千秋の父
学年トップになったご褒美の旅行だけど
千秋の父
沖縄にしようと思うんだ
千秋の父
海がきれいだしホテルも良さそうだし
千秋
沖縄に行くの?
千秋
前から行ってみたかったんだ
千秋
ありがとう、お父さん
千秋の父
今回のテストも千秋が一番で
千秋の父
お父さんは鼻が高いよ
千秋
お父さん、私ね
千秋
これからも勉強を頑張って
千秋
絶対に志望校に合格するね
千秋
卒業するまで
千秋
ずっと学年トップでいるね
千秋の父
千秋が大学に合格したら
千秋の父
入学祝いに海外旅行に行こうよ
千秋の父
オーストラリアがいいかな
千秋
ほんとに?
千秋
私、オーストラリアに行ってみたい
千秋
大学受験に合格したら
千秋
みんなでオーストラリアに行こうね
千秋の父
うん、そうだな
千秋
お父さん大好き!
千秋
私も勉強を頑張るね
千秋
(一生懸命、勉強して大学に合格するんだ)
千秋
(そしたらお父さんもよろこぶよね)
千秋
(みんなが幸せになれるよね)
千秋が机に向かって参考書を開いたとき
千秋は背後に人の気配を感じて振り返った
するとそこには見知らぬ女子高生が立っていた
千秋
あなたは誰?
千秋
どうしてここにいるの?
茜
私は神野茜
茜
三年前、通り魔に刺し殺された被害者だよ
千秋
神野茜って、あの通り魔殺人事件の…
茜
千秋から私の嫌いな匂いがしてくるの
茜
幸せの匂いが漂ってるの
千秋
死んだはずのあなたが
千秋
どうしてここにいるの?
茜
幸せな人が憎いから
茜
千秋の幸せを壊しに来たの
千秋
何言ってるの?
千秋
どうして私の幸せを壊さなくちゃならないの?
茜
幸せを壊すのに理由はいらない
茜
千秋が死ぬことにも理由はいらない
千秋
出てって…
千秋
あなたの言ってることはおかしいよ
茜
私はこの包丁で千秋を刺し殺す
茜
千秋の幸せを終わらせる
茜は手にした包丁を振りかざした
茜
幸せは終わりだよ
茜
今から死ね!
千秋
いやぁぁぁぁぁ!
茜が包丁を振り上げた瞬間、千秋の部屋のドアが開いた
千秋の父
千秋!?どうしたんだ!
千秋
お、お父さん助けて!!幽霊が…
千秋の父
幽霊…?なにを言ってるんだ?
部屋のどこを見回しても、茜の姿は消えていた
千秋
(急にいなくなった…)
千秋の父
勉強で疲れていたんだろう
今日は早く寝なさい
今日は早く寝なさい
千秋
(違う、私は確かに見たのに…)
千秋
(神野茜の幽霊は)
千秋
(またここに現れるの?)
宏子
最近、うちの親がケンカばかりしてて嫌になるよ
宏子
顔を合わせるとすぐだから
有希
そういうのって嫌だよね
有希
うちも両親が離婚してるし
宏子
有希はお父さんと二人で住んでるんだよね
有希
うん、そうだよ
有希
でも、うちのお父さんって
有希
仕事もろくにしないし
有希
お酒ばかり飲んでるから
有希
一緒にいると嫌になるよ
宏子
親は選べないから仕方がないけど
宏子
それってちょっとキツイよね
有希
私ね、自分の将来を考えてみても
有希
良いイメージって浮かばないの
有希
私の未来って塞がってるのかなって
有希
ときどき思うよ
宏子
考え過ぎだよ
宏子
有希にもきっといいことあるよ
有希
そうかなぁ…
有希
私って要領悪いし
宏子
マイナス思考は良くないよ
宏子
きっといいことがあるって思わなきゃ
有希
ときどきそんなことも想像してるよ
有希
私ね、最近、ネットで小説を書いてるんだ
有希
空想の世界なら何でも思い通りになるから
宏子
どんな小説を書いてるの?
有希
かわいそうな女の子の願いが叶って
有希
幸せになるお話だよ
有希
せめて空想の世界の女の子くらいは
有希
幸せにしてあげたいって思うんだ
有希
(今日の千秋は元気なさそう)
有希
(茜さんは千秋のところに行ったのかな?)
有希はいつもと様子が違う千秋を見て
千秋の様子を探るために千秋に話しかけた
有希
おはよう、千秋さん
有希
何だか元気ないね
千秋
ちょっと、いろいろあって…
有希
何かあったの?
千秋
昨日、うちに幽霊が出たの
千秋
三年前に死んだ神野茜の幽霊が…
有希
(茜さんは千秋のとこにいったんだ)
有希
(千秋は茜さんに何をされたんだろう?)
千秋
神野茜の幽霊がね
千秋
幸せな人が嫌いだって言うの
千秋
だから私を殺すって
千秋
私が死ぬのに理由はいらないって
千秋
そんな理不尽な話ってないよね
有希
神野茜は理不尽に殺されたから
有希
幸せな人を憎んでるんだね
千秋
今夜も幽霊が出たらどうしよう
千秋
私、それが心配で…
有希
幽霊はまた出るかもしれないよ
有希
神野茜の幽霊は
有希
千秋さんの幸せを憎んでるみたいだから
有希は茜からもらったお守りを強く握りしめ
茜のことを思い浮かべた
すると茜が有希の前に現れた
茜
有希、私を呼んだ?
有希
うん
有希
今日は茜さんと話したくて
茜
私も有希と話したかった
茜
有希は私と同じ匂いがするから
有希
今日、学校で千秋と話したんだ
有希
そしたら千秋が茜さんのことで悩んでて
有希
それ見てたら、何だかうれしくなって
茜
昨日は千秋がどれくらい幸せだか見に行ったんだよ
茜
家族で楽しそうに過ごしていて…本当に幸せそうだった
茜
早く壊してやりたい
有希
私も千秋の幸せが壊れるところを見てみたい
有希
千秋が理不尽な殺され方をするのを見てみたい
茜
千秋には私が死ぬときに受けた苦しみを
茜
同じように味合わせてやる!
茜
千秋の体がボロボロになるまで
茜
私はこの包丁で
茜
千秋の体を突き刺すんだ