ヨウタ
なぁ、これってさ、
俺達の中の誰かが死ぬって
ことだよな?
セイヤ
先生の言葉を文面通りに受け取ればね。
アカリ
やばいって!
まだ死にたくないよ!
セイヤ
アカリ、落ち着くんだ。
そのうち警察が来てくれる。
マドカ
でも、スマホは教室を占拠された時に全員分没収されたでしょ?
マドカ
誰が通報してくれるのよ?
ハカセ
これが平日なら良かったけど、今は夏休み中だ。
ハカセ
きっと、今日が登校日ってのも、先生が教室を占拠するためにでっち上げたものだったのかも。
シズカ
誰かが異変に気づいてくれるといいんだけど――。
セイヤ
このまま夜になって誰も家に帰らなければ、家族がさすがに不審に思ってくれるはず。
セイヤ
そうすれば、警察にも通報してくれると思う。
セイヤ
夜までの我慢だ。
ヨウタ
でもよ、夜までってことは、これは避けられないんだよな?
志賀先生
ひとつ言い忘れてたけど、投票用紙に書いたものは誰にも見られないようにな。
見られてしまった、意図的に見せた、とか関係なく、不正投票をしたとして死んでもらうことになるからな。
志賀先生
ほら、後もう残り7分だぞー。
セイヤ
普通に考えて投票は避けられないだろうね。
アカリ
な、なんでそんなに冷静なの?
うちらの誰かが死ぬんだよ?
他の班
最初はグー!
じゃんけんぽん!
ヨウタ
あっちの班、じゃんけんで決め始めたぞ。
ひとつの班がじゃんけんで決め始めた途端、他の班も真似をし始める。
志賀先生
はい、残り5分。
マドカ
シズカ、あんたさ、みんなのために死んでよ?
シズカ
え?
そ、それは……。
マドカ
じゃんけんで決めるよりは理にかなってると思うけど。
マドカ
この中で一番役に立たないのは誰かなぁ?
ヨウタ
やめろよ。そんな決め方、じゃんけんとさほど変わらないだろ?
じゃんけんの決着がついたのか、教室には歓喜の声と、絶望の涙が入り混じる。
セイヤ
あんな決め方をしていたら、絶対に後を引きずる。
今やってる行為自体が、それぞれの信頼を損ねているようにしか思えない。
アカリ
ねぇ、どうするの?
もう時間がないよ。
志賀先生
はい、残り3分なー。
セイヤ達の会話を聞いていたかのように、残り時間が告げられる。
ハカセ
きっとあるはずなんだ。
被害を最小限に抑える方法が。
セイヤ
あぁ、もう一度ルールをおさらいしておこう。
ハカセ
そうだね。
まず投票の結果、2番目に票を集めた人間が殺害される。
セイヤ
投票については話し合いで決めていい。
アカリ
投票は他の班の人の名前を書いてはいけない。それと、白紙で投票してもいけない。
マドカ
それに追加で、投票する際、なにを書いたのかは見られてはいけない。
セイヤ
これを踏まえたうえで、なにか良い案はないか?
アカリ
ねぇ、ちょっと思ったんだけど、2番目の人が0票だったらどうなるの?
アカリ
殺されるのは、2番目に票を集めた人間でしょ?
アカリ
だったら、誰かに集中して投票をして、1人以外の得票数を0にしたらどう?
ヨウタ
アカリ天才か!
それなら2番目に票を集めたやつはいないから、
誰も殺されないんじゃねぇか?
マドカ
でもさ、それって全員が打ち合わせ通りに投票したら――の話でしょ?
マドカ
志賀の話だと、投票する際の用紙は他人に見せてはいけない。
マドカ
それって、誰に投票したのかまでは、みんなにばれないってことでしょ?
マドカ
だったら裏切る人とかいそうだなぁ。
シズカ
…………。
ヨウタ
あぁ、そんだけシズカをいじめるなら、お前裏切られそうだわな。
ヨウタ
そういうのやめろよ。ガキじゃあるまいし。嫌いなんだよ、俺。
シズカ
ヨウタ君……。
マドカ
シズカ良かったねぇ。ヨウタから気にかけてもらえて。
ハカセ
やめないか。これから投票しなきゃいけないのに、こんなところで揉めてる場合じゃないぞ!
セイヤ
……裏切らなけばいいんだよな?
セイヤ
いや、裏切れないようにすればいいんだよ。
志賀先生
残り1分だぞー。
急げー。
セイヤ
みんな聞いてくれ!
俺に考えがある。
セイヤの言葉にみんなが少し前に乗り出して耳を傾けてくる。
ハカセ
……なるほど、その方法ならいけるかもしれない。
ヨウタ
さっぱり分からんけど、セイヤの言う通りにすればいいんだな?
アカリ
他に方法がないし、当たって砕けろだね。
マドカ
私は砕けたくないわね。
シズカ
…………とにかく、やってみよ。
セイヤ達は投票用紙を手に取ると、一斉にペンを走らせた。
志賀先生
時間だー。
開票するぞー。