サクラ

晩餐の席で始まった、15人の“自己紹介”。 “偽物”をあぶり出すためのこの行為は、同時に、全員の過去と関係性を浮き彫りにしていく。

佐久間大介が勢いよく立ち上がった。

大我がふっと笑った。

髙地優吾がうなずく。

北斗が立ち上がると、どこかぎこちない笑みを浮かべる。

大我の声がどこか寂しげに響く。

ホクトがそっぽを向いたまま、ぼそりと返した。

順に自己紹介が進んでいく。

優吾は巻き込まれ体質を嘆きつつも、皆に気を配り、 ジェシーは「AHAHA！」と連呼しながら優吾への愛を叫び、 慎太郎は昔大我と山登りした話を笑顔で語った。

ジェシーの無邪気な声に、少しだけ場が和んだ。

しかし、どこか空気は不穏だった。 “誰かが嘘をついている”──その前提が、皆の心を支配していた。

阿部亮平が立ち上がった。

佐久間がすかさず突っ込む。

照がぼそりと立ち上がる。

目黒蓮が珍しく小声で笑った。

照が言うと、目黒はゆっくり立ち上がる。

北斗が呟く。

舘様が優雅に立ち上がる。

翔太が涙目で笑う。

向井康二が元気に手を挙げる。

目黒がポツリと呟き、全員が笑う。

そして最後に──

短い言葉だったが、それで充分だった。

樹がため息交じりに言った。

だが、その時。

バチン。

突然、部屋の明かりが落ちた。

翔太の叫び声と、コップの割れる音が重なる。

優吾が叫んだ瞬間、遠くで聞こえた。

──ギイィ……。

扉が、一つだけ、軋んで開いた音。 そして、誰かの足音が……一歩、また一歩……廊下を歩いていく。

阿部亮平が立ち上がった。

ジェシーがポケットのスマホを取り出し、照らした。

その光が照らした先──

椅子がひとつ、空いていた。

緊迫した空気。

静寂を破ったのは、翔太の悲鳴だった。

全員が凍りついた。

大我が、震える声で呟く。

その言葉が、確かに“ゲームの始まり”を告げていた。