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瑠璃

でも結局

瑠璃

全然作品出せてないみたいだけどね

僕は彼女が語る物語を

一言も喋らず聞いた。

彼女は話している最中

どこか悲しそうだった。

唯人

それが、七瀬涙奈さんの...

唯人

いや

唯人

櫻田瑠璃さんの話ですか?

何となく察していた。

根拠がある訳でもないのに

なんというか

僕の本能がそう言っている。

ちらっと彼女の方を見ると

驚いなような顔でこちらを見ていた。

瑠璃

一言も「私」って言っていないのに

瑠璃

どうして分かったの?

唯人

勘です

瑠璃

勘でこんなこと当てられるわけないじゃない

当たり前かのように

正体を当てた僕が

正直1番驚いている。

なんて

口が裂けても言えない。

唯人

それで

唯人

その本はいつ発売するんですか

瑠璃

発売なんてしないよ

瑠璃

続きがないもの

そう言って後ろのページをめくった。

本当に真っ白で何も書かれてない。

次のページも

その次のページも。

瑠璃

私の作品読んだことあるって言ってたよね

瑠璃

2作品とも少なからずハッピーエンドなの

瑠璃

でもさ

そこから彼女は

しばらく次の言葉を話さなかった。

気づけば辺りは暗くなり、

彼女の表情もよく見えない。

だんだん暗くなる時間は

遅くなってきたと感じるけど

やっぱりまだ早いなと思う。

瑠璃

ハッピーエンドなんてもの

瑠璃

私にはもう必要ない

彼女はそう吐き捨てるように

言った。

唯人

それってどういう...

瑠璃

とにかく私はもう物語は書けない

瑠璃

続きは書かないの

唯人

っ...じゃあ

唯人

その続き僕に書かせてください

そんな言葉が出てくるなんて

自分でも驚いている。

瑠璃

え...?

唯人

勿体ないですよ

唯人

続き書かないなんて

唯人

せめてそれだけは完成させましょうよ

瑠璃

でも、だって...

瑠璃

...いや、キリを付けた方が

瑠璃

いいのかも

少しの間の後

彼女は納得してくれた。

自分勝手すぎる僕の言葉を

拾ってくれた。

瑠璃

君を

瑠璃

私のマネージャーとして認めます

この間はあまりにも濃い 一日だったと思う。

逆に夢なのではと

疑ってしまうくらい。

一度頬をつねってみたが

変わらず痛かった。

翔真

お前、頬っぺた真っ赤だぞ

あまりにも強くやってしまったのか

言われるまで気づかなかった。

唯人

多分教室が暖かいからだよ

翔真

だったら両方赤くなるだろ

咄嗟に出た嘘は

あまりにも簡単に

バレてしまった。

唯人

そういえば

唯人

今日は部活の集まりないの?

翔真

おう

翔真

だから昼一緒に食べようぜ

人と関わるのが

あまり得意ではない僕だが

友達は一応いる。

高校に入学してから

最初にできた友達。

矢桐翔真。

席が前後だったということで

仲良くなった。

翔真はサッカー部に所属しており

いかにも陽キャな存在。

男女ともに友達も多くいる。

漫画で言うヒーローと言ったところだろう。

そんな彼がどうしてこんな僕と

仲良くしてくれているのかが謎でしかない。

翔真

そーいや

翔真

櫻田瑠璃って人に会ったんだよな?

唯人

そうだよ

翔真

どうだった?

唯人

なんというか、

最初の印象は無愛想。

でも昨日の会話で

無愛想な人ではないと思った。

となるとやはり彼女の印象は、

唯人

不思議な人だったよ

翔真

へぇ

翔真

可愛かったか?

翔真

美人だったか?

翔真

ほらあの噂はどうなんだ?

質問しておきながら

僕に喋らす隙は与えてくれない。

唯人

確かに綺麗な人だとは思ったよ

唯人

でも芸能人かどうかは知らない

絶対に言えないと思った。

確かに芸能人だという噂は

ある意味間違っていないと思う。

ただ作家と言うことは

言ってはいけないと思った。

翔真

...っていうか聞いてくれよ

彼女のことを考えていると

またいつもの如く

部活の愚痴を僕に吐く。

翔真の愚痴をおかずに 弁当を静かに食べる。

瑠璃

これ、読む?

僕に渡してきたのは

先程彼女に返却した本。

瑠璃

読んで、感想聞かせてよ

唯人

いいんですか?

瑠璃

いいもなにも

瑠璃

読んでくれなきゃわかんないでしょ

僕はその本を受け取り

鞄の中にしまう。

瑠璃

それとさなんでもいいから小説書いてきてよ

唯人

瑠璃

ただの興味本位だよ

瑠璃

頑張って

そもそも

自ら書くと言い出したことだ。

それくらいやらなければ。

僕はそれを引き受けた。

あの後、彼女から

"マネージャー"としての

最初の仕事を渡された。

翔真は愚痴を吐けてスッキリしたのか

気づけば僕の目の前から去って

別の友達のところにいる。

僕は静かになったことを確認して

彼女から借りた本を開く。

この小説が終わる時、僕らの恋も終わりを告げる。

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