下校時間になりクラスの生徒が出ていった。
しばらくすると部活動の生徒と思われる活気のある声や楽器の音が聞こえてくる。
詩愛(しあ)
じゃ、私部活だから!
海奈(しいな)
私も今日は急ぎなんだ、良かったら一緒に帰る?
陽愛(ひより)
え?急ぎならいいよ。
陽愛(ひより)
ゆっくり帰るから。
海奈(しいな)
そう?じゃあね!
陽愛(ひより)
うん!またね!
陽愛(ひより)
(…さ、帰ろ。)
陽愛(ひより)
ただいま…。
母親
あら、おかえり。
母親
どうだった?
陽愛(ひより)
やっぱり私、学校行きたくない。
母親
そう…。
母親
じゃ、しばらく休もっか。
陽愛(ひより)
いいの?
母親
うん、でもお母さん、仕事始めないといけないから…
陽愛(ひより)
お父さん、生活費出してくれるでしょ?
母親
それだけで生活を支えるのは無理があると思うの。不定期に入院があるでしょう?
陽愛(ひより)
…。部屋にいるね。
母親
ごめんね…。
母親
寂しい思いさせてる分頑張って働いてたまには贅沢できるようにするね。
陽愛(ひより)
いいよ。普通に暮らしたい。
陽愛(ひより)
別に私、贅沢したいなんて思ってないよ。
そう残して階段を上がった。
気付けば全てが嫌になっている気がした。ふと鏡に映る自分の姿を見てますます嫌になり陽愛はベッドに潜り込んだ。
陽愛(ひより)
(なんで離婚なんてしたの?)
陽愛(ひより)
(なんでお見舞いに来ないでなんて言ったの?)
陽愛(ひより)
(なんで私の気持ちに気づいてくれないの?)
夜になって海奈や詩愛から沢山の着信履歴やLINEの通知が来ていたけれど
全て無視した。
既読すらつけなかった。
つける気がしなかった。
気付けば一睡もしないまま、朝を迎えていた。
陽愛(ひより)
(あれ?もう朝?そう言えば昨日部屋に行くって言ってからの記憶が無い…)
昨日の事を聞こうとリビングに行く。
陽愛(ひより)
お母さん?
陽愛(ひより)
昨日の私、何してた?
母親
何言ってるの?
母親
ご飯できたから呼んで
母親
そのあと一緒に食べたでしょう?
陽愛(ひより)
え?
陽愛(ひより)
(やっぱりそんな事…覚えてない…)
陽愛(ひより)
そっか…