ごめんなさい… と消え入るような声で謝り俯く。
見なくたってわかる。
テヒョニヒョンはきっと、 呆れた顔をしているんだろう。
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それを確認するかのように、 心底呆れた様子の声色。
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泣かない。
泣いたら、 ウザイやつって思われる。
全部僕が悪いから、 だから泣いちゃダメだ。
悲しくて、 なぜか寂しさがグッと押し寄せる。
そして僕は、 それを誤魔化すように、 下唇をまた噛みしめる。
少しの沈黙が僕たちの間に流れ、 室内が静寂に包まれる。
恐る恐る顔を上げ、 テヒョニヒョンの顔を横目で見た。
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ど、うして…。
そんなに、 優しそうな顔をしてるの…っ?
怒っていると思っていたのに、 呆れられたと思っていたのに、 もう幻滅されて、 それでも、 仕方がないって思ったのに…。
先程まで抑えていた涙が、 何かが切れたように溢れ出す。
優しい言葉をかけられたのに、 どうして涙が出るのかわからなくて、 けどもう我慢なんてできなくて、 泣き顔を見られたくなくて、 両手で顔を覆った。
すぐに泣きやむから、 待って、 テヒョニヒョン…。
急に泣き出して面倒くさいやつって、 思わないで…っ。
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僕の膝の上に、 タオルを置いて立ち上がったテヒョニヒョン。
そういえばさっきから、 熱で汗ばんでいる気がする。
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…どうして僕は、 熱を測った時に気がつかなかったんだろう。
倒れる前、 僕は制服だった。
ワイシャツに、 指定のズボン。
けど今は… 明らかに僕のではない大きさのワイシャツに、 これもまた僕のではない… 黒色のスウェット。
緊急事態に、 涙は瞬時に引いてしまって、 瞬きもできずに固まる。
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キッチンを行こうとするテヒョニヒョンの背中に呼びかけると、 こちら振り返りながら不思議そうに僕を見た。
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僕が何を言いたいのかわかったのだろうか。
テヒョニヒョンは驚いた表情をしたあと、 僕に背を向けた。
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…わかってない…? で、でも… み、みてない…って…。
そんな、 見ないで着替えさせるなんて… できるわけないよね…。
男だから別に見られて恥ずかしくなることもないのに、 なぜか恥ずかしさに爆発してしまいそうで、 顔は異常なほどに熱を持っていた。
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僕なんかの貧相な体… テヒョニヒョンの目に入れてしまった。
申し訳なくて、 いたたまれなくて、 タオルで顔を隠す。
すると、 テヒョニヒョンはどういうことかわかったのか、 何か言ってくる。
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…さっきから、 変なテヒョニヒョン…。
それにしても… 恥ずかしすぎる。
テヒョニヒョンの顔をまともに見れなくなってしまって、 下を向いた顔すら上げられない。
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僕たちに流れていた空気にいたたまれなったのだろうか、 テヒョニヒョンは静寂を壊すようにそう言った。
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早足に部屋を去っていくテヒョニヒョンに、 僕は何もかける言葉がなかった。
そしてパタリと音を立ててしまったドアを横目に見ながら、 心の中でそっと、 テヒョニヒョンに『おやすみなさい』と言った。
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広いリビングに1人きりになって、 寂しさよりも安心が胸を支配した。
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何度もしつこいけど、 本当に恥ずかしくて布団に顔を埋める。
男同士だから恥ずかしがる必要はないはずなのに… なぜか心底恥ずかしくなる。
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ワイシャツをチラリとまくり、 中の体を見ながらガックリと肩を落とした僕。
ふと、 この服がテヒョニヒョンのものだと思い出し、 さらに顔に熱が集まるのがわかった。
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僕の倍あるんじゃないだろうかと思うほど、 ぶかぶかのワイシャツ。
さっきから気になっていたけど、 服からも布団からも、 この部屋中がテヒョニヒョンの匂いがする。
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そう思いながらも、 大好きな人の匂いに囲まれて恥ずかしさと嬉しい気持ちでたまらなくなる。
自分の体をギュッと抱きしめて、 今だけはテヒョニヒョンのことだけを考えていたかった。
テヒョニヒョンで、 いっぱいになりたかった。
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目が覚めると、 朝だった。
いつの間に寝てしまったんだろうか、 窓から差し込む光が眩しい。
枕元には氷嚢(ひょうのう)が置かれていて、 額には冷却シートがはられていた。
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重たい体を起こし、 昨日より風邪がマシになっていることに安心する。
ふと目の前のテーブルに目をやると、 1枚の紙が置いてあった。
いわゆる、 置き手紙というもの。
置かれている少し適当感があるれるながらもその綺麗な文字にテヒョニヒョンらしさを感じながら、 文字を追う。
学校に行ってくるね。 グクは今日1日ゆっくり休んでて。 おかゆがあるからお腹が空いたら食べてて。 あと、 冷蔵庫にゼリーとか果物もあるから。 お風呂も勝手に使っていいから。 もし入るなら着替えは一式、 脱衣所に置いてあるからね。
その他にも、 少しでも何か口にしないと悪化するから…とか、 何かあったらこの番号にすぐ電話…とか、 紙1枚にぎっしりと文字が詰め込まれていた。
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僕、 どうちゃったんだろ。
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瞬く間に目に留められない涙が溢れて、 頬を伝う。
テヒョニヒョンは、 どんな表情でこれを書いたのかな。
その姿を想像するだけで、 いろいろな感情が胸の中を支配した。
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もう、 それだけなのに。
テヒョニヒョンへの気持ちは、 嘘偽りない愛。
この僕のために書かれた紙切れも、 愛しさの塊でしかないんだ。
…帰ってきたら… ありがとうって言いたい。
そういえば、 今はいったい何時だろう。
片手で涙を拭きながら、 空いたほうの手で、 置いてあるカバンからスマホを取り出す。
11時…ピッタリ。
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今日は土曜日だから、 授業は4時間目で終わり。
テヒョニヒョンが帰ってくるのは… 1時くらいなはず。
汗でベタつく体が気になり、 テヒョニヒョンが帰ってくるまでにお風呂に入って綺麗にしておこうかと立ち上がった。
何から何までしてもらって、 お申し訳ない思う反面、 うれしい気持ちが隠せない。
お風呂に浸りながら、 今、 自分が置かれている状況を改めて実感した。
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テヒョニヒョンは、 嫌いな人を家にあげたりするだろうか。
状況が状況だったから、 仕方なくあげたの…かな?
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首を左右に振り、 頭の中の疑問をかき消す。
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意識が朦朧(もうろう)としてきたことに気づき、 湯船から出る。
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お風呂から出ると1時間ほど経っていて、 髪を乾かし、 また布団に入った。
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早く治して、 帰らないと。
ふと、 外を見てみた。
薄っすらとあとが見えるくらいの小雨が降っていて、 それを静かに見つめる。
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窓越しでも聞こえる、 激しい雨音。
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なんだろう。
なんだか、 胸騒ぎがする。
それが気のせいではないと確信づけるように、 窓一面に光が広がった。
ワンテンポ遅れて、 激しい雷音が耳に響く。
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この湧き上がるような不安はなんだろう。
何かが迫ってくるような、 まるで全身が逃げろと叫んでいる。
おかしい、 どうしたんだろう。
胸騒ぎが収まらない。
今にも、 悪いことが起きてしまいそうな予感がした。
テヒョニヒョン… 早くテヒョニヒョンに会いたい。
なんだかすごく、 たまらなく嫌な予感が、 僕の頭を支配し始める。
__そして、 それは現実となる。
__ピンポーン…。
コメント
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(✌'ω' ✌)ありがとうございます!!!
分かりました!
星ちゃんって呼んでくださいます