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設定:世一がカイザーの妹として生まれて、母に溺愛されてハリウッド女優として育てられたヨイチ。 (冴潔が強いので注意)
オギャァオギャァ
病院の一室に響き渡る生まれたばかりの赤子の鳴き声。ここはドイツのとある病院。そこに今日、新たな命が誕生した。産みの母はこれで2人目の出産。しかし、彼女は子供に興味などなく、1人目と同様にこの子も無情にどこかへ預け、捨てる気でいた。あくまで可愛いのは自分だけ。子供など足枷でしかない。
そう、赤子が誕生するまではそう思っていた。しかし、女は息を飲んだ。出産の痛みなど一瞬にして忘れ、自分の腹から生まれた子に目を奪われ、衝撃を受けた。
母
そう思うくらいには可愛らしかった。今まで仕事やメディアで見た赤子とは比べ物にならないくらいに愛らしいその容姿。きっとこの子は大物になる、そう直感した。自分の容姿を持ってして生まれ、圧倒的に引き継がれたほんのひと握りにしか手に入れることの出来ないその赤子ながらに端正な容姿。さすが自分の血筋を引くだけはある。しかも、女の子。このまま女優母娘で売り出せば間違いなく今後のスポットライトは私たちに当たる。そういうこともあり、女は2人目に生まれた赤子を捨てはせず、それは大事に育てた。
母
母
母
ヨイチ……
母
ヨイチ(幼少期)
そして、愛されて育ったヨイチは母親の期待以上に可愛らしく育った。人一倍周りに適応することが得意なヨイチは、子役としてデビューをした時には演技以外の、普段の生活面でも優しく素直ないい子だとメディアの中も外も構わず不動の人気を独占していた。楽屋やスタジオでは休憩中も同じ子役に引っ張りだこになって、先輩の俳優たちからはとても可愛がられ、紛れもなくヨイチの時代が作り上げられていた。
母
母
ヨイチ(幼少期)
母
ヨイチ(幼少期)
母
ヨイチ(幼少期)
バタンッ
8歳になったヨイチは、母が仕事で家を空けることは多かったが一日いないというのは初めてで、幼さも相まって少し寂しくなる。この家はこんなに大きく、寂しかっただろうかと思うとより独りだと感じてしまうので、ヨイチは普段お仕事が忙しくて出来ないことをして遊ぼうと思い至った。
ヨイチ(幼少期)
いくつも遊びを思い浮かべているヨイチは、一つ閃いた。今母がいないということは、普段あまりさせてもらえない散歩ができるのでは……?
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは、自分に兄がいることは知っていた。そして、母がその兄を捨てたのも。初めはなんて酷いことをするんだろうと母に少し嫌悪感を抱いたが、それでも自分を大事に育ててくれた母親だ。少なくとも、自分には愛情を注いでくれている。だから、兄を見つけた時には母に頼むんだ、一緒に暮らしたいって。
ヨイチ(幼少期)
母は私を産んだ病院で兄も産んでいた。つまり、あまり遠くには行っていないだろう。はやく兄に会いたい。でも、兄が今現在の生活……新しい家族が出来て幸せにしているんだったら、私にそれを邪魔する権利は無い。
ヨイチ(幼少期)
「ーーーーーー!!!!」
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは、勇気をだして大声と騒音がする路地裏を覗くことにした。スマホを片手に持って、いざと言う時に対応できるように。
そこで目にしたのは、1人の小さな男の子が数人の大きな大人の人に乱暴をされているところだった。何があったのか知らないが、これは止めなければと思った。止めなきゃ。
ヨイチ(幼少期)
口から出まかせのその言葉、大人の男の人達は自分よりずっと大きくて怖かった。声が震えたけど、それでも見て見ぬふりはできなかった。
男1
男2
そんな脅しめいたことを言う男と周りでくすくす嘲笑する男たちに対抗するように大きな声で電話を耳に当てて叫ぶ。
ヨイチ(幼少期)
男2
男1
男2
男たちヨイチの様子に少し焦ったように表情を変えて逃げて行った。ほっとした、すっと全身に入っていた力が抜けた。けれど、そんなこと気にしてられない。ヨイチは男の子の方を向いて尋ねた。
ヨイチ(幼少期)
男の子
ヨイチ(幼少期)
男の子
ふん、と鼻を鳴らして嘲笑ぎみに笑う男の子はヨイチに向けて笑っているのだろうか、それとも、自分に向けてか。それでも自分を蔑ろにするような発言にヨイチはむっとした。
ヨイチ(幼少期)
男の子
男の子
男の子は眉を顰めてそう言う。きっと、ヨイチが初めてなのだろう、自分を助けてくれた人は。今までは見て見ぬふりをされたのだろう
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
男の子は、驚いたように自分の砂や泥で汚れた手をなんの躊躇いもなく、握って真剣に話すヨイチを見た。なんて心が澄み切った綺麗な子なんだろう、こんなことを自分に言ってくれる人間は初めてだった。みんな路地を覗くが、何もせずに去っていくだけ。騒ぎを聞きつけた警察だって、スラムの子供だと知って雑な扱いをする。この子は、きっと自分とは、他の人間とは違う世界で生きている子だ。今まで1度も信じたことのない神や天使などにでも例えたいくらいに穢れのない子だ。
男の子
ヨイチ(幼少期)
男の子
ヨイチ(幼少期)
男の子
ヨイチ(幼少期)
男の子
ヨイチ(幼少期)
男の子
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
少し悲しそうに目を伏せて言うヨイチに、男の子はきゅっと唇を引き結ぶ。
男の子
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
「俺がお前の兄だと言ったらどうする?」と問いかけが終わる前に、ヨイチがカイザーに勢いよく抱きついた。それにカイザーは目を見開いて驚く。
ヨイチ(幼少期)
ヨイチから聞こえる声は震えていて、少し花をすする音も聞こえる。泣いているのだろうか、こんな俺なんかを見つけただけで。
ヨイチ(幼少期)
そう言いながら涙を流すヨイチにカイザーは複雑な感情を抱く。こんな自分の存在を感じて嬉し涙を流して抱きしめてくれることに嬉しさが込み上げると共に、ヨイチは何も不自由なく、自分と違って母に捨てられなかったという嫉妬や劣等感にも苛まれる。この傷一つもない体や綺麗で質の良さそうな服は、きっと自分の過ごしてきた環境と全く違うのだろう。
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
そう言ってヨイチの頬を伝う涙はなんて綺麗なんだろう。変かもしれないが、少しその美しい涙を流す姿に見惚れてしまった。息を飲んだ。なんの嘘偽りも無さそうな純粋な涙。だから、恨むことなんて、妬むことなんてできなかった。会ったばかりなのに、この子を、妹を愛おしいとさえ思えた。
ミヒャエル・カイザー
そう言って涙を拭ってやると、ヨイチは花が咲くような可愛らしい顔で嬉しそうに微笑んだ。ほんとに自分の妹だろうか、こんなに愛らしい天使のような子が自分と同じ血を継いでいるのだろうかとも思ったが、ヨイチに疑うような思いを抱くのを辞めた。信じよう、そう思った。
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは約束!と小指を差し出してきた。何かわからずにでも、同じように小指を差し出せば、ヨイチは小指を絡めてきた。そして、聞いた事のない言語で少し音を奏でた後に小指をはなした。
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
そう言って自分の傷や汚れだらけの手を握るヨイチの綺麗で柔らかい小さな手はとても温かかった。
ヨイチ(幼少期)
兄のカイザーと過ごすようになってからもう1年が過ぎた。ヨイチは、人気子役ということもあってなかなか時間は取れないが、今までの時間を埋めるように2人は会える時には思い切り遊んだ。母もヨイチが自分が前に捨てた息子と会っていることを知っていたが、ヨイチの頼みに弱いためそれを許していた。
そして今日は、兄が10歳の頃に所属し始めたバスタードミュンヘンというサッカーチームに見学に来ていた。ヨイチは、兄がサッカーを好きなことを知って一緒にサッカーをして遊ぶこともあったため、サッカーが好きだった。
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは全員がとてもサッカーを真剣にしていて、上手だが、兄が1番上手だと誇らしげにベンチに座って見守っていた。
モブ
モブ
モブ
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
ミヒャエル・カイザー
額に手を当てて大袈裟にやれやれといった素振りをするカイザーに、ネスはこんなカイザー初めて見た……、てか、サングラスにマスクをして帽子を被ってるから全然顔見えないから可愛いとかは分からないけどな……と少し引いていた。しかし、あのカイザーが言うのだからきっと可愛いのだろうとは思っていた。
そこに、タオルとドリンクを取りに来たノアがヨイチの座っているベンチに近づくと、ヨイチはあっ、と思って立ち上がってノアに近づいた。
ヨイチ(幼少期)
ノエル・ノア
ノアは、自分に近づいてくる小さな子供に少し戸惑う。お世辞にも子供に好かれるタイプではないため、どう接していいか分からないのだ。戸惑いながらも頭の中で確か、カイザーの妹だったな……と理解する。
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは、そう言うとノアに深々と頭を下げる。それにノアはギョッとする。まさか頭を下げられるとは思わなかったため少し焦る。しかし、こんなに小さいのに兄のために頭を下げることのできる性格や人となりに感心する。まるであの兄とは大違いだ。
ノエル・ノア
ノエル・ノア
ノアはそう言いながらヨイチに合わせて片膝を着いて怖がらせないように目線を合わせる。こんなに言葉を選んで話したのは初めてだと思いながらも、なぜだかこの子には優しく接したい。きっとこの子の周りを纏う空気が落ち着いているからこちらも穏やかになるんだろうと思いながら。
ノアの言葉にヨイチは、向こうには変装のせいで見えないが、ぱっと笑顔になる。兄がちゃんと受け入れられていて、認められている。こんなに嬉しいことは無い。この人もいい人そうだし、兄もサッカーができて嬉しそうだと兄が幸せそうで安心した。
ノエル・ノア
ヨイチ(幼少期)
ノエル・ノア
その名前を聞いてノアは驚いた。テレビや芸能界などに疎いノアでさえ知っている今、世間に注目されている人気子役。スポンサーのCMに出演してたな……と思い出した。まさか本人に会うことになるとは思わなかったが。
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
ヨイチはノアに興奮したようにシュートが凄い、パスも正確で、ドリブルも凄い!と褒めまくった。ノアも子供の素直な褒め言葉に照れ臭いが、温かい気持ちになった。素直に嬉しいと思った。
ノアが楽しそうに話すヨイチの言葉にうんうんと頷いて耳を傾けて聞いていると、遠くから殺気を飛ばしながらカイザーが向かって来た。
ミヒャエル・カイザー
ヨイチを自分の方へ引き寄せて腕の中に閉じ込めたカイザーは、ノアを睨んで威嚇する。そんなカイザーをヨイチは驚いたように見上げ、ノアはカイザーの態度と言葉を気にもとめず、全く2人は似てないなと改めて思った。
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチが注意をすると、カイザーはヨイチを見つめて捨てられた仔犬のようなシュンとした顔をして不安そうに言う。そんなカイザーにヨイチはカイザーの背中をトントンと優しく叩いて抱きしめ返す。
ヨイチ(幼少期)
そう言うと、カイザーは今度はぱっと満面の笑みを浮かべてぎゅっとヨイチを抱きしめて頬擦りをして可愛がる。じゃれつく犬のようにぶんぶんと尻尾を振る幻覚が見えそうなほどの喜びようにノアや周りのチームメイトたちは本当にカイザーか……?と若干訝しんだ。
アレクシス・ネス
ミヒャエル・カイザー
普通の女の子たちが見たら卒倒しそうな甘い表情と声をしてヨイチの頭を撫でながらカイザーは尋ねる。周りは誰だお前……と言いたげな顔でカイザーとその妹を見ている。しかし、そんな兄の言葉よりもヨイチはネスに興味を示した。
ヨイチ(幼少期)
アレクシス・ネス
ネスは、先程のノアとヨイチの話の内容が聞こえていたため、人気子役のヨイチに話しかけられて緊張していた。周りのチームメイトたちは羨まし気にそれを眺め、カイザーはネスを睨んでいる。
ヨイチ(幼少期)
アレクシス・ネス
ヨイチ(幼少期)
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは、まともに顔が見えない変装に気づき、そっとサングラスとマスクを外し、帽子を取る。周りは息を飲む。ほんとにテレビで見たヨイチがここにいるんだと。小さな顔に小さい鼻、ぷっくりとほんのりピンク色をしている小さな唇、大きな夜空のような青く綺麗な瞳、風に靡く青みがかったさらさらな黒髪。全てが完璧に整った美少女。よろしくと笑いかけられたネスは、純粋で柔らかなヨイチの綺麗な笑みに顔を真っ赤にした。アレクシス・ネス、この日初めて恋をした。
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
アレクシス・ネス
ヨイチ(幼少期)
アレクシス・ネス
ヨイチ(幼少期)
ネスが、ボールを借りに行くヨイチの後ろ姿をポーっと眺め、見惚れているといつの間にか背後にカイザーが立ち、ネスの肩に手を置いて圧をかけながら低い声で言う。
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
気持ちを見透かされたネスは顔を真っ赤にしてカイザーを振り返り、カイザーはヨイチの後ろを追いかけて歩いて行った。カイザーに服従を誓っていたネスは、頭を悩ませたが、それでも初めての感情を諦めたくなくて、ヨイチのことに関しては反抗することを誓った。
ヨイチ(幼少期)
アレクシス・ネス
そしてサッカーをしてあそび始めた3人。周り、そしてネスはヨイチのサッカーの才能に驚いていた。同年代で一番上手いカイザーに着いていくヨイチは、コントロール、ドリブル、シュート、フィジカルはやはり劣るが、カイザーに着いていく者なんて今まで見たことがない。どんなポジションでも適応し、力を発揮するヨイチに皆目が釘付けになる。
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
カイザーは、ハートを飛ばしてヨイチを抱きしめて頬擦りをしている。ヨイチは暑いな……と思いながらも嬉しそうに笑っている。
アレクシス・ネス
ヨイチ(幼少期)
アレクシス・ネス
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
ヨイチは仕方ないな〜と満更でも無さそうに兄を見て苦笑する。他所の兄妹よりもずっと兄の愛が重いことは分かってはいるが、それでも大好きな兄なので嬉しいことに変わりは無い。
ヨイチ(幼少期)
ノエル・ノア
ヨイチ(幼少期)
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ(幼少期)
そう言ってヨイチがぎゅっとカイザーに抱きつくと、カイザーは嬉しそうに微笑んで抱きしめた。どんなに離れていたって、会えなくたってお互いに一番大事に思いあっている兄妹だと自他ともに再確認する。
それから数年後……
母
ヨイチ
母
母
ヨイチ
母
母
ヨイチ
そう言うと、ヨイチは必要最低限の荷物だけを持って外へと飛び出して行った。
母
ヨイチ
ヨイチ
プンプンとしながらヨイチは荷物を手にバス乗り場に掛けていく。そのバスの行先は空港。そして、その空港の目的の便は……
ドイツのとある空港
ヨイチ
ヨイチ
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通話
00:00
ノエル・ノア
ヨイチ
ノエル・ノア
ヨイチ
ノエル・ノア
ヨイチ
ノエル・ノア
ヨイチ
ノエル・ノア
ノエル・ノア
ヨイチ
ノエル・ノア
ヨイチ
ヨイチ
ブツッ
ノエル・ノア
ノエル・ノア
ヨイチからの電話が突然掛かってきて柄にもなく少し浮き足立って出てみれば、何か決心したように電話で一方的に告げられてまたすぐに切られてしまったノア。他の奴なら知るか、と無視するところだがヨイチが相手ともなるとそうもいかない。相手は国内外問わず大人気のハリウッド女優、そしてノア自身も幼い頃から知っていて気に入っている子供だ。初めから選択肢はあってないようなものだった。
ノエル・ノア
そして、日本に到着……
ヨイチ
ちなみにノアのその優しさも世話焼きもヨイチ限定である。と、バスタードミュンヘンのメンバーがいたならツッコんでいただろう。ヨイチにはその自覚は無いが。
帝襟アンリ
ヨイチ
ヨイチ
帝襟アンリ
ヨイチは、アンリがあたふたとしているのに不思議そうにしていたが、あることに気づいた。自分は撮影など仕事で日本語に触れる機会があり、自分でも勉強したが、アンリはドイツ語が分からないのだと。ならば、少し歪だが日本語ができる自分が話さなければ。
ヨイチ
帝襟アンリ
ヨイチ
ヨイチは、友好的なアンリにほっとして手を差し出して握手を求める。それにアンリは少しドキッとする。相手はあのハリウッド女優のヨイチなのだ。緊張するなというほうが無理無理な話なのだ。
帝襟アンリ
ヨイチ
帝襟アンリ
ヨイチ
ヨイチ
ヨイチは車に乗り込むと、サングラスと帽子を外して変装をとく。仕方の無いことではあるが、やはり変装なんてしない方が楽である。そうして乱れた髪を整えて大人しく座っていると、ミラー越しに視線を感じ、そちらを見る。
ヨイチ
帝襟アンリ
ヨイチ
アンリとしては、車にヨイチが乗っていて運転をしていることが未だに信じられず、実際に目にすると画面越しで見るよりずっと可愛くて綺麗だなとドキドキとしていた。
帝襟アンリ
帝襟アンリ
ヨイチ
帝襟アンリ
帝襟アンリ
絵心 甚八
ヨイチ
絵心 甚八
ヨイチ
絵心 甚八
ヨイチ
帝襟アンリ
絵心 甚八
帝襟アンリ
帝襟アンリ
ヨイチ
ドイツ棟のグランドに着いたヨイチは、さっそく遠くに見える兄の後ろ姿を見つけて駆け出した。その途中で、カイザーの近くにいたネスやバスタードミュンヘンのメンバーが信じられないものでも見るかのように目を見開いてこちらを凝視していたが、カイザーは気づく気配がない。ヨイチは少し飛びつくようにカイザーに抱きついた。
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
少ししゅんとしたようにカイザーを見つめるヨイチに、カイザーは戸惑う。こんなに可愛い妹がこんなところにいたらすぐにとって食われてしまう。しかし、ヨイチとしばらく会えていなかったため一緒にいたいという気持ちで揺らぐ。
ヨイチ
ヨイチが甘えるように上目遣いでお願いしてきたことでカイザーの中でなにかがふっきれた。
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
そこで、固まっていた周りははっとして、ヨイチを囲む。
アレクシス・ネス
ヨイチ
ノエル・ノア
ヨイチ
ノエル・ノア
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ノエル・ノア
ミヒャエル・カイザー
バスタードミュンヘンの面々がわらわらとヨイチを囲む中、ブルーロックのドイツ棟の面々はぽかんとしている。それもそのはず、今絶大な人気を誇るハリウッド女優のヨイチがいるのだ。
黒名蘭世
氷織羊
雪宮剣優
イガグリ
國神 錬介
すると、こちらに気づいたヨイチはトコトコと近づいてきた。そして、カタコトの日本語で話し始める。(ブルーロック内で使われている翻訳のイヤホンがあることを知らない。バスタードミュンヘンと話す時はドイツ語)
ヨイチ
黒名蘭世
氷織羊
ヨイチ
雪宮剣優
ヨイチ
イガグリ
雷市 陣吾
イガグリ
國神 錬介
ヨイチ
と、ヨイチがキラースマイルをするものだから全員顔が真っ赤になる。なんて殺傷能力の高い笑顔だ。
氷織羊
ヨイチ
黒名蘭世
雪宮剣優
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
氷織羊
黒名蘭世
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
お昼になって、食堂へと来た。食堂ではドイツ棟以外の棟の人間も来るため、ヨイチの存在を知らなかった面々は目を見開いて固まっている。
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
氷織羊
黒名蘭世
雪宮剣優
氷織羊
黒名蘭世
凪 誠士郎
御影 玲王
周りがざわざわとしているが、ヨイチは慣れっこなためカイザーの席を確保して大人しく座っていると、1人近づいてくる。
御影 玲王
ヨイチ
御影 玲王
御影 玲王
ヨイチ
凪 誠士郎
御影 玲王
ヨイチ
凪 誠士郎
御影 玲王
凪 誠士郎
御影 玲王
ヨイチ
御影 玲王
ヨイチ
凪 誠士郎
何食わぬ顔でヨイチと話してる凪だが、心の中はお祭り騒ぎであった。
凪 誠士郎
凪は、玲王に体をのしかからせながらヨイチをじっと見つめて眺める。玲王は玲王で、こいつ……と呆れたような目で凪を見ており、ヨイチは首を傾げている。
ミヒャエル・カイザー
凪 誠士郎
御影 玲王
ミヒャエル・カイザー
ヨイチと自分の分のプレートを持って帰ってきたカイザーは、ヨイチがよく分からない紫と白の奴と楽しげに話しているのを目に入れると素早くヨイチを引き寄せて牽制をする。玲王と凪は不満そうにカイザーを見るが、ヨイチはお兄ちゃんお腹すいてるんだなと勘違いをしてすぐに席に座り直す。
ヨイチ
ヨイチ
御影 玲王
ヨイチは、隣にカイザーを座らせると、前と右前に凪と玲王を促す。カイザーは凄く嫌そうな顔をしたが、ヨイチはニコニコと嬉しそうにしているため、何も言えない。玲王はヨイチの前に座……ろうとしたが、凪が速攻でヨイチの前の席を確保したためカイザーの前の席に腰を下ろした。そして、あろうことか自分で箸を持って食事を始めた。それに驚いて玲王が凪を凝視していると、凪が視線だけをこちらに向けて首を傾げる。
凪 誠士郎
御影 玲王
凪 誠士郎
御影 玲王
凪 誠士郎
玲王が今までの凪の普段のだらけ具合を口にしようとすると凪が途中で口を挟むため、最後まで発言することが出来ない。そして、凪はヨイチのことをチラチラと見て反応を伺っているため、玲王は直感的に凪はヨイチの前では普段の様子を見せたくないんだろうなと察する。ヨイチはそんな2人の様子を気にせず日本のご飯美味しいと食べ進めており、カイザーは目を光らせて2人を見張っている。
御影 玲王
凪 誠士郎
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
千切 豹馬
御影 玲王
凪 誠士郎
千切 豹馬
御影 玲王
ヨイチ
御影 玲王
御影 玲王
千切 豹馬
凪と玲王の2人を追いかけてきたらしい千切は、不満そうに2人に文句を言いながら玲王の隣に座る。そして、とんでもないオーラを感じて斜め前を見ると何度ネットで見たかも分からない美少女が座っており、思考停止をしていたが、玲王がヨイチを紹介する時にヨイチの名前を呼んで思わず声を張る。そして、それにひき付けられたようにタイミングを見計って他の面々も近づいてくる。
乙夜 影汰
烏 旅人
蜂楽 廻
ヨイチ
友好的なみんなにヨイチは、嬉しいとニコニコと微笑む。それに周りも雰囲気が柔らかくなり、騒がしさも増す。
千切 豹馬
蜂楽 廻
御影 玲王
ヨイチ
氷織羊
黒名蘭世
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
ヨイチ
そうわーわーと騒いでいると、食堂にまた1人やって来た。その1人はこのいつも以上に騒がしい食堂の様子に眉をひそめ、舌をひとつ打つ。そして、自分の分の昼食を取ると騒ぎの中心から離れた席に腰を下ろして黙々と食べ始めた。それに気づいたのは蜂楽だった。
蜂楽 廻
ヨイチ
蜂楽 廻
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
蜂楽が凛のことをヨイチに紹介していると、「糸師」という苗字にヨイチが反応し、目を輝かせる。その反応に周りは不思議そうにし、カイザーやネスなどドイツの面々は顔を顰める。そんな周りを気にもとめずヨイチは席から立ち上がり、凛に近づいてどこかわくわくとした様子で凛の顔をまじまじと見つめる。
ヨイチ
糸師 凛
凛は、突然近づいて来る気配に顔を顰め、顔をあげるとハリウッド女優のヨイチだったことと顔が思った以上に近かったため、一瞬狼狽える。
糸師 凛
サッカーバカの凛がなぜハリウッド女優のヨイチの存在を認知できているかと言うと、兄である冴の影響であった。
糸師 凛
凛は、糸師冴が相当なヨイチのファンだったなと思い返した。ロック画面はもちろん、ヨイチが出た映画は全てチェックし、雑誌は必ず買い、今でも時々実家(両親宛)にヨイチの布教に来る程だ。……自分とこじれた後のことだから自分としては知ったことでは無いが。
クソ兄貴のことはさておき、なぜこのハリウッド女優は俺を嬉々としてじっと見つめているのだろうと、凛は思った。なんせ、今日初めて会ったため今までに面識なんてあるわけが無い。そして、気にすることでもないが周りからの視線が刺さる。
そして、次の瞬間に凛はヨイチに手をぎゅっと握られた。ヨイチを見ると感激したような顔をしているため、いつものように無下にしずらいと凛の少なからずあった良心が言う。そして何より、悪い気がしないのである。兄と一緒であるのは大変遺憾ではあるが、女性の趣味が一緒らしい。つまりどういうことかと言うと、凛はヨイチの純粋な曇りなき眼で見つめられて転がるように恋に落ちたのである。自覚するといろいろと気づくこともある。
糸師 凛
糸師 凛
ヨイチ
糸師 凛
そうこうしていると、やっとヨイチが話し始める。とっさのことでドイツ語が出るが、ブルーロックのメンツは翻訳機を使用しているため、問題はなかったのだが……発言内容に問題があった。世の中聞かない方がいいものもあるのである。
ヨイチ
ヨイチ
ヨイチ
そう発言し終えるとヨイチはわくわくとした様子で凛を見つめて答えを待っている。周りの全員がピシッと固まり、空気が凍りついたとも気付かずに。兄であるカイザーは、凛とヨイチが話している時点で凛に飛びかかりそうな勢いだったが、ドイツの面々に羽交い締めで抑えられていた。その体勢でヨイチから出てくる言葉を聞いて顔は鬼のようである。そして、言われた側の凛は何を言われたのか理解が出来なかった。
糸師 凛
ヨイチ
ヨイチ
ヨイチ
ヨイチ
糸師 凛
ヨイチは、凛が答えないのは日本語で話していなかったからだと思い、日本語で言い直す。その事で聞き間違えや翻訳機の故障ではなく本当にヨイチの口からそう告げられたのだと断定された。凛は、初恋をした途端に兄に既に囲われていたと知り、顔に青筋を立てる。そして、羽交い締めにされていたカイザーはとんでもない筋力で振り切り、ヨイチの元に駆けつけて肩に手を置いて震えた声を出しながら揺すって鬼の形相のまま問いかける。
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
アレクシス・ネス
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
カイザーは、すごい勢いで捲し立てて結婚に猛反対する。糸師冴なんかに大事な妹が取られるなんて冗談じゃない。そもそも、どんな野郎が相手でもカイザーは許すつもりはない。ヨイチの1番大好きな相手は自分でないと許せないのだ。
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
糸師 凛
しかし、カイザーが述べた冴の人物像を言うと、ヨイチの中で美化されすぎているらしいと糸師冴を知るみんなは思った。
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
カイザーから反対され、大好きな兄から祝福されないのだと悲しくなったヨイチが大きな瞳からポロポロと涙を零す。すると、カイザーはギョッとして慌ててヨイチを慰めようとするが、ヨイチはすっかりへそを曲げてしまっている。
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
アレクシス・ネス
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
???
ミヒャエル・カイザー
糸師 凛
ヨイチ
糸師 冴
ヨイチ
糸師 冴
ヨイチ
糸師 冴
糸師 冴
ヨイチ
なんと、ヨイチがここにいると聞きつけて冴が駆けつけてきたのだ。そして、他のメンツに目もくれずにヨイチのそばに行き、ヨイチの涙を拭って優しく寄り添っている。ヨイチ以外のみんなはそんな冴を信じられないものを見るような目で見ている。
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
糸師 凛
凪 誠士郎
御影 玲王
烏 旅人
乙夜 影汰
氷織羊
ヨイチ
糸師 冴
糸師 冴
糸師 冴
ヨイチ
糸師 冴
ヨイチ
ヨイチ
糸師 冴
ヨイチ
ヨイチ
ヨイチ
糸師 冴
ヨイチは既に17歳を迎えているため親の同意なしでも籍を入れられるから入れたいと言う。冴との仲をアピールしたいのもそうだが、サエの悲しそうな微笑む顔を見て決意が固まったからである。冴はそんなヨイチを感激したように抱きしめ、ヨイチも抱きしめ返す。……冴が計画通りとでも言うように悪い笑みを浮かべているとも知らずに。
全員(わざとヨイチの同情誘っただろ、コイツ……!!)
糸師 冴
ヨイチ
糸師 凛
糸師 冴
ヨイチ
ミヒャエル・カイザー
糸師 冴
ミヒャエル・カイザー
ミヒャエル・カイザー
ヨイチ
糸師 冴
ヨイチ
糸師 冴
そして冴がヨイチをエスコートして行ってしまった。そして、絶望して意気消沈しているカイザーがそこには残されていた。
ミヒャエル・カイザー
アレクシス・ネス
アレクシス・ネス
ミヒャエル・カイザー
ネスは、自分の失恋の痛みも抱えながらカイザーを慰め、冴の化けの皮を剥がすことを提案する。カイザーはそんな提案に悪い笑みを浮かべ、計画を練る為に部屋へと戻って行った。
蜂楽 廻
千切 豹馬