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続くと思います。 女の子が出てきますが、最終的にはBのLになるので耐えてください(他力本願)
嫌に蝉のうるさい朝に目覚めた。
カーテン越しの太陽を睨んで、起き上がることも出来ずグズグズと時間に置いていかれる毎日だ。
そういう日常が、また来てしまっただけのこと。
斗真
目だけで時計を一瞥して、まだ五十分も余裕があることに安堵した。 なんて体たらく。 彼女に合わす顔もない。
寝てるいる時よりも深く、枕に顔を埋めようとした、その時だった。
ピンポーン
耳に痛い、軽くて明るい音。 呼び鈴が鳴った。
玄関の先は容易に想像できて、ますます憂鬱になる一方だ。
生憎俺は一人暮らしで、あの呼出音に答えられるのは俺しかいない。 最悪、本当に最悪だ。
そのまま寝たフリでもしようかと 思ったが、朝からわざわざ来てくれたお相手を猛暑の中置き去りにするのは、さすがに1ミリほど申し訳なかったので、渋々布団から這い出でた。
重い腕を無理やりあげて、ドアノブに手をかけた。 不用心なことに、鍵をかけ忘れていたことに気づく。
その、せいだ。
そのせいで、俺がドアに触れるよりも早く、彼女が勢いを付けて開けてきやがった。
れん
斗真
その勢いを保ったまま、俺の懐に飛び込んでくる。勢いを保ったまま。
その華奢な少女の力に負けて、背中から倒れた。
れん
斗真
言葉選びが大変良くないが、 実際重いのである。 なんたって馬乗り。子供体型であっても、内蔵が圧迫される。
そんな現状にも気づかず、頬を膨らませて、いかにも「不機嫌です」と言ったような顔をしている。
そんな哀れな少女の名前は 『れん』 幼なじみで同い年のはずだが、 小学生くらいの頃から外見に変化のない、不思議なやつだ。
れん
斗真
立ち上がるついでに叱る。 もう高校生なのに、コイツはどうしてこうなのか……。
れん
しょぼくれた表情がどこか捨て犬みたいで、少し罪悪感が湧いてくる。
斗真
最後の一行で、れんは一気に明るい顔になった。「うん!」なんて子供みたいな返答をされて、可愛いな、なんて気持ちの悪い文章が頭に浮かぶ。 そんな感情を隠すために、足早に部屋へ誘導する。
れん
斗真
れん
他愛もない会話を淡々と続けて、 二人分の朝食を机上に運んだ。
カチャカチャと心地のいい音が聞こえるばかりで、ああ、勿体ないものを貰っているなと、この時間を噛み砕く。
斗真
れん
いただきます
手を叩く音と二人の声が重なって、 また、食器の音が広がった。
斗真
れん
主語がなくても伝わるというのは、便利なものである。
受け取ったケチャップを 目玉焼きに絞って、血の海の出来上がりだ。
俺の皿を見た彼女が、 「うわ」 と声を漏らしたのを、俺は聞き逃さなかった。失礼なやつだ。
やがて食べ終わって、家を出た。
誰もいない部屋に向かって 「行ってきます」をして、 孤独から逃げるように家を出た。
れん
斗真
斗真
れん
れん
あからさまに言い淀む。
居心地が悪い。 歯ぎしりをした。
斗真
彼女の顔を除くと、 なにかあるような表情。
悩ましい、という顔だ。 どうしようもなく不安、と言った顔。
れん
なんて無責任な先生だ! そんなことを口走りそうになって、 飲み込む。喉で空気がつっかえた。
斗真
れん
斗真
れん
俺が驚いたのに驚いたようで、 まくし立てるみたいに 早口で言葉を綴る。
いつもはうるさいくらい明るい奴なのに、ときたまマイナス思考な部分が見え隠れする。 一度そういう部分を見ると、普段のアレは作ったポジティブなのか……とか無駄なことを考えてしまう。
斗真
斗真
いつもよりも大きい声量で言った。
れん
れん
安堵の目を向けられて、胸に痛みが走る。 この無垢に少しでも劣情を抱いた罰だろうか。心臓が張り裂けてしまいそうだ。
それが、とてつもなく気持ちいいことには気づかないでおこう。 これは罰なんだ。
体感ゼロ秒の幸福は過ぎ去って、 地獄みたいな教室についてしまった。
俺とれんは別々のクラスだから、れんしか友達がいない俺にとって、学校自体が居心地悪かった。
俺以外の楽しそうな声が怖くて、 MP3プレーヤーにイヤホンを繋いで 机に伏せた。
俗に言う、『ぼっち』
苦痛は褪せず隣にいる。 相対性理論が俺の青春だ。
あらた
あらた
ドンッ
隣でふざけあっていたであろう クラスメイトが、 よろけた拍子に俺の机にぶつかったようだった。 驚いて椅子から落ちそうになる。
あらた
斗真
突然話しかけられたことに 動揺しまくったせいで、 クソみたいな返事しかできなかった。
が、このクラスメイトは 気にしていなさそうだ。 てか俺の名前覚えてたんだ…… 俺は誰の名前も覚えてないのに。
あらた
あらた
いつもクラスの中心に居るやつだったから、DQNかと思っていたが 早計だったようだ。 明るく気さくで、人に好かれる人なんだってことがすぐにわかった。
あらた
斗真
あらた
斗真
あらた
無邪気に笑う彼に、 正直拍子抜けした。
それと同時に少しの罪悪感も湧いて、息苦しさが増していく。
あらた
あらた
斗真
子供みたいに笑って、表情も、 コロコロと変わって…… そのどれもが明るくて、言いようのない感情に襲われた。
あらた
斗真
さっきまで彼と話していた人達が、 「余計なことをするな」というように彼を見つめる。
あらた
斗真
明らかに、敵意のある視線が向けられた。断ればよかった、なんて思ってももう遅い。
QRコードを読み取った先には、 『あらた』という名前と テディベアのアイコン。
ああ、そうか。コイツの名前……あらたっていうんだ。 思いの外可愛らしいアイコンで、話す前の人物像と、印象が全く違うな〜と思った。
#1 帰路に咲いた向日葵が
二分の一、終