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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

美琴side

時は○○達が来る前に遡る

川西 太一

美琴っ!

ガラッと勢いよく扉を開けてきた彼は、普段見せないような焦った形相だった

千華野 美琴

太一!?びっくりしたー、ってか学校は?!

私も突然の事で驚きはしたものの、反射的に飛び出したことは結構どうでもいいことで

川西 太一

そんなことより、体調は?!

千華野 美琴

待って待って、安心して

千華野 美琴

面会できるくらい復活してるから大丈夫だよ

川西 太一

はぁ…もうほんっとに…

川西 太一

はぁ〜〜〜〜…

太一はヘナヘナ〜っと近くの椅子に座り込む

走ってきたのか汗だくで、Tシャツをパタパタと仰いでいる

千華野 美琴

ごめんね、心配かけて

川西 太一

無事なら何よりだけど

千華野 美琴

それで、学校は?

川西 太一

サボった。行っても身にならなそうだったから

千華野 美琴

部活も?

川西 太一

朝練は出てきた。放課後は微妙かな、監督にキレられそう…

千華野 美琴

ごめん…

川西 太一

いやいいよ。俺が早く美琴に会いたかったからだし

そう言うと太一は小さく微笑む

千華野 美琴

私も一緒に説教受けようかな〜

川西 太一

どうやってw

千華野 美琴

病院抜け出して

川西 太一

やめとけってw

千華野 美琴

冗談だよw

川西 太一

………………

千華野 美琴

………………

少しの間沈黙が落ちる

私が今しなきゃ行けないことは分かってる

今回のことについてちゃんと説明しなくちゃいけない

川西 太一

…病気、持ってたんだね

千華野 美琴

うん…、説明しなきゃとは思ってたんだけど、なかなか勇気出なくて…

ここまで来て、隠すことは出来ない

きっとお父さんにもあってるから大体のことは知ってるだろうし

流れ的にもちゃんと説明しないといけないのはわかってる

でも、それでも

まだ説明するのが怖い

死ぬかもしれない相手を好きでいるって

しんどいし、逃げたくなると思う

それがずっと嫌で言い出せなかった

○○にも太一にも

いつか、死ぬかもしれないってことを言って、2人が嫌な思いをして私から離れていっちゃうかもって

それが怖くて

自分勝手だけど、大好きだからこそ話せなくて

信用してない訳じゃないのに、説明する勇気が出なかった

言葉と違って、感情って素直だから、嘘はつけない

千華野 美琴

…えっと……

切り出そうにも、どこから話せばいいのか分からない

これだけ心配かけといて説明しないのも失礼だし

待たせすぎるのも相手からしたら腹立たしいだろう

川西 太一

先に言うけど、美琴から今どんな言葉が出てきたって迷惑じゃないし、逃げたりしないからね、俺

川西 太一

病気って、俺はなったことないけど、どれくらい辛いかは見たことあるから

川西 太一

絶対、受け止める

普段はなんだか掴みどころのない性格で、真面目なのか不真面目なのかもよく分からない

けど、なんだか一緒にいて居心地良くて

○○や白布もそうだけど、噂や悪口とかを聞いても気にしないで私は私として見てくれる

自分の見たものが全てで、周りがどう言うかなんて関係ない

そんなサバサバしてて、けどバカ騒ぎできるような関係が好きで

気づけば短冊に願うほど夢中になっていて

初めての恋人で、大好きな人で

こんなにも、手離したくない人

川西 太一

別に今話さなくてもいいよ

川西 太一

美琴が話したくなったらでもいい

川西 太一

けど、もし次同じようなことがあったら、俺は真っ先に手を差し伸べて助けたい

川西 太一

もう、美琴が苦しんでる時にビビって何も出来ないのは嫌なんだ

川西 太一

だから、美琴のことちゃんと知りたい。今無理にとは言わない、ゆっくりでいい

川西 太一

ただ、どれだけ崖っぷちでも、俺の美琴への気持ちは変わらないし、変わる理由にもならない

千華野 美琴

太一……

大好きな彼の大きな手が、私の頬を滑り落ちる涙にそっと触れる

普段は絶対こんなことしないのに

甘い言葉もあんまり言わないし、デートしても友達の頃の絡みと大して変わらない

別にその関係が嫌だったわけでも不満だった訳でもない

むしろ、距離が近すぎるのはまだ恋愛下手で慣れない私にとっては色々とハードルが高かった

けど今は、恥ずかしいとか恋愛下手とか関係なしに君に触れていたい

君と笑っている思い出がもっと欲しい

そのために、ちゃんと話さなきゃ

千華野 美琴

太一…、あのね、きいてほしい

川西 太一

うん

最後まで話し終えても、太一は覚悟してましたって顔してて、普段と全然変わらない表情

川西 太一

手術、受けるか迷ってるの?

千華野 美琴

うん…いずれ受けないと行けないとなのは分かってるんだけど…

千華野 美琴

お母さんのこともあるから中々覚悟も決まらないし、お父さんに負担や心配かけたくないし…

川西 太一

…………………

川西 太一

………確かにお父さんに心配かけたくないって言うのは気持ちとしてありだと思うけど

川西 太一

美琴の体のことだから、美琴の気持ちを1番優先していいんだよ

川西 太一

誰かに言われて決めた結果なんてむず痒くてしょうがないし

川西 太一

"お父さんが"じゃなくて"美琴はどうしたい"の?

"お父さんが"じゃなくて、"私は"?

私は、どうしたいの?

千華野 美琴

私…は…

千華野 美琴

手術…怖いけど……死んじゃうかもしれないけど…

千華野 美琴

皆ともっと思い出作りたいし…

千華野 美琴

結婚式でドレス着たり…、ちっちゃい子供に囲まれるお母さんになったり、孫にお小遣いねだられるおばあちゃんになったり

千華野 美琴

普通に生きてたらできること、沢山やりたい

千華野 美琴

普通の人と同じだけの時間が欲しい

ポツリポツリと君の声に惹かれるように本音がこぼれ落ちる

手術怖い

痛いのも苦しいのも嫌だ

でもそれ以上に

千華野 美琴

皆ともっと生きていたい

川西 太一

………はい、よく言えました

川西 太一

じゃあ、お父さんにそれちゃんと伝えなきゃだね

川西 太一

きっと美琴の気持ち知りたがってるはずだから

千華野 美琴

うっ……ガチ……?

川西 太一

え、そうじゃないと意味無くない??

千華野 美琴

いやまぁそうだけどっ…!

千華野 美琴

心の準備というか、言葉選びというか〜

川西 太一

今のそのまま伝えれば十分だよ

川西 太一

美琴のお父さんなんだから大丈夫

千華野 美琴

………じゃあ、太一も一緒に居て…

川西 太一

え、俺も?

川西 太一

別に構わないけど……家族の話だし、俺はいない方がいいんじゃ…、

千華野 美琴

太一だって…家族になるし…いつか…

少し…いや、だいぶ照れくさい言葉

だけど、嘘じゃないよ

嘘じゃないよね?

ここまで受け止めてくれた君だから言えることだよ

川西 太一

っ〜!

川西 太一

…もう、俺我慢してたのに

川西 太一

美琴の自業自得だからね

千華野 美琴

えっ?

太一はゆらっと立ち上がると、そのままギュッと抱きしめてきた

川西 太一

本当は会ってすぐ、こうしたかったんだから

君の温もりがじんわりと広がる

あぁ、本当に

大好きだよ、誰よりもずっと

○○side

美琴の入院騒動から3日

△△ ○○

お願いします~

瀬見 英太

お、○○

瀬見 英太

今日は病院行かなくていいのか?

△△ ○○

大丈夫です!荷物の諸々は届けたし、こっちも気を抜いてたらあっという間に春高予選来ちゃうので

△△ ○○

学校行事もこれから体育祭と文化祭と多ずめだし、テストもあるし

大平 獅音

すごいよな~、うちのマネも川西も

△△ ○○

本人の安否確認出来てますからね

学校をサボって病院に行った太一は監督にそりゃもう大激怒されたらしいけど

監督もちゃんと気持ち考えてくれたのか、そこまで時間も取らずに100本サーブで許してもらったらしい

私は正式に部活の休みを貰って、美琴の着替えやら勉強道具やら、1週間分の荷物を配達

そして今日から部活も復帰

朝練は出てたから久しぶりでは無いけど、なんだか少しだけ新鮮な感じ

山形 隼人

んで、千華野ちゃんは結局いつから学校復帰?

△△ ○○

来週の途中辺りですかね

△△ ○○

でも本人今はもうすっかり元気みたいで日中も永遠にLINE来ます

△△ ○○

授業だから返せないのに

川西 太一

俺返してるよ?机の下で

△△ ○○

バカやん、バレてまた監督に怒られても知らないからね

川西 太一

意外とみんなやってるもんかと

△△ ○○

そんなこと知らないけど、あんた席後ろの方なの?

川西 太一

真ん中くらいかな、まぁ案外バレないよ

川西 太一

タイミング狙ってるから

△△ ○○

クソバカップル

川西 太一

ひどいw

△△ ○○

の割に妙に嬉しそうな顔すんな気持ち悪い

△△ ○○

とっとと外周行ってこい

△△ ○○

牛島さんと五色はもうとっくに行ったぞ

今日はそれぞれの委員会の招集がかけられていて、部活のスタートは個人でバラバラだった

既に外周に行った人もいて、体育館に残っているのは皆より遅れてきた瀬見さん、大平さん、山形さん、そして太一

川西 太一

へいへい

瀬見 英太

俺らも準備運動終わったし行くか

△△ ○○

早くしないと今日はゲーム練習が出来ませんからね

山形 隼人

それは困った!

大平 獅音

じゃあ今日はいつもより飛ばして頑張らないとね

△△ ○○

無理しない程度に頑張ってきてください~

△△ ○○

多分そろそろ牛島さんとかは帰ってくるので

そう、残りのメンバーが外に出ようとした瞬間

ザァァァァ

△△ ○○

えっ

川西 太一

うわっ

急に大雨が降り出して、景色は一瞬にして真っ白になった

大平 獅音

タイミング悪いね

瀬見 英太

先に行ったあいつら大丈夫か…?

△△ ○○

時間的に五色と牛島さん以外は戻ってきた方が早いかな…

△△ ○○

出発してまだそんなに経ってないし

白布 賢二郎

チッ

△△ ○○

あ、帰ってきた

牛島 若利

今戻った

五色 工

雨がすごい降ってきましたー!

予想通りびしょ濡れになって帰ってきた外周組は玄関のところでTシャツの水を絞ったり、頭に乗った雫を払っている

△△ ○○

タオル!早く拭いて

△△ ○○

皆さん着替えあります?

私はバタバタとタオルを急いで取って全員に渡す

天童 覚

部室戻ればあるネ

五色 工

俺はこっちにあります!!

白布 賢二郎

俺もさっき荷物に紛れて持ってきてた

△△ ○○

五色と白布はある程度拭けたら早く着替えて

△△ ○○

先輩方は先生に言って職員用の傘借りて部室に取りに行ってください

天童 覚

そうだね~、若利くん行こ!

牛島 若利

分かった

大平 獅音

その状態で体育館入ってもビショビショになるから俺傘借りてくるわ

天童 覚

ありがとう獅音くん!

山形 隼人

にしても急な雨だな~

天童 覚

ねー、参っちゃうよね

牛島 若利

夕立だろうか

瀬見 英太

今日天気予報見てなかったからなぁ

△△ ○○

あ、五色、もっとちゃんと頭拭いて

△△ ○○

着替えても新しいの濡れちゃうから

五色 工

ハクションッ

瀬見 英太

おー、おー、大丈夫か?

五色 工

ズビッ、雨なんかに負けません!俺はエースになる男ですよ!!

白布 賢二郎

エースと雨は関係ないだろ

△△ ○○

予選もあるし、風邪ひいてられないもんね

△△ ○○

五色タオル貸して。あと頭拭いてあげるからかがんで

五色 工

えっ、はいっ!

私は五色からタオルを借りると、まだぬれているところを拭き始める

白布 賢二郎

子供か

川西 太一

○○って五色に甘いよね

△△ ○○

五色は唯一の1年レギュラーだからね

△△ ○○

あと犬みたい

五色 工

?!

川西 太一

ペットw

五色 工

俺は犬でもペットでもありません!!

五色 工

エースです!!

白布 賢二郎

そういうところだよ

川西 太一

そういうところだな

△△ ○○

そーいうところだね

五色 工

なっ?!

大平 獅音

はい、2本借りてきたよ

天童 覚

ありがとう!じゃあ若利くんいこー!

牛島 若利

そうだな

2人が傘をさして白い雨の中に消えていったのを少し心配しながら見送る

そういえば雨が降ってきてから少し肌寒くなってきた気がする

△△ ○○

私洗濯室の方からちょっとタオル追加でとってくるわ

△△ ○○

皆さん体冷やさないようにしてくださいね

白布side

○○が体育館を出ていって割とすぐの事だった

ピカッと外が一瞬光ったような気がして、窓を見やった時

ゴロゴロ!っと大きな音を立てて雷が落ちた

瀬見 英太

うわ、結構近かったn

五色 工

うぎゃぁぁぁぁ!

五色 工

瀬見さぁぁぁぁぁぁん!!!

瀬見 英太

?!どどど、どうした五色?!

着替えをしようとしていた五色が、突然に悲鳴をあげながら瀬見さんにしがみつく

びっくりして動揺したらしい瀬見さんも五色に目を丸くしている

川西 太一

ひー、近かったな

白布 賢二郎

雷の予報なんてあったか?

川西 太一

特に気にしてなかったからわからん

五色 工

かみなりっ!雷ぃ!!

瀬見 英太

五色落ち着け!大丈夫だから!

山形 隼人

今のでかかったもんな~…

大平 獅音

ヘッドフォンとか誰か持ってない?

瀬見 英太

あー、俺部屋になら…

泣きじゃくる五色をなだめる先輩達をよそに、俺は予報を見るべくスマホを取りにその場から離れる

白布 賢二郎

クソ電波悪い…

天気のせいでネット回線が悪いらしく、クルクルと接続に時間がかかる

白布 賢二郎

(そういえば、千二朗も雷苦手だけど大丈夫か?)

白布 賢二郎

(天二郎がいるから平気か…母さんはあんまりあてにならねぇけど)

電波が悪いんじゃ連絡もろくに取れたもんじゃない

白布 賢二郎

チッ

どうにか接続環境がマシになる所を探して、体育館の中をウロウロする

外からは最初のデカかった雷を筆頭に、次から次へと雷の光や音が聞こえてくる

天童 覚

やー!雷やばいネ!

牛島 若利

今戻った

大平 獅音

あ、2人とも大丈夫?

天童 覚

大丈夫!…って工はどったの??

Tシャツが透けるほど更に濡れて天童さんと牛島さんは帰ってきた

大平 獅音

ちょっと雷怖いみたいで

天童 覚

アララそーなの?

天童 覚

工大丈夫だよーん!おへそ取られたりしないからー!

牛島 若利

雷がなるとへそが取られるのか?

天童 覚

迷信迷信~!取られないからダイジョーブ!

瀬見 英太

そういう問題ではなくてだな…

瀬見 英太

お前らヘッドフォンとか今持ってない?

天童 覚

持ってなーい!

牛島 若利

俺も持ってないな

瀬見 英太

だよな…

瀬見さんは仕方なくタオルを五色の上に被せてヨシヨシとなだめている

白布 賢二郎

(兄弟かよ…)

川西 太一

そっちも電波悪い?

白布 賢二郎

うん、全然繋がらねぇ

スマホを操作してるであろう太一も電波が悪く繋がらないようだ

白布 賢二郎

ったく勘弁しろよな

しばらくうろついていると、やっとアンテナがたつ位置を見つけた

その瞬間、誰かからの不在着信がズラリと並んでいて眉を寄せる

白布 賢二郎

千華野…?

川西 太一

美琴から?なんでお前が?

白布 賢二郎

いや俺が知りたいわ

そう話している間にも、千華野からまた着信がある

白布 賢二郎

…もしもし?

千華野 美琴

白布?!やっと出た!

白布 賢二郎

普通に考えて部活中だぞ

白布 賢二郎

出る方がおかしいから。で?要件は?

千華野 美琴

○○!一緒にいる?!

白布 賢二郎

いねぇけど

千華野 美琴

なんで?!マネージャーが一緒にいないとかある?!

白布 賢二郎

いや今タオル取りに行ってて

千華野 美琴

今すぐ追いかけて!

白布 賢二郎

は…?なんで…?

千華野 美琴

あの子、雷が、

ドカンっ

一際大きく、雷が落ちた

立て続けに電気が2、3回チカチカと点滅して、最後には消えた

電話はツー、ツー、と切れていて、千華野の声は聞こえない

川西 太一

停電…?

牛島 若利

暗いな、懐中電灯がなかっただろうか

五色 工

瀬見さぁぁぁぁ!

瀬見 英太

五色大丈夫だから!!

山形 隼人

いって!足ぶつけた

大平 獅音

足元気をつけて

この辺一帯が停電したようで、窓の外も暗い

川西 太一

白布、美琴なんて?

白布 賢二郎

………分からない…

白布 賢二郎

ちょっと行ってくる

川西 太一

え、ちょ、どこに?!

川西 太一

暗いからやめとk……

川西 太一

(あー、ダメだ聞いてない)

暗い廊下をひたすらに走った

生徒をなだめるための校内放送が入って、その場から動かないよう言われたけど

そんなの構わずに洗濯室へ急いだ

──あの子、雷が、──

最後まで聞かなくても分かった

あいつは、普段ビビりじゃないし

実際、メンタルも力的にも周りのヤツに比べたら強い

でも、暗いのが苦手だったり

誰かの振り上げる手が怖かったり

ほんの、ふとした時に

花よりも脆く、下手したら壊れてしまいそうなほど

弱いんだ

白布 賢二郎

○○!いるか?

洗濯室について、辺りをスマホのライトで照らす

△△ ○○

うわっ、びっくりした…

声のする方にライトを向けると、○○らしき足が見えた

△△ ○○

白布…?

△△ ○○

あんた何してるの?待機の放送入ってたじゃん

思ったよりもいつも通りの声色で

眩しくないようにと上半身あたりに当てていたライトの先には何枚ものタオルが抱えられている

視界が暗がりに慣れてきて、うっすらと見える彼女と目が合う

なんだ

もっと怖がっているかと思った

白布 賢二郎

お前、スマホは?

△△ ○○

持ってないよ、体育館に置いてきた

△△ ○○

それよりあんた、髪の毛まだ濡れて…

ゴロゴロっ

△△ ○○

うわっ…

白布 賢二郎

雷が光って見えた彼女のハッキリとした瞳

目の端は濡れていて、頬には水の線がついている

よく見れば抱えられたタオルは小刻みに震えている

白布 賢二郎

(あぁ…なんだ…)

白布 賢二郎

お前なぁ…

△△ ○○

?なに…?

1歩、2歩と近づいて彼女の片手を取る

白布 賢二郎

(冷たっ…)

△△ ○○

ちょ、なに?

白布 賢二郎

怖いなら怖いって言えよ

△△ ○○

…は?…何の話…

2人きりになっても、まだ頼ってはくれないのか?

自分でなんとかしようとする癖はそうそう治らないだろうよ

でももう、頼っていい場所がここにあるのに

白布 賢二郎

お前みたいなやつは五色より手がかかるよな…

△△ ○○

は?どゆこと?

白布 賢二郎

強がるなって

白布 賢二郎

雷も暗いのも、怖いんだろ?

△△ ○○

……………

白布 賢二郎

大丈夫だ、他に誰もいない

△△ ○○

……うっさい

小さくて消え入りそうなその声は、涙ぐんでいて

小さくて冷たい手も怖いと主張するように震えている

ゴロゴロ

また一段と大きな雷が鳴り響く

その音に反応して、一際大きく震える

白布 賢二郎

大丈夫

△△ ○○

……無理…

限界が来たのかしゃがみこんで顔を埋めてしまった

白布 賢二郎

(いつまでも洗濯室にこもってるのもな…)

白布 賢二郎

○○、体持ち上げるぞ

△△ ○○

え、ちょ…

うずくまってしまった○○の体をゆっくり持ち上げてそのまま洗濯室を出る

少しでも明るくなるように、消化器のランプの近くに腰を下ろす

震える彼女の頭の上から自分のジャージを被せてギュッと身を寄せる

白布 賢二郎

(少しでも音が遮断されればいいけど…)

△△ ○○

…こんなとこ誰かに見られたらどうするの…

△△ ○○

学校なんだから、大騒ぎされるよ…

△△ ○○

これから春高予選もあるし、文化祭も体育祭も…

白布 賢二郎

こんな時まで人の心配かよ

白布 賢二郎

誰もこんなところ通らねぇから安心しろ

今でも怖くて震えてるくせに、人のことばっかり

少しは自分の心配しろっつの

でも

そんな️○○も好きだ

1度恋だと認めてしまえば、自分の心の違和感はスっと消える

こんな恋人みたいな事してても、好きの気持ちは俺の一方通行なのは正直辛い

けど、君の1番安心できる場所

誰よりも○○を知ってるって胸張って言える自分でありたい

この恋を、この気持ちを

今はまだ伝えるべきじゃないことくらい分かっている

強がりな君の弱音を吐ける場所

怖ければ怖いと泣ける場所

今は、その場所になれれば十分だ

でもいつか

この恋が実らなくても、好きだと伝える日が来たらいいな

うつらうつらと閉じかけている君の瞳を見つめる

もう絶対、1人じゃ泣かせない

○○side

何かが、いつもと違って

何かに凄く違和感を感じた

雷も暗いのも昔から苦手だった

高校2年にもなって雷が怖いなんて言えない

それでも涙が出るほど怖い

君は、いつも私のピンチに駆けつけてくれる

それが当たり前なわけないし、普通に考えてあの男バレの白布賢二郎に抱きしめられていることがおかしいのは分かってる

でも、白布は紛れもない私にとって特別な人で、恩人なのは変わらない

こうして一緒に居て励ましてくれることにも彼の優しさを感じて安心する

でも、何かが違う

その何かがよく分からない

走った訳でもないのにドキドキと必要以上に心拍数が上がって

体調が悪い訳でもないのに顔の体温がいつもより熱く火照っているように感じる

これは、何?

きゅっと締め付けられるような、どこか切ないような気持ちになるのはどうして?

白布の声が、伸ばされた手が

こんなにも安心できてふとした時に恋しくなってしまうのはなんで?

わからない

わからないけど…

少しだけ、心地よくもあるこの気持ち

今分からなくても、多分そのうち答えが見つかる気持ちな気がして

温かい白布の腕の中で、無意識に目を閉じていた

太一side

白布が体育館を出てすぐ、校内放送で待機命令が出て

その5分後くらいに照明はついた

相変わらず外では雨と雷が続いていたが、ひとまず行動はできる

瀬見 英太

やっとついたな…

大平 獅音

五分ぐらいかな

山形 隼人

体感的にはもっと長かったな〜

牛島 若利

五色は大丈夫か?

五色 工

へ、平気ですっ…

天童 覚

よく頑張ったね〜、工

川西 太一

あの…、俺2人の様子みてきていいですか?

大平 獅音

2人?

川西 太一

停電した時、多分白布が○○のところ行ったと思うので…

瀬見 英太

そうだよな、○○には悪いことしたよな

天童 覚

ま!○○ちゃんなら大丈夫な気がするけどねー!

川西 太一

(どうだかな〜、○○はあれでも割とビビりっぽいし…)

大平 獅音

賢二郎も暗闇走っていったんだろ?途中で怪我とかしてないといいけど

川西 太一

はい…俺様子見てきますね

恐らく洗濯室付近にいるのだろうなと思いながら、辺りを確認しながら歩いてた

川西 太一

(まぁ、白布に限って怪我とかはないと思うけど…)

消化器付近に人影が見えて声をかけようとしたが、思わずでかかった言葉を引っ込めた

川西 太一

………………

白布 賢二郎

………………

…まぁ、多分遭遇してはいけないような状況

普段クールな相方が、マネージャーを抱きしめて座っている

マネの方は寝ているみたいだし

川西 太一

…俺はまずどこをツッコめばいい?

そのままUターンする訳にもいかず、理解も追いつかないまま静かに問う

白布 賢二郎

うるせぇ。黙って手伝え

川西 太一

えっ…

川西 太一

(いやだってあの二人が…ねぇ?!)

白布 賢二郎

お前タオル持ってけ

川西 太一

いやいいけども…

川西 太一

…………………

川西 太一

………………2人って付き合ってるの…?

迷うだけ迷って、沈黙の後に恐る恐る聞いてみる

白布 賢二郎

付き合ってない

川西 太一

じゃあこの状況はつまり夢?

白布 賢二郎

うるせぇな、察せよ

川西 太一

ハイスイマセン

川西 太一

(察した結果が付き合ってるパターンだったんだけど…)

川西 太一

(両片思いパターンか…?)

川西 太一

(もしくは…)

白布 賢二郎

広めんなよ

川西 太一

あっ、うん

川西 太一

めんどいだろうからそれはしないけど

白布 賢二郎

………………

白布が○○を見る目線は

どこか儚げで、切なくて

あぁ…その視線1つで、分かってしまうじゃないか

察せるパターンで1番辛い答え

"白布の片思い"

すごく当たり前で、違和感なんてあったらいけないけど

白布も恋をして、その辛さも苦しみも今まさに経験しているんだ

俺も、辛かった時期があった

けど、一概に白布の気持ちがわかるとは言えない

だから

川西 太一

頑張れ

白布 賢二郎

………うん

少し弱々しくて間の空いた返事

いつもクールで何でも上手くこなす白布がこの時は普通の恋する同級生に見えた

もし、願ってしまってもいいのなら

このどうしようもないほど切なげな白布の恋が

無事実りますように

ぬっし

タップお疲れ様です!

ぬっし

割と進展してきたんじゃないですかね?
このまま無事くっついてくれるとイイデスネ!

ぬっし

実は今回のお話は1年近く前から考えてたシーンでして、この前部屋の掃除をしていたらこんなイラストが出てきました!⬇

ぬっし

1年近く前のイラストなので画力も今より無いし、下書き状態ですがいつか書きたいシーンでしたので無事に出せて良かったです😊

ぬっし

あと主今後の活動について少しお知らせしたいので近いうちに出すであろう読み切りを読んでいただけるとありがたいです🙏

ぬっし

それではまた次回!

我ら白鳥沢学園の日常は

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コメント

42

ユーザー

太一~!😭

ユーザー

めっちゃタイプの物語です‼︎ あとイラストすごく上手ですね!

ユーザー
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