金平糖、砂糖の花
私は桃色のそれをひとつ取り 太陽の光に透かす
机に花越しの光が散る
杏
この金平糖は不思議な力があり 食べた人の行方が 急に途絶えるという
噂では、一番戻りたい過去に 行くことが出来ると 言われている
杏
好きだった「彼」を 交通事故から守りたい
彼がいなくなる 一カ月前の事故の日まで。
金平糖を舌の上で転がす 途端、私は交差点に立っていた
杏
目の前に「彼」がいた
「そんで、最近ストーカー女がうざくてさー」
交差点を渡る彼は 隣を歩く女にそう言った
「それって杏っていう人でしょ? 大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、あいつ、見てるだけで何もしてこないから
ただ、限度ってあるよな。さすがにキモい」
杏
そんな風に思われていたんだ。
好きでいたかったのに 彼には余計だった
ガリッ
口の中に金平糖が散った 途端、日の光が差す机、
「彼」の写真が数十枚 貼られた私の机が見えた
杏
彼への想いを綺麗な花に するまで頑張ったのに
食べたら一瞬で消える綿飴の ようなものがいいのだろうか
写真を机から剥がして それを破っていく
彼のことを 好きなふりをしていた。 それが私なのだろう
金平糖はもう どこにも無かった
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