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ダーミラとクンピ
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熊本
熊本
俺ーー熊本は、オフィスのデスクで頭を抱えていた。
俺の隣に座る宮崎という男(県)は、とにかく「奇行者」という言葉がこれ以上ないほど似合うやつだった。
どんな危機的場面でも南国特有のおっとりとした空気感を崩さず、
口が開けば発言はかなりぶっ飛んでいる。
何を考えているのか、次に何をするのか、
俺には全く予測不能だった。
その予測不能っぷりが、俺たちの命を救うことになるとは、その時の俺は知る由もなかった。
あれは、強い西風が吹き荒れる、ひどく乾燥した秋の日のことだった。
俺はビジネスの出張で、岐阜の山間部へと向かっていた。
メンバーは俺とお隣の宮崎、そして長崎を加えた3人だ。
現地での仕事を終え、岐阜の深い森林の近くを歩いていた。
その日の昼下がりだった。
長崎
長崎の鋭い声にハッとして前を見た。
凄まじい爆発音とと共に、木々を薙ぎ倒しながら、真っ赤な炎が立ち上がる。
火災だ。
しかも、炎が上がったには俺たちの「西側」
ーー目視できるほどのすぐ近くだった。
あと一歩、進むのが早ければ確実に炎に巻き込まれて死んでいた。
,
乾燥した空気と、容赦なく吹き付ける強い西風。
炎は風に乗って、もの凄いスピードで燃え広がっていく。
熊本
熊本
俺も即座に決断し、
長崎
と俺に続こうと長崎が言う。
だが、その袖を、おっとりした声が引き留めた。
宮崎
長崎熊本
俺と長崎は同時に大声を上げた。
西側は今現に真っ赤な炎が燃え盛ってるいる地獄絵図だ。わざわざ火の中に飛び込もうとしているのか。
熊本
熊本
熊本
宮崎
宮崎はマイペースな笑顔のまま、一切引かない。
炎は刻一刻と迫ってくる。ここで言い争ってる時間すら惜しかった。
先に痺れを切らしたのは長崎だった。
長崎
長崎
宮崎
宮崎は躊躇なく、火の迫る西側へと歩き出した。
俺と長崎は「もうどうにでもなれ」と半ば絶望しながら、宮崎の後ろを必死についていく。
熱風は肌を焼き、煙で視界が遮られる。
熊本
熊本
目を瞑り、死を覚悟した。
ーーだが、奇妙なことが起きた。
宮崎が先頭に立って西へ進むと、炎はなぜか俺たちを避けるように、
とおりすぎた後ろの方向へと猛烈な勢いで流れて行ったのだ。
俺たちが進む西側は、すでに草木が燃え尽きて、火が消えた、
ただん黒い地面が広がっていた。
結局のところ、それ以降、俺たちは一度も火の危機に晒されることはなかった。
そのまま何事もなかったかのように、岐阜の安全な街へと戻っていくことができたのだ。
長崎
熊本
長崎と二人で呆然立ち尽くす。
謎だった。全く理解できなかった。
なんで火に向かって進んで助かったんだ?
,
,
強い西風が吹く中での山火事。
風下である『東』へ逃げていれば、風に乗って加速する炎のスピードに人間(県)が敵うはずもなく、
俺たちは会社にたどり着く前に後ろから焼き尽くされていたはずだった。
逆に、風上である『西』へ、一瞬の恐怖を堪えて飛び込めば、
そこにはもう燃える燃料がなく、
最も安全な地帯になる。
それが、火災における
唯一の正解の避難ルートだった。
宮崎は、それを最初から分かっていたのだろうか。
それとも、ただの気まぐれだったのか。
尋ねようと隣を見ると、
宮崎
と呑気に土産を選んでいた。
宮崎の予測不能なあの奇行は、
もしかすると、
命を奪いにきた死神の予測さえも、遥かに上回っていたかもしれない。
コメント
1件
うわっ、これ本当に面白かったです!火災の避難って「風上へ逃げる」が正解っていう知識、物語としてすごく自然に使われていて驚きました。最初は「西は火の海だろ!」って思って読んでたので、ラストの種明かしでガツンとやられました。宮崎の「てげてげいっちゃが」の飄々とした感じと、実は一番合理的な判断をしてるギャップがたまらない。県民性をキャラに落とし込む発想も秀逸です。続きが気になります!