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紡の体温が柳の手を
強く握っていた
もう二度と伝えられないと思っていた
何が怖いのか
何が憎いのか
自分の秘密も
全部
伝えられないまま
消えてしまうと思っていた
あの瞬間
死を悟った瞬間
本当の気持ちがわかった気がした
穏やかな陽が差している
肌に当たる柔らかい温度が
心地いい
柳
坂上 廻吏
坂上 廻吏
柳
叶栄 珠里
坂上 廻吏
叶栄 珠里
坂上 廻吏
叶栄 珠里
叶栄 珠里
坂上 廻吏
叶栄 珠里
柳
叶栄 珠里
神谷
叶栄 珠里
神谷
叶栄 珠里
叶栄 珠里
柳
神谷
坂上 廻吏
神谷
少し拙い足音が微かに聞こえた
視線の先には
九条と言葉を交わす
紡がいた
いつの間にか君は1人で歩いている
目線を逸らしてから直ぐに戻した
不意に目が合った
柳
髪が少し長く
肌が透き通っている
紡の瞳が何故か
切なくて
儚いようで
苦しかった
紡
君はただ優しく笑っていた
怖かったんだ
きっと
全て見透かされている気がしたから
きっと
憎かったんだ
君じゃない弱い自分が
哀れな自分が
すれ違う時
目が合う時
いつも君は僕を見て笑う
表情が曇っていく
その理由を考えれば考えるほど
苦しくなる
涙が溢れそうになる
神谷
柳
柳
珍しく眼鏡をかけた紡が階段を勢いよく駆け上がってきた
ドタッ
紡の眼鏡は少し傷ついていた
紡
紡は再び駆け出そうと足を運んだ
柳
沈黙が走る
柳
躊躇った言葉が口に出ていた
紡は振り返る
柳
柳
柳
柳
懐かしい匂いが纏わりついている
紡に対しての心情が
少しもわからない
憎悪
寂寥
憤慨
嫌悪
親愛
違う
違う
違う
浮かび上がる言葉は全て直ぐに
自分自身の感情に消される
弱い自分が
自分の心を砕いていく
涙が頬を伝った瞬間
胸が締め付けられる感覚に陥った
神谷
隣にいた神谷は
何も言わずに
柳の背中を摩っていた
神谷
柳
神谷
柳
神谷
柳
柳
神谷
柳
神谷
柳
神谷
柳
神谷
夕日が間見える廊下
走っている足が自然と止まった
2-3
その教室の窓際に
1人心地よさそうに眠っている
誘われるように教室に入った
日に照らされた肌と髪
透き通った肌
紡の頭に
少し色の明るい髪
柳
優しく紡の頭に手を置いた
柳
紡
紡
柳
紡
紡は心配そうに俺を見つめている
どうしよう
言えない
きっとまた
紡
もう一度だけでいいから
俺の名前を呼んで欲しかった
もう一度だけ
一緒に笑いたかった
柳
柳
柳
紡に背を向けて歩き出す
紡
呟くような声に立ち止まってしまった
柳
柳
紡
柳
柳
涙を拭わずに立ち尽くす
空白の時間が過ぎていく
俯いた顔を上げてから紡は答えた
紡
紡
柳
柳は何も言えずに
教室から駆け出していた
僕はただ
嬉しかったから
紡の言葉が頭から離れない
あの言葉の意味が少しも分からずにいる
柳
俺を
1人にしたくせに
︎︎
電車の光が夜に差し込む
孤独が一層深くなっていく
次の瞬間
柳は線路へ突き出された
︎︎
意識が朦朧としていく
柳
柳
掠れた声は誰にも届かない
そして柳は瞳を閉じた
夜がくれていく職員室
ただ1人佇んでいる
柏木 智
柏木は生徒の個人情報が記された書類を整理していた
そしてある生徒の書類を取り出した
八雲 紡
父親は彼が産まれる前に事故死
母親は火災による焼死
当時14歳
発生した火災
彼には
その火災以前の記憶がない
その火災発生時
現場にいた被害者は4人
八雲 舞
八雲 紡
柳 彩華
そして
もう1人