【第二章】銀河の列車に乗って

顔を上げると…… 茶髪で、紫の目を細める男性が居た。 どことなく柑無先生に似ている。

音を立てて列車のドアが開く。 スマイルさんは降りて、背を向けた。 私に残された選択肢は、 担任だった先生を思い出すことだ。

医者ではない、彼女を。

あれから少しずつ… 記憶のピースが集まってきた。

柑無先生は医者ではなく、私の担任。 そして、私はクラスに馴染めずに、 いつも馬鹿にされて泣き出してた。 そんな子だった。

暗い気持ちでいた私に、優しく声を かけてくれたのが柑無先生だった。

先生は、 私の好きな星の話をしてくれたし、 私の知らない世界も教えてくれた。

独りで泣いてた私にとって、先生は 救世主のような存在だったなぁ…。

先生が優しい声で私を呼ぶ。

一緒に星を眺めたり、 お話をしたりする。

それだけで私は幸せだった…。

柑無先生の様子がおかしくなり始めたのは、出会ってから4ヶ月ぐらいの時 …… あれは、夏休みの少し前の頃。

先生は、笑わなくなった。 無表情のまま、私にこう言ったんだ。

先生は、私の言葉なんてもう耳に 入っていないようだった。

その目には一切の光がなかった。 このままでは危険だ、そう思った。

僕のお母さんは、 僕を許してくれるだろうか。 分からないけれど、誰だっていいことをすれば幸せなはずなんだ。

だから、きっとお母さんは 僕を許してくれると思う。

主人公のジョバンニと、 友人のカムパネルラは、 "本当の幸せ"を探す旅をした。

でもカムパネルラは、 他人を助ける為に死ぬ事で、 それが＂本当の幸せ＂だと思った。

あれは、夏休み前日の放課後。

帰り道…… 先生と手を繋いで歩いていた。

先生の手を引っ張った時にはもう、 その車は歩道を乗り越えていた。

猛スピードで突っ込んだ車は、 私を目掛けて……

ガシャン！

この世のものとは思えない、 激しい音がした。

数秒経って、やっと理解した。

先生が私を突き飛ばして 車に撥ねられたんだ、と。

思えばあの時…うちのクラス環境は 荒れに荒れて、最悪だった。

先生は、あの時精神が追い詰められて いたんだ……。

それで自分の代わりに私を救った…。

────何をしていたんだっけ？

そして私は記憶を失った。

ゆっくりと窓から身を乗り出す。

先生の苦しみにも気づかず、 自分の幸せの事しか考えてなかった私なんて……。

がし、と腕を掴まれる。

辺りが眩しい光に包まれた───。

……To be continued