室には、日差しの名残りと、 ざわめきの終わりかけた空気が残っていた。 私は、机に残ったプリントをまとめて 帰る準備をしていた。

他の生徒はもうほとんど帰っていて 廊下から女子グループが話している声が、風に乗って届く。

モブ

ねえ、聞いた?
絵梨奈ちゃんと及川くん、前に付き合ってたって話

モブ

うそ、マジ?
でもお似合いだよね。中学から一緒なんでしょ?

モブ

うんうん。お互いモテるし、顔面偏差値爆発してるってやつ〜

モブ

なんかね、今は違うけど、絵梨奈ちゃんまだ諦めてないっぽいよ。

指先から、持っていたプリントが ふわりと滑り落ちた。

秋保 楓花

……っ

音を立てないように拾いながら 私は息を詰めた。

秋保 楓花

(別に、誰が悪いわけじゃないよね......)

そう自分に言い聞かせても、心の奥がそわそわと落ち着かない。

モブ

でも最近、及川くん誰かと一緒に帰ってるらしいよ。
名前わかんないけど、ほら、体育祭の時の地味な子?

モブ

えー、まさか……あの及川くんが?

モブ

いやでも、絵梨奈ちゃんが本気出したら勝ちでしょ

笑い声が教室に響く。 私は、それ以上聞かないふりをして プリントをまとめて席を立った。   心臓が、少しだけ、早く鳴っていた。

及川 徹

今日さ、サーブ練習でマッツンの頭に直撃しちゃってさ

秋保 楓花

……ふふっ

及川 徹

で、そのあと普通に怒られた。
マジで怖かった

笑ってくれた。 けど、その笑顔はいつもより少しだけ小さくて、どこか遠かった。

言葉にはならない。 でも、なんとなく伝わってくる。 彼女の空気。目線の揺れ方。声のトーン。 全部、昨日までとは違ってた。

及川 徹

楓花ちゃん?

秋保 楓花

ごめんね。ちょっと、疲れてるだけ

そう言って笑った彼女の笑顔に 何かを誤魔化す気配を感じた。 彼女は、たまにそうやって、隠そうとする。 痛みも、不安も、誰にも見せないように――。

及川 徹

……楓花ちゃん、俺、なんかした?

秋保 楓花

え……?

及川 徹

なんか、今日……元気ないっていうか。
ちょっと、違う気がして

秋保 楓花

……大丈夫だよ

及川 徹

……そっか。でも、俺に話したくなったら、ちゃんと聞くから

話してくれなくてもいい。 でも、俺はいつだって 彼女の味方でいたかった。   それだけだった。

*:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽:.。..。 渡り廊下で見知った姿に出くわした。 絵梨奈さんだった。 制服のスカートが風で揺れて 髪が光を跳ね返している。

彼女は私に気づくと 微笑んで歩み寄ってくる。

絵梨奈

ねえ、秋保さん

秋保 楓花

……はい

絵梨奈

ひとつ、気になってたんだけどさ
……徹のこと、どう思ってるの?

まっすぐな瞳。 でも、その奥に 何か探るような鋭さがあった。

秋保 楓花

どう、って……

絵梨奈

別に責めてるわけじゃないよ。
たださ、あたし、徹と中学のとき同じクラスで、すっごく仲よかったんだ

秋保 楓花

そうですか

絵梨奈

徹ね、あたしの前ではよく笑ってたの。
今も、あの頃みたいに戻れたらいいなって……ちょっと思ってたところで

秋保 楓花

……それだけですか?

絵梨奈

ううん。ごめんね、変なこと言っちゃって

彼女は一歩、私の方に近づいてきた。

絵梨奈

ただ――
もし、徹の隣に立つなら
それなりの覚悟がいると思うよ

風が、窓から吹き抜けていった。 私の髪が揺れて、目にかかった前髪を 指で払う。

絵梨奈

あたし、徹のこと、本気で好きだから

𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡40

『君が教えてくれた空』

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