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梨本和広
とと
美来
園之
美来
それでお芝居が上手なわけか、と美来は納得した。
でもあんなに旨く演技出来るなんて、今のラミーも演技だったりして?
美来の妄想が尽きぬ中、木陰に立ったままの二人。
園之
とても『ラミー』とは思えない、目の前の男。
『ラミーラミー詐欺』? そんなのないか
身なりはド派手、どこから見ても遊び人。けれど純情一直線のこの男。自己紹介を始めた。
園之
美来は、ラミーこと園之を悪い人じゃなさそうだなと感じたので自分も自己紹介をした。
美来
先程、園之と同じレコードに手を伸ばしたことを思いそう告げた。
園之
美来
園之
淋し気な笑いにほだされ
美来
と美来は激レアオムニバスアルバムをGetしちゃった。園之に申し訳ないなと思うけど、素直に嬉しい。
園之
美来
園之
くー! やっぱナンパかーい
両手に大切に抱えたレコードを突き返す美来。
美来
園之
しょんぼりするラミーを演じていた園之に背を向け、その場を去った美来。
園之さんのことだって、やはり演じていたかもしれないわ。いきなり「お友達になってください」だなんて!
しかし……なんだか園之のことが気になり、彼が豆粒ほど小さくなったであろう頃、美来は振り返った。
園之はクスノキの下にずっとつっ立っていた。俯いているようだ。
なんだか可哀相。
この暑さの中
美来は慌てて園之の所まで早歩きで戻った。
美来
園之
美来
美来はなぜか照れてしまい目が若干泳いでいる。
園之
ガク――――。て、天然? 否、これまで孤独だったのかな。
美来はスマホを取り出した。
美来
園之
園之は美来に従い、美来の連絡先を登録した。
美来
園之
ぎこちない『バイバイ』だ。『バイバイ』の似合わない男だ。
***
帰宅し、何度も頭をひねる美来。にわかに信じがたい。あのラミーの内側はああだったのか。
お芝居だったら警察に訴えてやる。あ、この場合民事なのか? わからんわい。
プレゼントしてもらったレコードを聴く気にもなれずに、美来は園之の恥ずかしそうにする表情や、笑っちゃいそうなほどの純情さを想い起こしていた。
――――お風呂を上がり、牛乳を一気飲みした直後、美来のスマホが鳴った。 見ると早速園之からのROULだ。
園之
なんだかなあ……ここまで天然じゃあ、俳優やって行けないのでは、登場人物の想いに寄り添えないのでは
と心配する美来だ。
そんな想いも相まって、美来は園之をなにやら放っておけない。
美来
園之
ドキリ! 急なお誘いで、慌てるし、不思議な胸の高鳴りを感じる美来。
美来
園之
ガクー! いちいちそれ、説明しなくて良いから。
美来は園之の1つ1つのぶきっちょさに呆れながらもなんだか嬉しくなって来る。
だっておもろいやん。可愛いし(?)
美来は、いちいちツッコミを入れるのがめんどくさいので“説明しなくて良いよ”との説明を端折り
美来
とだけ返信した。
園之
その文面と返信の速さから、これはハウツー本に頼っていない園之の言葉なんだな、と感じた。
そうして二人は明日の11時半に『喫茶マドラー』でランチを共にする運びとなった。待ち合わせは直接お店でする。
***
でも……『ラミーさん』って超有名人じゃないのかな? あたし、テレビも流行り物の動画サイトも全然観ないからわかんないなー。スクープとかされちゃわないのかな? 変装して来るんだろうか、園之さん
あれこれと思いを巡らせながらドレッサー前の美来。
お化粧が嬉しい。凄く嬉しい……。
あたしって? 園之さんのこと、好きになっちゃったのかな? ラミーはもち推していたけど、あくまでラミーへの想いだったし、恋ではなかった……
手にした、動きの止まっていたパフで再びファンデーションを塗る。
洋服はエレガントなベージュのプリーツスカートと菫色のブラウスを選んだ。 今日は美来のトレードマークのポニーテールを下ろしている。 フェミニンな黒のレースアップサンダルを素足に履いた。
先週ぐらいから鳴き始めた蝉の声が空の青をさらにくっきりとさせる。
――――こんな所にこーんな可愛い佇まいのお店があったんだ~
白いログハウスだ。 カランコローン。ドアベルが愛らしい音を立てた。
園之は……変装していなかった。シンプルな黒いポロシャツを着、ブルーのスリムデニムを履いている。
どこからどう見ても、派手・派手の『ラミーさん』の顔のまんま、頭のまんま。サングラスを掛けもしなければ付け髭など着けていない。
マニアックな人の間でだけ有名人なのだな、たぶん。知らんけど。
奥の4人掛けテーブルで既に待っていた園之が立ち上がり手を振って見せた。
あの『ラミーの一生懸命』で醸されていた暗さが見当たらない。恥ずかしそうにしているが嬉しそう。
美来
園之
ゴソゴソゴソ。園之はなにかをテーブルの下で隠したあと答えた。
園之
嘘臭い
美来はテーブル下に目をやり、園之が手にしている物を見た。
『素敵な女性の口説き方』という本だった。
美来
頬を真っ赤に染める美来。
あたし、今「恋」って言ったよねー。マジか。そうなんか。そうなんや――――
美来は、自分は園之を好きと気づいた。
園之
美来
あたし、超良いこと言ったね、ネネネネネ?! 今!
とお調子に乗りつつも、園之の出世を本気で祈る美来。
園之
園之が『オレ』と言ったことに自分で気づいていないのはリラックスして来たからだろうと、美来は喜んでいる。だから敢えて触れない。
美来
園之
え、怖い
青くなった美来の顔を見てすぐさま付け加える園之。
園之
お尻出すことがアートなんだ~
美来は、視聴者からラミーへの質問『しっぽの痕の有無』についてを思い出した。
美来
園之
哀しげな園之。ラミー、降臨か。
美来
ラミーは登録者数が凄いけど、有名じゃないらしい。小説だからそういうことで許してほしい。
園之
チャンて言ってくれた~
園之という男はそこらへんが鈍感なのか、自分がいつの間にか言っていることに気づいていない様子。
美来は何気にときめいている。
美来
園之
美来
園之
美来
園之がリードしなさそうなので、右手を上げ店員に声を掛け注文する美来。
その様子を見て園之は
園之
とひと言言い、リュックをゴソゴソし始めたが、すぐに思い直したようにその動きを止めた。
口角をキュッと上げ、下がり気味の眉で美来は言う。
美来
園之
真っ直ぐな線のような園之の「オケ」は風呂桶みたいだ。
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