柴本 桃花
柴本 桃花
柴本 桃花
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
庭球HSS杯
「この大会、溝口圭佑も出るんだろ?」
「大会の主催者の息子がな。 絶対親のコネじゃん」
「分かる。俺もアイツ嫌い。初戦もストレート勝ちだぜムカつくわー」
「でも溝口圭佑の二回戦の相手見ろよ。連勝記録ストップさせた高山昴だぞ」
「マジで?いきなり?? …なぁどっちが勝つか賭けようぜ」
「おう。あ……
溝口 圭佑
会話の主達はようやく圭佑の存在に気づいたようだ。サッと顔を背けると、そそくさと去って行った。
__父が経営しているテニススクールの生徒だ。その殆どが圭佑を敵視している。 きっと今頃 悪口で盛り上がっているのだろう。
自分の努力不足を棚に上げて。 __圭佑は1つ息を吐くと、眼前のトーナメント表を見やった。
……俺は運命なんて信じないし すがらない。 必然は大体 偶然だ。それ以上の意味は無い。
だからこのHSS杯で、 高山昴が二回戦の相手と言う事実にも、意味は無いはずだ。
大会の責任者は確かに父だが、圭佑の試合には断じて干渉していない。エントリーさえ圭佑自身が行ったのだから。 (大多数は信じないだろうが)
だからこの事実も、全て偶然だ。
溝口 圭佑
………だけどもしかしたら
溝口 圭佑
高山 昴
必然でもあるのかもしれない。
背後に立つ高山 昴が、小さく息を吐き出した。
圭佑はトーナメント表から視線を外さず続ける。
溝口 圭佑
高山 昴
返って来たのは、 小さな、
しかし何かを堪(こら)えるように震えた声だった。 背中に向けられるのは、確かな「怒り」。
高山 昴
____だけどその中に、別の感情が混じってる。
溝口 圭佑
………でもそれがどうした。 この世界は泣き言を言った奴から敗ける。
言葉などかけてやらない。 ___沈黙する圭佑の背に再び吐息の音が届いた。
高山 昴
溝口 圭佑
肩越しに振り向く。 射るような目に微笑みかけた。
溝口 圭佑
高山 昴
高山 昴
昴の相好も崩れた。 両の目にくらい光を灯し、口の端を吊り上げる。酷く不恰好な笑みだ。
高山 昴
高山 昴
溝口 圭佑
__トーナメント表の周りには、小さな人だかりが出来ている。
この大会で一番の注目株と言ってもいい二人のやり取りに集う野次馬達だ。
圭佑は彼らを一瞥すると、肩で息を吐き出した。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
昴と正対し、歩を進め距離を縮める。 昴にしか聞こえない距離、声量で
仮面を完全に剥ぎ取って、囁いた。
溝口 圭佑
敗けない。敗けるわけにはいかない。
延長戦には持って行かない。 差をつけて勝たないといけないのだから。
唯一の、兄貴より上回る物だ。
唯一の、俺を認めてくれる物だ。
ラケットを振る理由はそれだけだ。
テニスなんて
兄貴に認めて貰うツールに過ぎない_____
ピ イ ィ Ⅰ Ⅰ Ⅰ ッ
高山 昴
審判
審判
溝口 圭佑
高山 昴
拍手。 歓声。
ラケットを構える姿勢を解く圭佑と__
呆然と立ち尽くす高山昴_____。
高山 昴
試合終了後の握手で、互いにコート中央に歩み寄る。
圭佑が手を差し出しても、昴は微動だにせず呆然と譫言(うわごと)を漏らし続ける。
高山 昴
溝口 圭佑
圭佑は身を乗り出して昴の手首を掴む。
そして自分の方に引いて、囁いた。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
会場の喧騒は
昴の悲鳴に似た吐息をかき消した。
握手の時、先輩が対戦相手に何か耳打ちした気がする。 何を言ったんだろう。
自宅のテレビの前で首をひねっていると、スマホの電話がなった。
表示は大好きな人の名前だ。 僕は早速 画面に指を走らせた。
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 なごみ
スマホを耳から離してテーブルに置いた。
鳴沢 柚月
山川 なごみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 なごみ
山川 なごみ
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
山川 なごみ
鳴沢 柚月
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
山川 なごみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
山川 なごみ
山川 のぞみ
山川 なごみ
鳴沢 柚月
山川 なごみ
やめろ
やめて
高山 昇
高山 昇
違う。違う!
高山 昇
口汚く罵って欲しい。言葉の限り詰(なじ)って欲しい。
いっそ優しいと思えるこの声音を聞くくらいなら!
高山 昇
高山 昇
待って
違うやめろ
違_____
高山 昇
高山 昇
高山 昇
高山 昴
ブツッ
高山 昇のスマホから、昴の悲鳴に似た声がかき消えた。
それでもすぐに昇のスマホは着信を受けて震える。
高山 昇
昇はスマホをポケットに突っ込んだ。 鳴り続ける着信に一切取り合わず、逆のポケットから車の鍵を____
溝口 圭佑
HSS杯会場。その西口ゲート。
試合を終えた圭佑は、ゲート前に立つ高山 昇に声をかけた。
この場には不似合いの、高いスーツに身を包む高山は手中の鍵を弄びながら圭佑の顔を見ずに答えた。
高山 昇
高山 昇
溝口 圭佑
高山は答えず、相変わらず手中で鍵を弄びながら踵を返した。
圭佑は無言で歩を進める高山の後をついて歩いた。 その背中に言葉を投げつける。
溝口 圭佑
高山は答えない。振り向きもしない。ただ鍵を弄びながら歩き続ける。 __だから圭佑も止めなかった。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
高山 昇
鍵を弄ぶ手が止まった。 顔は前を向いたまま、高山は恐ろしく低い声を発した。
高山 昇
高山 昇
高山 昇
高山は手中の鍵を軽く上空に放った。
高山 昇
キャッチした鍵をまた放る。 どんどん朗らかになって行くその声は
まるで勝者の_______。
溝口 圭佑
__HSS杯会場西口ゲート。舗装された道路の先の、開けた駐車場。
これ見よがしに駐車されてる外車の脇に佇む______
佇む………
高山 昇
相原 澪
溝口 圭佑
あり得ない。 俺の知ってる澪さんなら、この男の誘いなんて絶対に乗らないはずだ。
足を踏み出すが、高山の長身がそれ以上の接近を妨げた。 振り向いたその目は卑しく細められている。
高山 昇
溝口 圭佑
相原 澪
澪さんが割って入っていなかったら、握った右手は とんでもない事をしていたかもしれない。
相原 澪
相原 澪
相原 澪
澪の視線が外れた。 伏せられた睫(まつ)毛も、この後発せられる声も、胸が痛くなるほど震えている。
相原 澪
溝口 圭佑
溝口 圭佑
相原 澪
高山 昇
高山は澪の肩を掴むと強引に下がらせた。
そのまま外車の方に軽く押すと、口の端を吊り上げながら圭佑を見下ろした。
高山 昇
高山 昇
相原 澪
高山は笑みを崩さぬまま、先程より強い力で澪を外車の方へ押しやる。
そして圭佑を見下ろす その目を更に細めた。
高山 昇
コメント
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間に合ーーーーーっ! 久しぶりに期日までに投稿ぉーーーーっ!……なんて悲しい咆哮でしょうか……😭 関西弁の人が多くなりましたね😁 私も関西人なので、関西弁を書くのはあまり苦労しないんですが、関西圏だけの方言は把握しとこう!と調べました。いやービックリ…「カッターシャツ」って全国共通ちゃうの??Σ(゜Д゜) サブタイトル読み:ラプソディー 読んでくださりありがとうございました❗