陸
それって、美月先輩のっすよね?
翔太
あのさぁ、何で下の名前なの?
翔太
(俺だってまだ本人の前で呼べてないのに!)
陸
もしかして、組織の人間に攫われたとか!
陸はまたも組織のことを話題に出す。 妄想もいい加減にしてくれよ…
翔太
何で櫻井が攫われんだよ。
陸
僕たちが檸檬爆弾のこと探ってるのがバレてるんすよ。
翔太
はぁ…そんな映画みたいなことあるわけないだろ。
陸
ちゃんと真剣に考えて下さいよ。
翔太
…ん?
陸の妄想に呆れていると、目の前を男が通り過ぎた。
陸
どうかしました?
翔太
いや、あいつ、なんかさっき変な絵描いてたんだよね。
陸
もしかすると、あの人も組織の人間かもしれないっすね。
翔太
だったら追いかけよう。
陸の話は全くもって信じられないが、俺はなんだか嫌な予感がした。
陸
え⁉︎
翔太
お前の推理があってるなら、あの男の仲間に櫻井が攫われたってことだろ?
陸
いやでもちょっと…
翔太
ちぇ…あいついなくなってる。どこだよ!
その瞬間、後ろの方から視線を感じた。
翔太
誰だ?
翔太
おい待て!
陸
どうしたんすか?
翔太
いま誰かいたんだよ。女子だった。
陸
女子っすか。
翔太
たぶん同じ中学の奴だと思う。
陸
……
陸
……
翔太
おいどうしたんだよ。
陸が突然黙り込んでしまった。
陸
…美月先輩は、誘拐されたんじゃなくて、組織の人間だとしたら?
急に黙ったと思ったら、意味不明なことを口走る。
翔太
何言ってんだお前。
陸
いや僕は、あのMからのメッセージが気になって。あれが、マジの話だとしたら、
翔太
んなわけねぇだろ。
陸
美月先輩は、組織からなんらかのメッセージを受け取った。
例のあの、変な絵をかいてた男から。
例のあの、変な絵をかいてた男から。
陸
それで、携帯を捨てて、最後のミッション、爆弾を仕掛けに行った。
翔太
じゃあ何で俺たちと一緒に居たんだよ!
陸
すべては警察の目を欺くためっすよ。
まさか女子中学生が工作員だとは思いもしないっすから。
まさか女子中学生が工作員だとは思いもしないっすから。
そんなわけない…でも…そうじゃ無いって証拠もない… まさか美月は本当に…
美月
ねぇ!あたしの携帯知らない?
陸
あ、先輩。
翔太
なっ、お前どこいたんだよ!
美月
ああ家。この本とってきた。なんかこの中にさ、ヒントあるかと思って。
陸
なるほど。
家に帰ってただけって…勝手に心配して損したじゃねぇか!
翔太
(でも…これは伝えとかないとな。)
翔太
なるほどじゃねぇよ。もういいわ。馬鹿馬鹿しい。
美月
え、ちょどこ行くの。
翔太
帰るに決まってんだろ。腹も減ったし。
翔太
(頼む…伝わってくれ…)
美月
(…?)…えーホントに帰っちゃった。つまんないの。
陸
…あの、実は、池田先輩のカバンの中に檸檬が入ってたの俺、見ちゃって…
美月
それが爆弾?
陸
可能性はあります。
美月
よし。じゃああいつ尾行しよう。
陸
はい。
陸
誰かに連絡してますね…
美月
誰に連絡して…ヤバっ
翔太がこちらをチラリと見たような気がしたので、 私たちはすぐさま近くの物陰に隠れた。
陸
危なかったっすね。
美月
ね…
美月
ん、これ美味しいね。しながわ満月って言うんだ。
陸
あ、なんか品川のお土産で売れてるそうっすよ。
今日はたまたま持ってたんすけど、尾行のお供に最高っすね。
今日はたまたま持ってたんすけど、尾行のお供に最高っすね。
美月
ふぅん。陸くんはさ、
陸
はい。
美月
テニス部なの?
陸
どうしてですか?
美月
そのキーホルダー。
陸
ああこれっすか?
美月
文化祭でテニス部の人たちが作ってたやつだよね。かわいいから覚えてたんだよね。
陸
…でも、もう辞めたんです。やりたいことが見つかったから。
美月
やりたいこと?
美月
…あ、動いた!行こ。
陸
はい!
美月
あ、置いた。あの中に本当に爆弾があるんだよね?
陸
恐らく。
美月
なら、警察呼んだ方が
陸
今からじゃ間に合わないっす。
俺があの爆弾、人のいないところに運ぶから、
美月さんはできるだけ遠くに逃げて下さい。
俺があの爆弾、人のいないところに運ぶから、
美月さんはできるだけ遠くに逃げて下さい。
陸
早く!
美月
…
陸
はぁはぁ…ここなら…
俺は池田先輩の爆弾を海に投げ込む為に、橋まで来た。
しかし、俺は投げ込まなかった。
陸
投げなくて、いいよな…
次の瞬間、この場で聞くはずのない声が聞こえてきた。
翔太
投げられたらどうしようかと思ったよ。
陸
え…何で…帰ったんじゃ…
ここから、俺の計画が崩れ始めた…