日向
柚
日向
最後の授業の後、 日向がすかさず窓際の、 あたしのもとにやってきて、 机に手をつき、 窓の向こうのグラウンドをながめた。
柚
日向
無駄な肉の一切ない、 綺麗な腕が目の前にあって、 少しドキンとする。 …白いシャツが、 日向が開けた窓から入ってきた風により、ふわっと浮き上がる。
日向
柚
日向
もちろんあたしも、 雨の日が大嫌い。 だって日向が笑ってくれないから。 好きな人には笑っててほしいから。 …そして晴れの日は大好き。 日向が誰にも見せない笑顔を、 私に見せてくれるから。 その時だけは私が日向を独り占めできる… なんちゃって。
部員
柚
部員
柚
ーーーーーー高校1年になったこの春、 あたしはマネージャーとして、 陸上部に入部した。 小さい頃から日向に影響されたせいで、 見る専門だけど、 あたしも陸上大好き人間に、 なっていたから。 …うん。 決して不純な動機じゃない。
柚
ジャージに着替えて、 必要な用具を出して揃えたり、 ライン引きをしたり。 それが練習前に終わらせておかないと、 いけない仕事。
柚
現在の陸上部マネージャーは、 あたし1人だから、 けっこう大変だ。 その理由はこの藤島学園の、 陸上部員かわ非常に少ないから。 1年生2人と2年生4人、 夏の大会で引退してしまう、 3年生3人というなんとも悲しい状況。 ただ陸上は団体というより、 個人の実力勝負だから。 …メンバー一人一人が、 本当に見事な実力を誇っている、 この陸上部は、 毎年優秀な成績を残しているのだ。 特に…。
顧問
日向
顧問
日向
部員
…1年生にして地区大会優勝、 県大会と楽々コマを進めてしまった彼は、 間もなく"藤島の風"と、 呼ばれるようになっていた。
日向
柚
表彰されたその日の帰り道、 日向は凍ったペットボトルの中身を、 ガラガラ振って歩きながらそう言った。 そりゃ…大騒ぎしますとも。 だって1年生になって最初の大会から、 いきなり優勝だよ?
柚
ペットボトルを日向の手から、 奪い取って振り回しながらそう言うと…
日向
あたしの額を日向がピンと弾いた。 日向の指先がほんの少し触れるだけで、 あたしはドキドキしてしまう。
…柚と日向って付き合ってるの?
何度もみんなにされる質問。 その度にあたしは、 同じ答えを繰り返す。
そんなんじゃないよ
…そんなんじゃない。 小さい頃から日向の、 背中ばかり追いかけて。 日向が好きなものを、 一緒に好きになってきたけど。 でもきっと日向にとってあたしは、 そんなんじゃない…。
あたしの恋心は…真っ暗になっていく。 叶わないと分かっているから… もう日向のそばにいることすら、 怖くなってしまった…
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