太田豊太郎
俺は漠然とした功名心と、強制されることになれることで得た学力をもって、ヨーロッパの新しい大都市の中央に立った。

当時はバラバラだった自由都市群が、「ドイツ連邦」として統一されたばかりだった
太田豊太郎
なんだ、俺を惑わすこの光、この色彩は!

太田豊太郎
菩提樹の下、というとなんだか静かな場所を想像するが、実際はどうだ。

太田豊太郎
この髪が広がったようなウンテル・デン・リンデン通りに来て、通りをゆく人々を見てみろ。

ウンテル・デン・リンデンは「菩提樹の下」という意味である
太田豊太郎
ウィルヘルム一世ご健在のころであれば、

太田豊太郎
胸張り肩をそびやかせる兵隊や、

太田豊太郎
パリ風の衣装をした少女たち、

太田豊太郎
車道を走る多くの馬車、

太田豊太郎
雲にそびえる高層建築の間には水量豊かな噴水、

太田豊太郎
遠くを見ればブランデンブルク門をはさんで木々の間から凱旋塔の女神像が見える。

太田豊太郎
こんなにたくさんの見るべきものがあれば、初めてこの都市に来たものが十分に対応できないのもよくわかる。

太田豊太郎
しかし俺は、

太田豊太郎
どんな状況であっても、浮ついた景色に心を動かしたりはしないぞと誓い、

太田豊太郎
外部からの刺激を無視することにしていた。

使命に燃える豊太郎は、新しい刺激を意識的に無視していた。しかし……
つづく。