山下琴音からの着信があって数日経った頃だった。
あの日以来、彼女から電話が掛かってくる事はなく、
単なる間違いだったのかもしれないと思うようにしていた。
何故なら彼女が俺に電話をしてくる理由なんて何一つ思い浮かばなかったから。
決してきれいな別れ方をしたわけじゃない。
とはいえ、彼女が俺に今さら未練があるとは思えない。
俺より1年早く社会人になった琴音との間には、
気づかないうちに少しずつ見えない歪みができていたのだ。
俺たちが別れた理由、それは彼女に好きな人ができたからだった。
相手は同じ会社の人間で、確か少し年上だった記憶がある。
そして、しばらくして彼女がその年上の彼と結婚したのだと風の噂で聞いた。
コメント
1件