メトロノーム

休日、

前の俺なら彼女がピクニックなんかに誘ってくれて

公園で見かけた小さな女の子達を見て｢可愛いな｣なんて笑っていたのに、

今はその公園の前を通っても

味気ない風景が拡がっているだけで、

なんの懐かしみも感じられない、

彼女がいないだけで こんなにも変わってしまうなんて、

どうして？

俺らが出会う前の風景になっただけだって、

わかっているのに、

何もかも違って、

見慣れたはずの懐かしい景色なのに、

新しい景色に見えてしまう、

俺はそんな風景に耐えられなくて

公園に背を向けてうつむいたまま

家へと向かった

付き合う前 大学で一気に仲が良くなってった時

彼女は言ってたな、

“私たちってメトロノームみたいだね”

俺はその時 なんでメトロノーム？？ って聞き返したっけ？

“お互いの波長が合うから？？”

疑問形で返してくるなよ

なんて笑ってたっけ、

きっとそうなんだよ、

俺らはふたつ並んで置かれた メトロノーム

ズレて刻んだテンポはやがて同じテンポになって、

しばらくそれが続いていたのに、

気の緩みが出たら、

またズレ始めてくる、

それにきづいていたら

こんな後悔することもなかったのに、

時間が経てば経つほどに

心の距離が離れているのに、

止めることができなくて、

そのままにして

結局自分からテンポをずらしてしまっていた、

“好きだってわかってるのに、”

これから俺らって

本当に違う道に進むのかな、

どこかでまた道が同じになることは無いのかな、

メトロノームのテンポが 同じになることは

二度とないのかな、

俺は彼女とやり直すことが出来ない、

そんな“結末”で終わらせてしまうのか、

嫌だよ、

そんなの、

嫌だ、って思うくらいなら、

忘れたいよ、

忘れられるなら

全て忘れたい

彼女と過ごした時間を全部、

けど、

俺にはそんなことできない、

忘れたら、

俺はなんにも残らなくなるから、

俺は、彼女とすごした時間が全てだから、

もし、彼女が今、幸せなら

本来なら嫌だ、、だけど、彼女にとってはそれでいいのかもしれない、

でも、俺との思い出は忘れないでいて欲しい、

なんて、馬鹿みたいな話、 伝わるわけないか、

幸せにする相手は

俺じゃダメなのかな、

神様がもう無理だって引き裂いたのかな、

だったら、俺は、

どうしたら神様にも、彼女にも罪を償うことが出来るの？

もう神様は俺を見捨てちゃったのかな、

浮気した男に神様を信じる権利なんてないのか

もう、諦めるべき、なのかな、

忘れるべきなのかな、

俺の中にいる彼女はいつも笑ってて

いつも優しくて

そんな彼女を忘れることなんて

俺には出来ないんだ、

何度わすれようとしても

しこりのように残って無くならない、

それが俺をこれからも苦しめていく、

それが俺の人生の“結末”

だったりするのかな、