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茜
千秋って子は何の苦労もしないで
茜
とっても幸せなんだね
茜
そんなのって不公平だよ
茜
絶対に許せないよ
有希
茜さんもそう思うでしょ
有希
不公平過ぎると思うでしょ
茜
私は普通の生活の中で
茜
何の前触れもなく通り魔に殺されたの
茜
包丁で刺されるその瞬間まで
茜
自分が死ぬことなんて
茜
想像もしてなかったのに
有希
私も茜さんが殺された事件を知ってるよ
有希
三年前、帰宅途中の女子高生が
有希
会ったこともない男の人に
有希
包丁で刺し殺されたって
有希
茜さんは体を何十カ所も
有希
通り魔に刺されたんだよね
茜
包丁で刺されたとき
茜
本当に痛くて苦しかった
茜
自分の人生が終わるその瞬間を
茜
悪夢の中で感じてた
茜
この怒りと憎しみを幸せな人にぶつけたい
茜
幸せな人に私と同じ悪夢を味合わせたい
有希
(茜さんが幸せな人を憎む気持ちって)
有希
(私よりもずっと強い)
有希は茜の目を見つめ、茜に言った
有希
茜さんの怒りと憎しみを千秋にぶつけよう
有希
千秋の幸せを壊してやろう！
茜
…………
茜
私のことを利用しようとしてない？
有希
えっ…！？
有希
そんなこと…ないよ
有希
(怖い…一歩間違えれば私が茜さんに呪われちゃいそう…！)
有希
(でもなんとかしなきゃ)
有希
(茜さんを味方につけたら)
有希
(たくさんの人の幸せを)
有希
(私が壊すことだってできるんだ！)
茜
あなたの不幸なオーラは本物だね
茜
でもまだ生きてる
茜
私みたく、男に体を切り刻まれたりしてない！
茜
私の憎しみなんて何も分からないくせに…
私を利用しようとして話を合わせているんだ
私を利用しようとして話を合わせているんだ
有希
…確かに茜さんの味わった苦しみは私には分からない
有希
でも…生きてるからこその不幸ってあるんだよ！
有希
茜さんだって私のことなんか何も分からないくせに！！
茜
…………
有希
(つ、つい本気で怒っちゃった…)
有希
(殺される…っ！)
茜
今のあなたの言葉、嘘じゃないみたいだね
有希
えっ…
茜
私と同じ本物の憎しみを感じた
茜
あなた名前は？
有希
…私の名前は寺本有希
有希
この学校の二年生だよ
茜
有希って言うんだね
茜
私はきっと、有希と仲良くなれると思う
茜は持っていた古いお守りを有希に手渡した
茜
有希が私に会いたいときは
茜
このお守りを強く握って
茜
私のことを考えて
茜
そしたら私は有希の前に現れる
有希
このお守りがあれば
有希
いつでも茜さんに会えるの…？
茜
そうだよ
茜
私と有希は同じだけど、まだあなたの全部を信じられた訳じゃない
茜
もっともっと、有希の不幸を感じさせてほしいの
茜は有希にそう言うとその場から姿を消した
有希
店長、すみません
有希
またコップを割っちゃって…
賢一
お前、ここで働き始めて一年だよな
賢一
一年間ミスばっかしで
賢一
少しも成長しないよな
有希
すみません
有希
次からは気をつけます
賢一
その言葉は何度も聞いたよ
賢一
どうせ口先だけの言葉だろ
有希
そんなことないです
有希
私、頑張ります
賢一
期待はしないよ
賢一
いないよりはマシかもしれないし
有希
(私って、どうしてこんなにダメなんだろう)
有希
(一生懸命やってるつもりなのに…)
有希
またお酒を飲んでたの
有希
今日は仕事に行ったの？
勝
仕事をさぼって朝からパチンコだよ
勝
今日はツイててよ
勝
二万円儲かったよ
有希
たまたま勝てただけでしょ
有希
そんなの長続きしないよ
勝
つまんない仕事をしてもらう一万円より
勝
パチンコで儲けた二万円の方が遊べるんだから
勝
世の中って本当に運だよな
有希
ちゃんと仕事に行ってよ
有希
いくら日雇いの仕事だからって
有希
そんなんじゃクビになるよ
勝
オレは楽しく飲んでるんだ
勝
オレにグチグチ言うんじゃねぇ
有希
お金がないから私だってバイトしてるんだよ
有希
バイトだって楽しいことばかりじゃないよ
有希
怒られることもあるし
有希
上手く行かないこともあるけど
有希
それでも私は頑張ってるんだよ
勝
お前は働け
勝
お前のためだ
有希
お父さんに言ってもわからないよね
有希
お父さんは最低だよ
有希
私は絶対にお父さんみたいになりたくないよ
有希
(このお守りを強く握りしめて茜さんのことを思えば)
有希
(茜さんはここに来てくれるんだよね)
有希はお守りを強く握り茜のことを思った
すると茜が本当に有希の前に現れた
有希
茜さん、本当に来てくれたんだ
茜
有希が望めば私はどこにでも現れる
茜
私と有希は同じ匂いがするから
有希
茜さん、ここが私の住んでる場所なの
有希
とっても古くて狭いでしょ
有希
私の家ってとっても貧乏なの
有希
お父さんは働かないで
有希
お酒ばかり飲んでるし
茜
有希のそんな不幸が
茜
きっと私を呼び寄せたんだね
有希
私、勉強したって
有希
進学できないってわかってるし
有希
お金を稼がなきゃと思って
有希
バイトしてるけど
有希
一生懸命やってもミスばかりで…
有希
茜さん、私は本当にみじめだよ
有希
何もいいとこなくて
有希
本当にみじめだよ
茜
だから有希は幸せを憎むんだね
優しい茜の声に、有希の目から涙が落ちた
茜
もう泣かなくていいんだよ
茜
有希の不幸がよく分かったから
茜
これで、私たち本当の友達になれそう
有希
え…じゃあ
茜
これからたくさんの不幸をまき散らそうね
茜
他人の幸せを一ずつ壊していこうね
有希
…！
有希
茜さん、私は今、ワクワクしてる
有希
これから私と茜さんで
有希
たくさんの人の幸せを壊していくんだ！！
茜
そうだね、有希
有希
…まずは千秋からだよ
有希
千秋はたまたま金持ちの家に生まれただけなのに…
有希
千秋が何かをしたわけじゃないのに…
有希
生まれたときから千秋は幸せなんだ
茜
そういうのって絶対に不公平だよね
有希
茜さんもそう思うでしょ
有希
千秋の未来は明るいのに
有希
私の未来が塞がってるなんて
有希
絶対に許せない
茜
千秋の幸せを壊してやろう
茜
私たちはこれから
茜
たくさんの人達の幸せを
茜
一つずつ壊していくの
茜
この世から幸せがなくなるまで
茜
ずっと…
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