名家の女は素性を隠す。

呆れたような顔をし、 部屋を出ようとする夫

リビングのドアが 冷たく閉じられる。

これは約2年前、 私がまだ子を身篭っていたときの話。

ﾂｰ　ﾂｰ

その後、私の娘は生後1年もしない内に 天国へ戻ってしまった。

乳幼児突然死症候群であった。

悲しみに明け暮れていた私に届いた 元旦那からの連絡は私を嘲笑うかの様な内容だった。

自分は働き口が見つかりそれなりに稼いでいる。 浮気相手の女とは結婚してよろしくやっている。 浮気相手の女も子供を身籠った為、 お前との子供が死のうと構わない。

くだらない事をずらずら並べ、 その後も執拗に私と浮気相手の女を比べるような 文章が送信されてきた為 兄さんと葵姉さんの勧めにより連絡先はブロックした。 娘も死んだ今、アイツとの繋がりは一つもない。 娘はきっとそんな私の事をわかっていたんだ。 娘は勿論可愛かった。大切だった。宝物だった。 だけどやはりアイツの顔が浮かぶ。 次に誰かと幸せに成れた時、 あの子はきっと私の元へ帰ってきてくれる。 そう信じることにした。

娘との突然の別れから数ヶ月後、 なにもしないわけにも行かず私は数年振りに 吸血鬼殲滅隊に戻る為の準備を始めた。