テラーノベル
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ココがこちらを無言で見つめる
イヌピー
ぐわん、と、視界が揺れる
俺の髪が掴み上げられている
髪がぶちぶちっ、と、何本か抜けた感覚
俺を見つめるココの光のない目に
吸った息が ヒュッ、と、変な音を立てて器官に入っていく
そして今度は
左の頬に
鈍い衝撃
一瞬遅れて重い痛みが襲ってくる
脳が何秒も何秒もかけてその事実を理解する
殴られたんだ
ココに
ココ
その後の、ココの仲間達の笑い声も
俺を罵倒する声も
なんにも
聞こえなかった
なんてことは
まるでない
ただただその事実が、俺の心を悲しみで支配した
なんてことは
まるでない
怒りも
寂しさも
この事実は
俺にとって
どうってことない
家に帰った傷だらけの俺は
階段から落ちただけ、と、母に嘘をついた
風呂から上がって傷の手当てをする
どうってことない
ただちょっと
痛いだけだ
その夜、寝られなかった
なんてことは
まるでない
翌日、俺は普通に登校した
頬のあざを隠すためにつけたマスクを見た友達に 何度か「風邪か?」と聞かれたが 適当に受け流して今に至る
なんの変哲もない1日
ちょっと前に戻っただけだ
昨日よりちょっと
静かになっただけだ
そこに少し寂しさを感じる
なんてことは
まるでない
コメント
2件
イヌピーこれからどうなるか気になる!