夏帆
もしもしお母さん?
母
夏帆?!
母
今どこ?!
夏帆
屋上だけど…どうかしたの?
母
夏奈が、ななが!
夏帆
落ち着いて。夏奈がどうしたの?!
母
遺書みたいなの残して居なくなっちゃって…!
夏帆
遺書?
母
「お姉ちゃんになりたかった。さよなら」って…
母
どうしましよう!!
夏帆
分かった。
夏帆
私も探すからお母さんは家に行ってみて
母
ええ、わかったわ
夏帆
夏奈……一体どこに……?
夏帆
私も探さなきゃ!
そう言って振り返った時だった
ドン!
夏帆
え?
あれ?いま私…誰かに押されて
夏帆
誰も……居ない
そうして私は冷たいコンクリートの上に落ちていった
夏帆
きゃあああああああああああぁぁぁ!!!!
おばさん1
夏奈ちゃん、可哀想にねぇ
おばさん1
痛みに耐えられなくて屋上から飛び降り自殺。
おばさん2
夏帆ちゃんも妹が居なくなって悲しいだろうに
おばさん2
葬式とか準備して…しっかりしてるのね
おばさん1
そうそう、夏奈ちゃんが死ぬ前遺書があったって
おばさん2
あぁ「お姉ちゃんになりたかった。さよなら」みたいなやつでしょ?
おばさん1
それが、変な御札みたいなのに書いてあったらしいのよ
おばさん2
えぇ
おばさん2
こんなこと言っちゃなんだけど…不気味ねぇ
夏帆
……
太郎
やぁ
太郎
元気かい、夏奈
太郎
いや、夏帆と言った方がいいのかな?
夏帆
どっちでもいいわ。
夏帆
それより、太郎は弟の体に乗り移ったって聞いたけど
夏帆
ずいぶん小さいのね。
太郎
あはは。まあね。
太郎
その分弟の魂は死んでしまって、申し訳ないよ
・・
・・
夏帆
ほんとにそう思ってるの?
太郎
まさか夏帆さんが屋上にいた時にはもう体が夏奈になってたとは思わなかっただろうな
夏帆
……そうね
夏帆
でも、仕方なかったのよ
夏帆
私は太郎と生きていかなきゃ行けないんだもの。
太郎
そうだね
夏帆
ねぇ、あの不思議な御札は何なの?
太郎
……知らない方が身のためだよ。
夏帆
そう。
太郎
まぁこれは僕の先輩から貰っただけだから僕も詳しくは知らないけどね
夏帆
ふーん
太郎
なぁ、大丈夫かい?
太郎
本当は夏帆さんの体を貰うの悲しいんじゃないかい?
夏帆
ええ、少し……
そう言って夏帆…いや、夏奈は泣きだした。
太郎
僕はそんな優しい涙を流すところが好きになったんだ
太郎は夏奈を抱きしめた
夏帆
ずっとお姉ちゃんになりたかった。さよなら
夏帆
お姉ちゃん
そう言う彼女の姿は泣いている、というより
笑っているようだった。