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ここ、都市レムナントでは、お金を使えば誰でも天才になれる。
メモリーチップは、ランク制。
Cランク:基礎技能(安め) Bランク:専門技術(高め) Aランク:一流クラス(超高額) Sランク:歴史的天才(裕福層専用)
首の後ろに差し込めば、数秒で“別人”だ。
昨日まで平均点だったやつが、今日には満点を取る。
努力よりも、支払い履歴が物を言う世界。
でも、俺はメモリーチップは買わない。 いや、買いたくない。
金が無いわけじゃない。
Aランクくらいなら、手を伸ばせば届く。
それでも──いらない。
あの薄い板切れに詰め込まれているのは、成功だけだ。
削られた失敗。 切り取られた迷い。 編集された“天才”。
俺は知っている。
チップに触れたとき、 ほんの一瞬だけ漏れる、本物の思考の残滓を。
汗と焦りと、どうしようもない遠回り。
天才は、最初から天才だったわけじゃない。
それを、俺だけが知っている。
だから今日も俺は、 誰もが首元に差込口を光らせるこの街で、 何も挿さずに歩いている。
─ 背の低い、ただの少年として。