美琴side
時は○○達が来る前に遡る
川西 太一
ガラッと勢いよく扉を開けてきた彼は、普段見せないような焦った形相だった
千華野 美琴
私も突然の事で驚きはしたものの、反射的に飛び出したことは結構どうでもいいことで
川西 太一
千華野 美琴
千華野 美琴
川西 太一
川西 太一
太一はヘナヘナ〜っと近くの椅子に座り込む
走ってきたのか汗だくで、Tシャツをパタパタと仰いでいる
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
そう言うと太一は小さく微笑む
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
少しの間沈黙が落ちる
私が今しなきゃ行けないことは分かってる
今回のことについてちゃんと説明しなくちゃいけない
川西 太一
千華野 美琴
ここまで来て、隠すことは出来ない
きっとお父さんにもあってるから大体のことは知ってるだろうし
流れ的にもちゃんと説明しないといけないのはわかってる
でも、それでも
まだ説明するのが怖い
死ぬかもしれない相手を好きでいるって
しんどいし、逃げたくなると思う
それがずっと嫌で言い出せなかった
○○にも太一にも
いつか、死ぬかもしれないってことを言って、2人が嫌な思いをして私から離れていっちゃうかもって
それが怖くて
自分勝手だけど、大好きだからこそ話せなくて
信用してない訳じゃないのに、説明する勇気が出なかった
言葉と違って、感情って素直だから、嘘はつけない
千華野 美琴
切り出そうにも、どこから話せばいいのか分からない
これだけ心配かけといて説明しないのも失礼だし
待たせすぎるのも相手からしたら腹立たしいだろう
川西 太一
川西 太一
川西 太一
普段はなんだか掴みどころのない性格で、真面目なのか不真面目なのかもよく分からない
けど、なんだか一緒にいて居心地良くて
○○や白布もそうだけど、噂や悪口とかを聞いても気にしないで私は私として見てくれる
自分の見たものが全てで、周りがどう言うかなんて関係ない
そんなサバサバしてて、けどバカ騒ぎできるような関係が好きで
気づけば短冊に願うほど夢中になっていて
初めての恋人で、大好きな人で
こんなにも、手離したくない人
川西 太一
川西 太一
川西 太一
川西 太一
川西 太一
川西 太一
千華野 美琴
大好きな彼の大きな手が、私の頬を滑り落ちる涙にそっと触れる
普段は絶対こんなことしないのに
甘い言葉もあんまり言わないし、デートしても友達の頃の絡みと大して変わらない
別にその関係が嫌だったわけでも不満だった訳でもない
むしろ、距離が近すぎるのはまだ恋愛下手で慣れない私にとっては色々とハードルが高かった
けど今は、恥ずかしいとか恋愛下手とか関係なしに君に触れていたい
君と笑っている思い出がもっと欲しい
そのために、ちゃんと話さなきゃ
千華野 美琴
川西 太一
最後まで話し終えても、太一は覚悟してましたって顔してて、普段と全然変わらない表情
川西 太一
千華野 美琴
千華野 美琴
川西 太一
川西 太一
川西 太一
川西 太一
川西 太一
"お父さんが"じゃなくて、"私は"?
私は、どうしたいの?
千華野 美琴
千華野 美琴
千華野 美琴
千華野 美琴
千華野 美琴
千華野 美琴
ポツリポツリと君の声に惹かれるように本音がこぼれ落ちる
手術怖い
痛いのも苦しいのも嫌だ
でもそれ以上に
千華野 美琴
川西 太一
川西 太一
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
千華野 美琴
千華野 美琴
川西 太一
川西 太一
千華野 美琴
川西 太一
川西 太一
千華野 美琴
少し…いや、だいぶ照れくさい言葉
だけど、嘘じゃないよ
嘘じゃないよね?
ここまで受け止めてくれた君だから言えることだよ
川西 太一
川西 太一
川西 太一
千華野 美琴
太一はゆらっと立ち上がると、そのままギュッと抱きしめてきた
川西 太一
君の温もりがじんわりと広がる
あぁ、本当に
大好きだよ、誰よりもずっと
○○side
美琴の入院騒動から3日
△△ ○○
瀬見 英太
瀬見 英太
△△ ○○
△△ ○○
大平 獅音
△△ ○○
学校をサボって病院に行った太一は監督にそりゃもう大激怒されたらしいけど
監督もちゃんと気持ち考えてくれたのか、そこまで時間も取らずに100本サーブで許してもらったらしい
私は正式に部活の休みを貰って、美琴の着替えやら勉強道具やら、1週間分の荷物を配達
そして今日から部活も復帰
朝練は出てたから久しぶりでは無いけど、なんだか少しだけ新鮮な感じ
山形 隼人
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
川西 太一
△△ ○○
川西 太一
△△ ○○
川西 太一
川西 太一
△△ ○○
川西 太一
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
今日はそれぞれの委員会の招集がかけられていて、部活のスタートは個人でバラバラだった
既に外周に行った人もいて、体育館に残っているのは皆より遅れてきた瀬見さん、大平さん、山形さん、そして太一
川西 太一
瀬見 英太
△△ ○○
山形 隼人
大平 獅音
△△ ○○
△△ ○○
そう、残りのメンバーが外に出ようとした瞬間
ザァァァァ
△△ ○○
川西 太一
急に大雨が降り出して、景色は一瞬にして真っ白になった
大平 獅音
瀬見 英太
△△ ○○
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
牛島 若利
五色 工
予想通りびしょ濡れになって帰ってきた外周組は玄関のところでTシャツの水を絞ったり、頭に乗った雫を払っている
△△ ○○
△△ ○○
私はバタバタとタオルを急いで取って全員に渡す
天童 覚
五色 工
白布 賢二郎
△△ ○○
△△ ○○
天童 覚
牛島 若利
大平 獅音
天童 覚
山形 隼人
天童 覚
牛島 若利
瀬見 英太
△△ ○○
△△ ○○
五色 工
瀬見 英太
五色 工
白布 賢二郎
△△ ○○
△△ ○○
五色 工
私は五色からタオルを借りると、まだぬれているところを拭き始める
白布 賢二郎
川西 太一
△△ ○○
△△ ○○
五色 工
川西 太一
五色 工
五色 工
白布 賢二郎
川西 太一
△△ ○○
五色 工
大平 獅音
天童 覚
牛島 若利
2人が傘をさして白い雨の中に消えていったのを少し心配しながら見送る
そういえば雨が降ってきてから少し肌寒くなってきた気がする
△△ ○○
△△ ○○
白布side
○○が体育館を出ていって割とすぐの事だった
ピカッと外が一瞬光ったような気がして、窓を見やった時
ゴロゴロ!っと大きな音を立てて雷が落ちた
瀬見 英太
五色 工
五色 工
瀬見 英太
着替えをしようとしていた五色が、突然に悲鳴をあげながら瀬見さんにしがみつく
びっくりして動揺したらしい瀬見さんも五色に目を丸くしている
川西 太一
白布 賢二郎
川西 太一
五色 工
瀬見 英太
山形 隼人
大平 獅音
瀬見 英太
泣きじゃくる五色をなだめる先輩達をよそに、俺は予報を見るべくスマホを取りにその場から離れる
白布 賢二郎
天気のせいでネット回線が悪いらしく、クルクルと接続に時間がかかる
白布 賢二郎
白布 賢二郎
電波が悪いんじゃ連絡もろくに取れたもんじゃない
白布 賢二郎
どうにか接続環境がマシになる所を探して、体育館の中をウロウロする
外からは最初のデカかった雷を筆頭に、次から次へと雷の光や音が聞こえてくる
天童 覚
牛島 若利
大平 獅音
天童 覚
Tシャツが透けるほど更に濡れて天童さんと牛島さんは帰ってきた
大平 獅音
天童 覚
天童 覚
牛島 若利
天童 覚
瀬見 英太
瀬見 英太
天童 覚
牛島 若利
瀬見 英太
瀬見さんは仕方なくタオルを五色の上に被せてヨシヨシとなだめている
白布 賢二郎
川西 太一
白布 賢二郎
スマホを操作してるであろう太一も電波が悪く繋がらないようだ
白布 賢二郎
しばらくうろついていると、やっとアンテナがたつ位置を見つけた
その瞬間、誰かからの不在着信がズラリと並んでいて眉を寄せる
白布 賢二郎
川西 太一
白布 賢二郎
そう話している間にも、千華野からまた着信がある
白布 賢二郎
千華野 美琴
白布 賢二郎
白布 賢二郎
千華野 美琴
白布 賢二郎
千華野 美琴
白布 賢二郎
千華野 美琴
白布 賢二郎
千華野 美琴
ドカンっ
一際大きく、雷が落ちた
立て続けに電気が2、3回チカチカと点滅して、最後には消えた
電話はツー、ツー、と切れていて、千華野の声は聞こえない
川西 太一
牛島 若利
五色 工
瀬見 英太
山形 隼人
大平 獅音
この辺一帯が停電したようで、窓の外も暗い
川西 太一
白布 賢二郎
白布 賢二郎
川西 太一
川西 太一
川西 太一
暗い廊下をひたすらに走った
生徒をなだめるための校内放送が入って、その場から動かないよう言われたけど
そんなの構わずに洗濯室へ急いだ
──あの子、雷が、──
最後まで聞かなくても分かった
あいつは、普段ビビりじゃないし
実際、メンタルも力的にも周りのヤツに比べたら強い
でも、暗いのが苦手だったり
誰かの振り上げる手が怖かったり
ほんの、ふとした時に
花よりも脆く、下手したら壊れてしまいそうなほど
弱いんだ
白布 賢二郎
洗濯室について、辺りをスマホのライトで照らす
△△ ○○
声のする方にライトを向けると、○○らしき足が見えた
△△ ○○
△△ ○○
思ったよりもいつも通りの声色で
眩しくないようにと上半身あたりに当てていたライトの先には何枚ものタオルが抱えられている
視界が暗がりに慣れてきて、うっすらと見える彼女と目が合う
なんだ
もっと怖がっているかと思った
白布 賢二郎
△△ ○○
△△ ○○
ゴロゴロっ
△△ ○○
白布 賢二郎
雷が光って見えた彼女のハッキリとした瞳
目の端は濡れていて、頬には水の線がついている
よく見れば抱えられたタオルは小刻みに震えている
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
1歩、2歩と近づいて彼女の片手を取る
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
2人きりになっても、まだ頼ってはくれないのか?
自分でなんとかしようとする癖はそうそう治らないだろうよ
でももう、頼っていい場所がここにあるのに
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
白布 賢二郎
△△ ○○
小さくて消え入りそうなその声は、涙ぐんでいて
小さくて冷たい手も怖いと主張するように震えている
ゴロゴロ
また一段と大きな雷が鳴り響く
その音に反応して、一際大きく震える
白布 賢二郎
△△ ○○
限界が来たのかしゃがみこんで顔を埋めてしまった
白布 賢二郎
白布 賢二郎
△△ ○○
うずくまってしまった○○の体をゆっくり持ち上げてそのまま洗濯室を出る
少しでも明るくなるように、消化器のランプの近くに腰を下ろす
震える彼女の頭の上から自分のジャージを被せてギュッと身を寄せる
白布 賢二郎
△△ ○○
△△ ○○
△△ ○○
白布 賢二郎
白布 賢二郎
今でも怖くて震えてるくせに、人のことばっかり
少しは自分の心配しろっつの
でも
そんな️○○も好きだ
1度恋だと認めてしまえば、自分の心の違和感はスっと消える
こんな恋人みたいな事してても、好きの気持ちは俺の一方通行なのは正直辛い
けど、君の1番安心できる場所
誰よりも○○を知ってるって胸張って言える自分でありたい
この恋を、この気持ちを
今はまだ伝えるべきじゃないことくらい分かっている
強がりな君の弱音を吐ける場所
怖ければ怖いと泣ける場所
今は、その場所になれれば十分だ
でもいつか
この恋が実らなくても、好きだと伝える日が来たらいいな
うつらうつらと閉じかけている君の瞳を見つめる
もう絶対、1人じゃ泣かせない
○○side
何かが、いつもと違って
何かに凄く違和感を感じた
雷も暗いのも昔から苦手だった
高校2年にもなって雷が怖いなんて言えない
それでも涙が出るほど怖い
君は、いつも私のピンチに駆けつけてくれる
それが当たり前なわけないし、普通に考えてあの男バレの白布賢二郎に抱きしめられていることがおかしいのは分かってる
でも、白布は紛れもない私にとって特別な人で、恩人なのは変わらない
こうして一緒に居て励ましてくれることにも彼の優しさを感じて安心する
でも、何かが違う
その何かがよく分からない
走った訳でもないのにドキドキと必要以上に心拍数が上がって
体調が悪い訳でもないのに顔の体温がいつもより熱く火照っているように感じる
これは、何?
きゅっと締め付けられるような、どこか切ないような気持ちになるのはどうして?
白布の声が、伸ばされた手が
こんなにも安心できてふとした時に恋しくなってしまうのはなんで?
わからない
わからないけど…
少しだけ、心地よくもあるこの気持ち
今分からなくても、多分そのうち答えが見つかる気持ちな気がして
温かい白布の腕の中で、無意識に目を閉じていた
太一side
白布が体育館を出てすぐ、校内放送で待機命令が出て
その5分後くらいに照明はついた
相変わらず外では雨と雷が続いていたが、ひとまず行動はできる
瀬見 英太
大平 獅音
山形 隼人
牛島 若利
五色 工
天童 覚
川西 太一
大平 獅音
川西 太一
瀬見 英太
天童 覚
川西 太一
大平 獅音
川西 太一
恐らく洗濯室付近にいるのだろうなと思いながら、辺りを確認しながら歩いてた
川西 太一
消化器付近に人影が見えて声をかけようとしたが、思わずでかかった言葉を引っ込めた
川西 太一
白布 賢二郎
…まぁ、多分遭遇してはいけないような状況
普段クールな相方が、マネージャーを抱きしめて座っている
マネの方は寝ているみたいだし
川西 太一
そのままUターンする訳にもいかず、理解も追いつかないまま静かに問う
白布 賢二郎
川西 太一
川西 太一
白布 賢二郎
川西 太一
川西 太一
川西 太一
迷うだけ迷って、沈黙の後に恐る恐る聞いてみる
白布 賢二郎
川西 太一
白布 賢二郎
川西 太一
川西 太一
川西 太一
川西 太一
白布 賢二郎
川西 太一
川西 太一
白布 賢二郎
白布が○○を見る目線は
どこか儚げで、切なくて
あぁ…その視線1つで、分かってしまうじゃないか
察せるパターンで1番辛い答え
"白布の片思い"
すごく当たり前で、違和感なんてあったらいけないけど
白布も恋をして、その辛さも苦しみも今まさに経験しているんだ
俺も、辛かった時期があった
けど、一概に白布の気持ちがわかるとは言えない
だから
川西 太一
白布 賢二郎
少し弱々しくて間の空いた返事
いつもクールで何でも上手くこなす白布がこの時は普通の恋する同級生に見えた
もし、願ってしまってもいいのなら
このどうしようもないほど切なげな白布の恋が
無事実りますように
ぬっし
ぬっし
このまま無事くっついてくれるとイイデスネ!
ぬっし
ぬっし
ぬっし
ぬっし