私たちの物語

体育祭が終わって、 学校は一気に文化祭モードに切り替わった。 段ボール。 絵の具の匂い。 放課後の教室。 そして―― “二人きりになりやすい時間”。

偶然。 でも、偶然が重なると必然になる。

（放課後・空き教室） 装飾班の作業場所は、 使われていない教室。 ドアを閉めると、 外の音が一気に遠くなる。

同じ机。 向かい合って、作業。 視線が合うたび、 後夜祭のキスがフラッシュバックする。

筆が止まる。 心臓が、うるさい。

ドアの向こうから、 足音。 二人同時に、動きを止める。

ドアが閉まる。 また、静寂。

机の下で、 指先が少しだけ動く。 触れない。 でも、近い。

それは、約束みたいな脅し。 でも、嫌じゃなかった。

文化祭準備期間は、 まだ始まったばかり。 ――危険なのは、 これからだった。