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海にのって!

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海にのって!

7 - 少し冷めた美味しい夕飯

♥

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2023年08月06日

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悠佑

……はぁ

俺は昼の出来事を思い返して、 後悔をしていた。

悠佑

なんであんなこと
してしまったんやろ…

悠佑

うぁ〜……

精神が崩壊しかけてたとはいえ、 りうらに抱きつくだなんてありえない と思いながらベッドの上を転がる

悠佑

りうらは、優しかった…し

悠佑

…言う、べきなんかな

一時的にだが、俺の精神を安定させて もらった。ヒトの温もりは大切だと 思い出させてくれたことは恩だからだ

悠佑

もし、嫌われたら

真実を知った彼がどのような反応を するかはわからないけれど。

悠佑

もし、軽蔑されたら

その未来を不安に思わない自分は いない。

悠佑

俺は生きてけるんやろうか

きっと、死んでしまうんやろうな

悠佑

……

わかりきった答えを、頭の中で 並べて、結局言える覚悟なんて きまりっこなかったのだと分かる

悠佑

はぁーあやめよやめやめ!

そう言ってベッドから飛び、 床にたった。

悠佑

飯食ったら忘れるやろ!

ガッツポーズをして夕飯を作るために キッチンルームへと向かった

悠佑

威勢よく言ったは
ええものの…

結局食べたいものさえ決まって いなかったためか作りすぎてしまった

悠佑

どうしよっかなこれ…

食欲がめちゃくちゃある、という 状況でないのにも関わらず、 大量にある料理にため息をついた

悠佑

せめて…もう一人くらい
おったら……

ボソッと己の口から出た

悠佑

え、

その事実に驚いた。 人との関わりを避けに避けてここに 住んでいるというのに。

悠佑

ぁー……

脳裏に浮かんだのは赤毛の少年

悠佑

俺も、変えられたな

脳みそを溶かされて、染められそうに なっている事実を、知らないわけでは なかったのだが、ここまでとは 思っていなかった。

悠佑

ま、食い切れんかった分は
明日に回して…

悠佑

今日はやけ食いじゃーい!!

ビール缶を開けてグイッと半分ほどを 一気に飲みこみ、夕飯を食い始めた

悠佑

ぷはー!うまい!

たいして美味いわけでもないのだが これは定番の声掛けみたいなもので 久しぶりに言ってみた

悠佑

はぁーさて、録画してた番組
でも見るかな!

リモコンを手に取り、慣れていない 手つきで操作をして、一つの バラエティー番組を選択した。

悠佑

よし、準備完了!

悠佑

さてと、どれから
食おうかなぁ〜

机いっぱいに並べられた料理に 目移りしながら まずはシーザーサラダを口に運んだ。

悠佑

うん、冷蔵庫にほったらかし
にされてあったレタスの割に
いい感じの味やな

悠佑

さすが俺。

自画自賛をしてしまうほどには、 しなしなしていたレタスだったのだ。 料理師免許を持ってるから、 当然かもしれないが。

悠佑

…あー、この芸人、
まだテレビでてんだなー

悠佑

凄いなあー…

きっと俺には計り知れない努力が、 そこにつまっているのだろう。 この番組を見ながらおもったのは、 それだけだった。

悠佑

はぁ…結局変わらんままか

一人で自然に笑える日は、 元に戻れる日は、 一体いつになるのだろうか。

悠佑

いや、こん時くらいは
ネガティブやめよ!

悠佑

さぁー食うぞ食うぞ!

まだまだ余りに余っている料理に 目をやり、苦しくなりそうな未来を 振り払って食べ始めた。

悠佑

…流石に、もー食えんなw

自嘲気味に笑った俺の目線の先には 三分のニほど余った料理があった。

悠佑

冷蔵庫に入るやろか?

そのことについて、 考えていた時だった

コンコンコン

悠佑

…!

窓を叩く音がした。

悠佑

……

おそるおそるカーテンが閉まっている 大きな窓の方へと近づいて行く。

悠佑

ええい!ままよ!

思い切ってカーテンを開けてみた。

りうら

ユウスケ!

窓越しだと言うのに声が聞こえる程、 でかい声で俺の名前を呼んだのは 赤毛の少年ーーりうらだった。

悠佑

…なんやりうらか……。

気張っていた心が一気に解放される。 もしやとも思っていたが、それでも、 怖かったのだ。

悠佑

なんで窓から来てんのや…

りうら

??あけて!!

どうやらこちらからの声は 聞こえていないらしい。 俺の声ってそんな小さいか?

悠佑

はあ、ま、いいか。
開けたろ。

ガラガラと音を立てながら窓を開けた 同時に、元気よくりうらが 俺の腕の中に飛び込んできた

りうら

ユウスケ!!こんばんは!

悠佑

っうわっ、ぶないなぁ!

俺はそれを受け止めて、 "危ない"なんて言いながら、 彼の暖かさに歓喜していた。

りうら

ちょうどご飯
食べてたとこなの?

悠佑

うん、まあ…
食べ終わったとこやな

りうら

ええーっ!なぁんだぁー…
ざんねんだなぁ……

あからさまに残念そうに頭と腕を 下げた。 なんというんだったか、こういう、 あからさまな行動を……

りうら

せっかく"急いで"きたのに

今度は上目遣いをしながら、 "急いで"の部分を強調させて話した。 ああ、そうだ、思い出した。

悠佑

"あざとい"や!

りうら

え、なにそれ

まずい、声に出てしまっていた。 幸いりうらは意味を知らないようで 助かった。

悠佑

い、いや、なんもない
こっちの話やから…

なんとか誤魔化して、話題を すり替えることに専念するものとした

悠佑

…一緒には食えんけど、
飯の余りならあるで。

りうら

え!本当!?食べる食べる!

こんなにも目を輝かせてくれるなら、 あざとくてもなぜだか許せた。 多分これは、りうら限定なのだろう。

悠佑

ほら、そこの机にあるから
座って食べとき。

悠佑

冷めとるけどな(笑)

りうら

うん!

悠佑

っおい!

勢いの良い返事をした後、 手を料理に突っ込もうとしていた。 思わず声を上げて手を掴んだ。

りうら

っ?ユウスケなに?

少し驚いたようで、料理に目線が いきながらも、こちらを見た。

悠佑

箸つかえ、箸。

悠佑

それか、スプーンとか
フォークとかでもいいから

りうら

はし?すぷぅん?ふぉおく?

全て知らないといった様子で、 はてなマークを頭に浮かべている。 それを見て思い出した。

悠佑

りうらは人魚で俺は人間なことを。

悠佑

……そう、やんな

りうら

…、?

俺は、結局は醜い人間なんだ。

りうら

…ねえ、なんなのそれ?
どんなの?どうやって使うの?

矢継ぎ早に飛んでくる質問に、 俺の思考は戻ってくる。

悠佑

あ、ああ。えっとなーーー

りうらに普通はこうするのだと、 使い方を教えてやった。

りうら

へえ…そう使うんだ

悠佑

箸はまだむずいやろうから
スプーンから使いな

悠佑

フォークは取ってくるから
その間食べとってええよ

りうら

うん!ありがとうユウスケ!

元気の良い声を聞いてから、 俺はキッチンへと向かった。

りうら

これもしかしてユウスケが
使ってたやつかな…

りうら

……こういうのって…

りうら

関節キッス、って言うんだよね

りうら

…きす…キス…ふへへへ

なにやらスプーンを見つめてるようだ なにを言ってるかはよく分からない 何をしているかも、わからなかった ので、近づくことにした。

悠佑

とってきたで〜

りうら

へっあ!?、う、うん!
ありがと!!!

俺が近づいていくと、慌てた様子を 見せた。変な声も出ていたので、 そんなにやましいことだったのかとか 色々考えてしまったが置いておく

りうら

それじゃあ、改めて
いただきます!

悠佑

はい、どーぞ。

いただきますと元気よく言うと りうらはがっつくように俺が作った飯を食べ始めた。

りうら

はぐっ、もぐもぐ、
んぐっもぐ、

悠佑

よく噛んで食えよ

りうら

んぅ!!

何歳児なのだろうかこの子供は。 と、思うほどの食べっぷりに俺は 呆れと満足感を感じていた。

悠佑

それにしても
美味そうに食うな〜

りうら

だって、めっちゃくちゃ
美味しいんだもん!

りうら

こんなの海の中じゃ
食べれないよ!?

自分の問いとも言えないような問いに 嬉しい解を即答してくれる。 こんな奴が友達なのを、今更ながら 嬉しく思った。

悠佑

ふは、りうらは可愛いな

りうら

むぅ…ろこおほうみえ
ほおいっえんら!

悠佑

ちゃんと食ってから
話しぃよw

頬袋いっぱいに俺の料理を頬張って 口元には食べかすをたくさんつけてる その顔がまあなんとも、マヌケで、 愛おしかった。

りうら

ごくんっ!っぷはぁ!

りうら

どこをどう見てそう言ったの!

どうやらさっきまで溜め込んでた物を 飲み込んでもう一度同じことを 言ったらしい。

悠佑

口、めっちゃ食べカス
ついとるで

りうら

あ、ほんとだ……

俺が言わなかったら気づかなかった のだろうか、舌で舐めとったり、 指で掴んで食べカスを食べたりして ようやくもう一度話し始めた

りうら

んん"っ…それで、なんで
僕が可愛いなんてことを
言ったの?

悠佑

いや…なんか全部
子供っぽくて…

りうら

子供じゃないし!
子供扱いしないで!

悠佑

そういうとこやねんな…

呆れながら、それでも可愛いと、 やはり感じてしまったせいか、 俺はつい手を伸ばしてりうらの頭を 撫で回していた

りうら

………

悠佑

…顔、赤いで?

りうら

いきなりはずるだもん…

先ほどまでの威勢はどこえやら、 頬を赤に染めて小声でそう言ったのが 聞こえた。

悠佑

ふふ、りうらはええ子やな

冗談半分で言った言葉だったが、 かなり本心に近い言葉だった。

りうら

…ちがうもん

悠佑

んー?そうは思えんなあ

りうら

今にも、おそっちゃうかも。

まだ赤らんでいる頬を見て、 彼にそんな勇気はないのだと思った

悠佑

できないことを一丁前に
言うんやないで?

悠佑

うれっ!

俺は掛け声と共にりうらの髪を わしゃわしゃとこねくりまわした。

りうら

うわぁっ!
髪型崩れちゃう!

悠佑

へぇー? 
そんなん気にしとったんか

りうら

ユウスケは気にしてなくても
僕は気にしてるんですぅー!

りうらはそう言うと手櫛で 髪を整え始めた。 せっかくボサボサにしてやったのに。

りうら

……かっこよく見せたいから、
セットしてきてるのに…

悠佑

なんか言ったか?

りうら

なーんも!

ちょっとむっとして答えていたので、 多分ぐしゃぐしゃにしたのは 許していないんだろうと察した。

りうら

あ、そうそう

りうら

今日は、ユウスケが
寝るまで帰らないからね

悠佑

は?

反射的に厳つい声を出してしまったが 仕方のないことだと思う。

悠佑

ついこの間のことを
忘れたんか?!

りうら

ああ、大丈夫だよ!

悠佑

何が大丈夫なんや!
俺はもう…!!

りうらがあんなふうに苦しむ姿は もう見たくないのに、りうらは、 今、笑っている。

りうら

……ユウスケ、大丈夫。
薬をまた飲めばいいんだから

悠佑

薬…?

薬と聞くと病に対するものと、 ヤバい方の"クスリ"を想起させるが、 多分どちらにも該当しないのだろう

りうら

うん、人になれる薬!
あと…三時間後くらいかな?
に、もっかい飲めばオッケー!

悠佑

……そ、そーなんや

それを聞き、 俺はそっと胸を撫で下ろした だが同時に不安にも思った

悠佑

その薬、何個あるんや

りうら

えーっと、あと2個かな

悠佑

それやと早朝に帰らな
あかんのとちゃう?

現在の時刻は午後8時を回っている 誤差はあるだろうが、薬を飲む間隔は 三時間おきくらいだろう。 そうすると、というわけだ。

りうら

大丈夫だよ、僕ずっと
起きてるつもりだし

悠佑

それは、ちょっと
無理あるやろ…

俺がそう反論すると、りうらは 少し怖いと感じる笑みを浮かべた。

りうら

…大丈夫だよ

りうら

それに……

悠佑

深刻そうな表情をしたりうらに、 俺は何も言わずにりうらの言葉を じっと待った。

りうら

…ユウスケ

悠佑

なんや?

少しの間があってから、りうらは 口を開け、話し始めた。

りうら

本当は、今日来たのはね

りうら

大事な話があって来たんだ

事の重大さがこちらにも伝わるほど、 りうらの瞳は真剣だった。

悠佑

……、

俺は少し、その瞳が怖かった

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コメント

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うわっ好き...りうちゃん健気だなぁ...もうはよう付き合っt((

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