コメント
2件
夜見た私は馬鹿だ、、、 てか名前の癖が強いwww あと最後の安心感半端ねぇ
怖ッ!これ、夜の暗い部屋で見たぜ★ 後、スマホと一対一で見たぜ★
主
主
蘭奈
主
主
主
主
主
主
主
今から7年ほど前の話になる。
私は大学を卒業したが、
就職も決まっていない有様だった。
ペラペラ
蘭奈
生来、
蘭奈
追い詰められないと動かないタイプで(テストも一夜漬けのタイプだ)
蘭奈
とお気楽に自分に言い聞かせ、
バイトを続けていた。
そんなその年の真夏、
友達の奈々と家でダラダラ話していると、
なぜか
奈々
蘭奈
と言う話に飛び、
その計画に熱中する事になった。
計画と言ってもズサンなモノであり、
まず北海道まで空路で行き、
そこからヒッチハイクで地元の九州に戻ってくる、
と言う計画だった
そんなこんなで、
バイトの長期休暇申請や、(私は丁度別のバイトを探す意思があったので辞め、
奈々は休暇をもらった)
北海道までの航空券、
巨大なリュックに詰めた着替え、
現金などを用意し、
計画から3週間後には、
私達は機上にいた。
札幌に到着し、
昼食を済ませて市内を散策しました。
慣れない飛行機に乗ったせいか、
私達は疲れのせいで夕方にはホテルに戻った。
さぁ、
いよいよヒッチハイクの始まりだ。
ヒッチハイクなど2人とも人生で初めての体験で、
流石にウキウキしていた。
何日までにこの距離まで行く綿密な計画はなく、
ただ「行ってくれるとこまで」という大雑把な計画だ。
まぁしかし、
そうそう止まってくれるものではなかった。
1時間ほど粘ったが、
一向に止まってくれない。
蘭奈
奈々
等と話していると、
ようやく開始1時間半後に、
最初の車が止まってくれた。
同じ市内までだったが、
南下するので距離を稼いだのは稼いだ。
距離が短くても嬉しいものだ。
夜の方が止まってくれやすいのでは?と言う想像は、
以外に当たりだった。
1番多かったのが、
長距離トラックだ。
距離が稼げるし、
まず悪い人はいないし、
かなり効率が良かった。
3日目にもなると、
私達は慣れたもので、
長距離トラックのお兄さん用にはタバコ等のお土産、
普通車の一般人には飴玉等のお土産、
と勝手に決め、
コンビニで事前に買っていた。
特にタバコが喜ばれた。
普通車に乗った時も、
喋り好きな奈々のおかげで、
常に車内は笑いに満ちていた。
4日目には本州に到達していた。
コツがつかめてきた私達は、
その土地の名物に舌鼓を打ったり、
一期一会の出会いを楽しんだりと、
余裕も出てきていた。
銭湯を見つけなるべく毎日風呂に入り、
宿泊も 2日に1度ネカフェに泊まると決め、
経費を節約していた。
ご好意でドライバーの家に泊めてくれる事もあり、
その時は本当にありがたかった。
夜ですよ?((圧
しかし、
2人共々に、
生涯トラウマになるであろう恐怖の体験が、
出発から約2週間後、
甲信地方の山深い田舎で起こったのだった。
その日の夜は、
2時間前に寂れた国道沿いのコンビニで降ろしてもらって以来、
中々車が止まらず、
それに加えてあまりの蒸し暑さに、
私達はグロッキー状態だった。
暑さと疲労の為か、
私達は変なテンションになっていた。
奈々
奈々
蘭奈
確かに先ほどのドライバーは、
このコンビニから車で10分程行った所に家があるらしい。
しかし、
どこの家かも分かるはずもなく、
言っても仕方の無い事だった。
時刻は深夜12時を少し過ぎた所だった。
私達は30分交代で、
車に手を上げるヤツ、
コンビニで涼むヤツ、
に別れることにした。
コンビニの店長にも事情を説明したら、
コンビニの店長ぉぉぉ!!!!!
と言ってくれた。
こういう、
田舎の暖かい人の心は実に嬉しい。
それからいよいよ1時間半も過ぎたが、
一向に車がつかまらない。
と言うか、
ほとんど通らない。
奈々も店長とかなり意気投合し、
いよいよ店長の行為に甘えるか、
と思っていたその時、
1台のキャンピングカーが、
コンビニの駐車場に停車した。
これが、
あの忘れえぬ悪夢の始まりだった。
運転席のドアが開き、
コンビニに、
年齢はおよそ60代くらいかと思われる男性が入ってきた。
男の服装は、
カウボーイがかぶるようなツバ広の帽子にスーツ姿と言う、
奇妙なモノだった。
私はその時丁度コンビニの中におり、
何となくその男の様子を見ていた。
買い物籠にやたらと大量の絆創膏などを放り込んでいる。
コーラの1.5Lのペットボトルを2本も投げ入れていた。
その男は会計をしている最中、
立ち読みをしている私の方をじっと凝視していた。
何となく気持ちが悪かったので、
視線を感じながらも私は無視して本を読んでいた。
やがて男は店を出た。
そろそろ交代の時間なので、
奈々の所に行こうとすると、
駐車場で奈々が男と話をしていた。
奈々
蘭奈
どうやらそういう事らしい。
私は当初、
男に何か気持ち悪さは感じていたのだが、
間近で見ると人の良さそうな普通のおじさんに見えた。
私は疲労や眠気の為にほとんど思考が出来ず、
蘭奈
などと言う良く分からない納得を自分にさせた。
キャンピングカーに乗り込んだ時、
しまったと思った。
おかしいのだ。
何がと言われても、
おかしいからおかしい、
としか書き様がないかも知れない。
これは感覚の問題なのだから...
ドライバーには家族がいた。
もちろん、
キャンピングカーと言うことで、
中に同乗者が居る事は予想はしていたのだが。
父。
ドライバー。
およそ60代。
母。
助手席に座る。
見た目70代。
双子の息子。
どう見ても40過ぎ。
人間は予想していなかったモノを見ると、
一瞬思考が止まる。
まず車内に入って目に飛び込んで来たのは、
まったく同じギンガムチェックのシャツ、
同じスラックス、
同じ靴、
同じ髪型(頭頂ハゲ)、
同じ姿勢で座る、
同じ顔の双子の中年のオッサンだった。
奈々も絶句していた様子だった。
いや、
別にこういう双子が居てもおかしくはない。
おかしくもないし悪くもないのだが…
あの異様な雰囲気は、
実際その場で目にしてみないと伝えられない。
父やんけぇぇぇ!!!!!
と父に言われるがまま、
私たちはその家族の雰囲気に呑まれるかの様に、
まず私達は家族に挨拶をし、
車内に腰を下ろした。
父が運転をしながら、
自分の家族の簡単な説明を始めた。
母が助手席で前を見て座っている時は良く分からなかったが、
母も異様だった。
ウエディングドレスのような真っ白なサマーワンピース。
顔のメイクは、
バカ殿かと見まがうほどの白粉ベタ塗り。
極めつけは母の名前で、
『聖(セント)ジョセフィーヌ』
ちなみに父は、
『聖(セント)ジョージ』
と言うらしい。
双子にも言葉を失った。
名前が
『赤』
と
『青』
と言うらしいのだ。
赤ら顔のオッサンは
『赤』
で、
ほっぺたに青痣があるオッサンは
『青』
普通、
自分の子供にこんな名前をつけるだろうか?
私達はこの時点で目配せをし、
適当な所で早く降ろしてもらう決意をしていた。
狂っている。
私達には主に父と母が話しかけて来て、
私達も気もそぞれで適当な答えをしていた。
双子はまったく喋らず、
まったく同じ姿勢、
同じペースでコーラのペットボトルをラッパ飲みしていた。
ゲップまで同じタイミングで出された時は筋が凍り、
もう限界だと思った。
奈々
奈々
キャンピングカーが発車して15分も経たないうちに、
奈々が口を開いた。
しかし、
父はしきりに私達を引きとめ、
母は
母やんけぇぇぇ!!!!!
と、
意味不明な事を言っていた。
私達は腰を浮かせ
蘭奈
しきりに訴えかけたが、
父は
父やんけぇぇぇ!!!!!
と言って、
降ろしてくれる気配はない。
夜中の2時にもなろうかと言う時に、
晩餐も晩飯も無いだろうと思うのだが…
双子のオッサン達は、
相変わらず無口で、
今度は棒つきのペロペロキャンディを舐めている。
奈々
蘭奈
と、
奈々が小声で囁いてきた。
私は相槌を打った。
しきりに父と母が話しかけてくるので、
中々話せないのだ。
1度父の言葉が聞こえなかった時など、
父やんけぇぇぇ!!!!!
とえらい剣幕で怒鳴られた。
その時、
双子のオッサンが同時にケタケタ笑い出し、
私達はいよいよヤバいと確信した。
キャンピングカーが国道を逸れて山道に入ろうとしたので、
流石に私達は立ち上がった。
蘭奈
と運転席に駆け寄った。
父は延々と、
父やんけぇぇぇ!!!!!
と言って聞こうとしない。
母も
母やんけぇぇぇ!!!!!
と引き止める。
私らは小声で話し合った。
いざとなったら逃げるぞ、
と。
流石に走行中は危ないので、
車が止まったら逃げよう、
と。
やがてキャンピングカーは山道を30分ほど走り、
小川がある開けた場所に停車した。
父やんけぇぇぇ!!!!!
と父。
その時、
キャンピングカーの1番後部のドア(私達はトイレと思っていた)から
キャッキャッ
と、
子供の様な笑い声が聞こえた。
まだ誰かが乗っていたか!?
その事に心底ゾッとした。
母やんけぇぇぇ!!!!!
と母。
マモル…家族の中では、
唯一マシな名前だ。
幼い子供なのだろうか。
すると、
今まで無口だった双子のオッサン達が口をそろえて
双子のオッサンやんけぇぇぇ!!!!!
と、
ハモりながら叫んだ。
母やんけぇぇぇ!!!!!
と母。
父やんけぇぇぇ!!!!!
といきなり爆笑する父。
奈々
蘭奈
私達は車の外に降りた。
良く見ると、
男が川の傍で焚き火をしていた。
まだ仲間がいたのか…と、
絶望的な気持ちになった。
異様に背が高くゴツい。
2m近くはあるだろうか。
父と同じテンガロンハットの様な帽子をかぶり、
スーツと言う異様な出で立ちだ。
帽子を目深に被っており、
表情が一切見えない。
焚き火に浮かび上がった、
キャンピングカーのフロントに描かれた十字架も、
何か不気味だった。
ミッ○ーマ○スのマーチの口笛を吹きながら、
男は大型のナイフで何かを解体していた。
毛に覆われた足から見ると、
どうやら動物の様だった。
イノシシか野犬か…どっちにしろ、
そんなモノを食わさせるのは御免だった。
私達は逃げ出す算段をしていたが、
予想外の大男の出現、
大型のナイフを見て、
萎縮してしまった。
父やんけぇぇぇ!!!!!
と父。
大男がナイフを置き、
傍でグツグツ煮えている鍋に味付けをしている様子だった。
奈々
蘭奈
と奈々。
逃げようと言う事だろう。
私も行く事にした。
母やんけぇぇぇ!!!!!
と母。
私達はキャンピングカーの横を通り、
森に入って逃げようとしたその時、
キャンピングカーの後部の窓に、
異様におでこが突出し、
両目の位置が異様に低く、
両手もパンパンに膨れ上がった容姿をしたモノが、
バン!
と顔と両手を貼り付けて叫んだ。
マーマ!!
もはや限界だった。
私達は脱兎の如く森へと逃げ込んだ。
後方で父と母が何か叫んでいたが、
気にする余裕などなかった。
奈々
と奈々は呟きながら、
森の中を走っている。
お互い何度も転んだ。
蘭奈
奈々
と、
小さなペンライト片手にがむしゃらに森を下へ下へと走っていった。
考えが甘かった。
小川のあった広場からも、
町の明かりは近くに見えた気がしたのだが、
1時間ほど激走しても、
一向に明かりが見えてこない。
完全に道に迷ったのだ。
心臓と手足が根をあげ、
私達はその場にへたり込んだ。
奈々
と奈々。
蘭奈
奈々
蘭奈
奈々
蘭奈
私達は精神も極限状態にあったのか、
なぜかおかしさがこみ上げてきた。
ひとしきり爆笑した後、
森独特のむせ返る様な濃い匂いと、
周囲が一切見えない暗闇に、
現実に戻された。
変態一家から逃げたのは良いが、
ここで遭難しては話にならない。
樹海じゃあるまいし、
まず遭難はしないだろうが、
万が一の事も頭に思い浮かんだ。
奈々
蘭奈
私は一刻も早く下りたかったが、
真っ暗闇の中をがむしゃらに進んで、
さっきの川原に戻っても恐ろしいので、
腰を下ろせそうな倒れた古木に座り、
休憩する事にした。
一時は、
お互いあーだこーだと喋っていたが、
極端なストレスと疲労の為か、
お互いにうつらうつらと意識が飛ぶようになってきた。
ハッと目が覚めた。
反射的に携帯を見る。
午前4時。
辺りはうっすらと明るくなって来ている。
横を見ると、
奈々がいない。
一瞬パニックになったら、
私の真後ろに奈々は立っていた。
蘭奈
と聞く。
奈々
と、
木の棒を持って何かを警戒している様子だった。
蘭奈
奈々
かすかに遠くの方で音が聞こえた。
口笛だった。
ミッ○ーマ○スのマーチの。
CDにも吹き込んでも良いくらいの、
良く通る美音だ。
しかし、
私達にとっては、
恐怖の音以外の何物でもなかった。
奈々
蘭奈
奈々
再び私たちは、
猛ダッシュで森の中へと駆け始めた。
辺りがやや明るくなったせいか、
以前よりは周囲が良く見える。
躓いて転ぶ心配が減ったせいか、
かなりの猛スピードで走った。
20分くらい走っただろうか。
少し開けた場所に出た。
今は使われていない駐車場の様だった。
街の景色が、
木々越しにうっすらと見える。
大分下ってこれたのだろうか。
奈々
蘭奈
我慢が出来ないらしい。
古びた駐車場の隅に、
古びたトイレがあった。
私も多少もよおしてはいたのだが、
大男がいつ追いついてくるかもしれないのに、
個室に入る気にはなれなかった。
私がトイレの外で目を光らせている隙に、
奈々が個室で用を足し始めた。
奈々
と、
個室の中から大声で奈々が言い出した。
蘭奈
奈々
奈々に言われて初めて気がつき、
聴こえた。
確かに、
女子トイレの中から奈々じゃない女性の泣き声がする…
奈々も私も黙り込んだ。
奈々以外の誰かが女子トイレに入っているのか?
何故、
泣いているのか?
奈々
奈々
蘭奈
正直、
気味が悪かった。
しかし、
こんな山奥で女の子が、
寂れたトイレの個室で1人泣いているのであれば、
何か大事があったに違いない。
私は意を決して女子トイレに入り、
泣き声のする個室に向かい声をかけた。
蘭奈
返事はなく、
まだ泣き声だけが聴こえる。
蘭奈
泣き声が激しくなるばかりで、
一向にこちらの問いかけに返事が帰ってこない。
その時、
駐車場の上に続く道から車の音がした。
蘭奈
奈々
私は確信とも言える嫌な予感に襲われ、
奈々の個室のドアを叩いた。
奈々
蘭奈
奈々
数秒経って、
青ざめた顔で奈々がズボンを履きながら出てきた。
と同時に、
駐車場に下ってくるキャンピングカーが見えた。
蘭奈
今森を下る方に飛び出たら、
確実にあの変態一家の視界に入る。
選択肢は、
唯一死角になっているトイレの裏側に隠れる事しかなかった。
女の子を気遣っている余裕は消え、
私達はトイレを出て裏側で息を殺してジッとしていた。
頼む、
止まるなよ。
そのまま行けよ、
そのまま…
奈々
蘭奈
奈々が早口で呟いた。
キャンピングカーのエンジン音が駐車場で止まったのだ。
ドアを開ける音が聞こえ、
トイレに向かって来る足音が聴こえ始めた。
このトイレの裏側はすぐ5m程の崖になっており、
足場は私達が立つのがやっとだった。
よほど何かがなければ、
裏側まで見に来る事はないはずだ。
もし私達に気づいて近いづいて来ているのであれば、
最悪の場合、
崖を飛び降りる覚悟だった。
飛び降りても怪我はしない程度の崖であり、
やれない事はない。
用を足しに来ただけであってくれ、
頼む…
私達は祈るしかなかった。
しかし、
一向に女の子の泣き声が止まらない。
あの子が変態一家にどうにかされるのではないか?
それが気が気でならなかった。
男子トイレに誰かが入ってきた。
声の様子からすると父だ。
父やんけぇぇぇ!!!!!
と、
どうやら小の方をしている様子だった。
その後すぐに、
個室に入る音と足音が複数聞こえた。
双子のオッサンだろうか。
最早、
女の子の存在は完全にバレているはずだった。
女子トイレに入った母の、
母やんけぇぇぇ!!!!!
と言う声も聴こえた。
女の子はまだ泣きじゃくっている。
やがて父も双子のオッサン達(恐らく)も、
トイレを出て行った様子だった。
おかしい。
女の子に対しての、
変態一家の対応が無い。
やがて母も出て行って、
変態一家の話し声が遠くになっていった。
気づかないわけがない。
現に女の子はまだ泣きじゃくっているのだ。
私と奈々が怪訝な顔をしていると、
父の声が聞こえた。
父やんけぇぇぇ!!!!!
と言っていた。
何を待つのかは聞き取れなかった。
どうやら双子のオッサンたちが、
グズッている様子だった。
やがて平手打ちの様な音が聴こえ、
恐らく双子のオッサンの泣き声が聴こえてきた。
悪夢だった。
楽しかったはずのヒッチハイクの旅が、
なぜこんな事に…
今まではあまりの突飛な展開に怯えるだけだったが、
急にあの変態一家に対して怒りがこみ上げて来た。
奈々
奈々
蘭奈
奈々が小声で言った。
しかし、
私は向こうが私達に気がついてない以上、
このまま隠れて、
奴らが通り過ぎるのを待つほうが得策に思えた。
女の子の事も気になる。
奴らが去ったら、
ドアを開けてでも確かめるつもりだった。
その旨を奈々に伝えると、
しぶしぶ頷いた。
それから15分程経った時。
母やんけぇぇぇ!!!!!
母の声がした。
待っていた主が駐車場に到着したらしい。
何やら談笑している声が聞こえるが、
良く聞き取れない。
再びトイレに向かってくる足音が聴こえて来た。
ミッ○ーマ○スのマーチの口笛。
アイツだ!!
軽快に口笛を吹きながら、
大男が小を足しているらしい。
女子トイレの女の子の泣き声が一段と激しくなった。
何故だ?
何故気づかない?
やがて泣き叫ぶ声が断末魔の様な絶叫に変わり、
フッと消えた。
何かされたのか?
見つかったのか!?
しかし、
大男は男子トイレににいるし、
他の家族が女子トイレに入った形跡も無い。
やがて、
口笛と共に大男がトイレを出て行った。
女の子がトイレから連れ出されてはしないか、
と心配になり、
危険を顧みずに、
一瞬だけトイレの裏手から私が顔を覗かせた。
テンガロンハットにスーツ姿の、
大男の歩く背中が見える。
大男やんけぇぇぇ!!!!!
ふいに大男が叫んだ。
私は頭を引っ込めた。
ついに見つかったか!?
奈々は木の棒を強く握り締めている。
父やんけぇぇぇ!!!!!
母やんけぇぇぇ!!!!!
と父と母。
双子のオッサンの笑い声。
大男やんけぇぇぇ!!!!!
と大男。
母やんけぇぇぇ!!!!!
父やんけぇぇぇ!!!!!
と父と母。
双子のオッサンの笑い声。
何を言っているのか?
どうやら、
私達の事ではないらしいが...
やがて、
キャンピングカーのエンジン音が聴こえ、
車は去ってった。
辺りはもう完全に明るくなっていた。
変態一家が去ったのを完全に確認して、
私は女子トイレに飛び込んだ。
全ての個室を開けたが、
誰もいない。
鍵も全て壊れていた。
そんな馬鹿な…
後から女子トイレに入ってきた奈々が、
私の肩を叩いて呟いた。
奈々
奈々
蘭奈
2人して幻聴を聴いたとでも言うのだろうか。
確かに、
あの変態一家の女の子に対する反応が一切無かった事を考えると、
それも頷けるのではあるが…
しかし、
あんなに鮮明に聴こえる幻聴などあるのだろうか…
駐車場から上りと下りに続く車道があり、
そこを下れば確実に国道に出るはずだ。
しかし、
再び奴らのキャンピングカーに遭遇する危険性もあるので、
あえて森を突っ切る事にした。
街はそんなに遠くない程度に見えているし、
周囲も明るいので、
まず迷う可能性も少ない。
私達は無言のまま森を歩いた。
約2時間後、
無事に国道に出る事が出来た。
しかし、
着替えもない、
荷物もない。
頭に思い浮かんだのは、
あの親切なコンビニの店長だった。
国道は都会並みではないが、
朝になり交通量が増えてきている。
あんな目にあって、
再びヒッチハイクするのは度胸があったが、
何とかトラックに乗せて貰える事になった。
ドライバーは、
私達の汚れた姿に当初困惑していたが、
事情を話すと快く乗せてくれた。
事情と言っても、
私達が体験した事をそのまま話してもどうか、
と思ったので、
キャンプ中に山の中で迷った、
と言う事にしておいた。
運転手も、
そのコンビニなら知っているし、
良く寄るらしかった。
約1時間後、
私達は例の店長のいるコンビニに到着した。
店長はキャンピングカーの件を知っているので、
そのまま私達が酷い目にあった事を話したのだが、
話してる最中に、
店長は怪訝な顔をし始めた。
コンビニの店長ぉぉぉ!!!!!
コンビニの店長ぉぉぉ!!!!!
蘭奈
…どういう事なのか。
私達は確かに、
あのキャンピングカーがコンビニに止まり、
レジで会計も済ませているのを見ている。
会計したのは店長だ。
もう1人のバイトの子もいたが、
あがったのか今はいない様だった。
店長もグルか??
不安が胸を過ぎった。
奈々と目を見合わせる。
奈々
と奈々が言い、
私をトイレに連れ込む。
蘭奈
と私。
奈々
奈々
蘭奈
それが1番良い方法に思えた。
私達の意見がまとまり、
トイレを出た。
私達は店長と談笑するドライバーの所へ戻った。
奈々
と、
ドライバーが吸っていた銘柄のタバコを1カートン、
レジに置く奈々。
交渉成立だった。
例の変態一家の件で、
警察に行こうとはさらさら思わなかった。
あまりにも現実離れし過ぎており、
私達も早く忘れたかった。
リュックに詰めた服が心残りではあったが...
ドライバーのトラックが、
市街に向かうのも幸運だった。
タバコの贈り物で、
終始上機嫌で運転してくれた。
いつの間にか、
私達は車内で寝ていた。
ふと目が覚めると、
ドライブインにトラックが停車していた。
ドライバーが焼きソバを3人分買ってきてくれて、
トラックの運ちゃん
蘭奈
奈々
車内で食べた。
車が走り出すと、
奈々は再び眠りに落ちた。
私は眠れずに、
窓の外を見ながら、
あの悪夢の様な出来事を思い返していた。
一体あいつらは何だったのか。
トイレの女の子の泣き声は…
蘭奈
思案が吹き飛び、
私は思わず声を上げていた。
トラックの運ちゃん
とドライバーのお兄さん。
蘭奈
トラックの運ちゃん
蘭奈
トラックの運ちゃん
と、
しぶしぶトラックを止めてくれた。
この問答で奈々も起きたらしい。
奈々
蘭奈
私の指差した方を見て、
奈々が絶句した。
朽ち果てたドライブインに、
あのキャンピングカーが止まっていた。
間違いない。
色合い、
形、
フロントに描かれた十字架...
しかし、
何かがおかしかった。
車体が、
何十年も経った様にボロボロに朽ち果てており、
全てのタイヤがパンクし、
窓ガラスも全て割れていた。
蘭奈
トラックの運ちゃん
とドライバーに説明し、
トラックを路肩に止めてもらったまま、
私達はキャンピングカーへと向かった。
奈々
蘭奈
と奈々。
こっちが聞きたいくらいだった。
近づいて確認したが、
間違いなくあの変態一家のキャンピングカーだった。
周囲の明るさ・車の通過する音などで安心感はあり、
恐怖感よりも
蘭奈
と言う好奇心が勝っていた。
錆付いたドアを引き開け、
酷い匂いのする車内を覗き込む。
奈々
奈々
蘭奈
奈々が叫ぶ。
…確かに、
私達が車内に置いて逃げて来た、
リュックが2つ置いてあった。
しかし、
車体と同様に、
まるで何十年も放置されていたかの如く、
ボロボロに朽ち果てていた。
中身を確認すると、
服や日用雑貨品も同様に朽ち果てていた。
奈々
蘭奈
もう1度奈々が呟いた。
何が何だか、
もはや脳は正常な思考が出来なかった。
とにかく、
一時も早くこの忌まわしいキャンピングカーから離れたかった。
奈々
蘭奈
奈々も怯えている。
車内を出ようとしたその時、
キャンピングカーの1番奥のドアの向こうで、
ガタッ
と音がした。
ドアは閉まっている。
開ける勇気はない。
私達は恐怖で半ばパニックになっていたので、
そう聴こえたかどうかは、
今となっては分からないし、
もしかしたら、
猫の鳴き声だったかもしれない。
が、
確かに。
その奥のドアの向こうで、
その時はそう聴こえたのだ。
マーマ!!
蘭奈
奈々
私達は叫びながらトラックに駆け戻った。
するとなぜか、
ドライバーも顔が心なしか青ざめている風に見えた。
無言でトラックを発進させるドライバー。
トラックの運ちゃん
蘭奈
同時にドライバーと私が声を発した。
ドライバーは苦笑し
トラックの運ちゃん
トラックの運ちゃん
奈々
と奈々。
トラックの運ちゃん
トラックの運ちゃん
蘭奈
トラックの運ちゃん
トラックの運ちゃん
運転手は笑っていたが、
運転手が再現してみた口笛は、
ミッ○ーマ○スのマーチだった。
30分ほど、
無言のままトラックは走っていた。
そして市街も近くなったと言う事で、
最後にどうしても聞いておきたい事を、
私はドライバーに聞いてみた。
蘭奈
トラックの運ちゃん
蘭奈
トラックの運ちゃん
トラックの運ちゃん
蘭奈
奈々
奈々が私の言葉に食い気味に入ってきた。
トラックの運ちゃん
市街まで送ってもらった運転手に礼を言い、
安心感からか、
その日はホテルで爆睡した。
翌日~翌々日には、
私達は新幹線を乗り継いで地元に帰っていた。
なるべく思い出したくない、
悪夢の様な出来事だったが、
時々思い出してしまう。
あの一家は一体何だったのか?
実在の変態一家なのか?
幻なのか?
この世の者ではないのか?
あの山のトイレで確かに聞こえた、
女の子の泣き叫ぶ声は何だったのか?
ボロボロに朽ち果てたキャンピングカー、
同じように朽ちた私達のリュックは、
一体何を意味するのか?
蘭奈
奈々
蘭奈
奈々
蘭奈
今でもたまに遊ぶ親友の仲なのは変わらない。
奈々の底抜けに明るい性格に、
あの悪夢の様な旅の出来事が、
いくらか気持ち的に助けられた気がする。
30にも手か届こうかとしている現在、
私達は無事に就職も出来(大分前ではあるが)、
普通に暮らしている。
奈々は、
未だにキャンピングカーを見ると駄目らしい。
私はあのミッ○ーマ○スのマーチがトラウマになっている。
今でもあの一家、
とくに大男の口笛が夢に出てくる事がある。
主
奈々
主
蘭奈
主
奈々
蘭奈
主
奈々
主
蘭奈
主
蘭奈
奈々