君は
僕が生まれた時からそばにいて
僕が生まれて初めて話した言葉が
君の名前だったと
母がいつも笑って話す
君のように
僕も気持ちをわかってくれる
人は誰もいない
生まれた時からあった
かけがえのない
しあわせ
君は僕の
姉で親友で
そして初恋
晴子
仕方ないのよ
晴子
あなたが生まれる前から
晴子
決まってた
晴子
そういう運命だったの
君はある日
いなくなって
僕はこれから
この心の穴をどうしたらいいか
晴子
いつまでも落ち込んでないで
晴子
ほら!
突然それは現れた
茶色の塊
小さくて
弱くて
守ってあげないと消えてしまいそうな
晴子
ほら
晴子
この子の名前はチョコちゃん!
晴子
かわいがってあげて!
誰も何も
君の代わりにはならないのに
晴子
ほら、チョコちゃんが散歩に行きたいって!
蓮
……
晴子
お母さん、もう出かけなきゃだから、ね?
蓮
……わかった
僕が初めて話した言葉は
「チコ」
「チョコ」じゃないし
君は茶色と白の斑模様の しなやかな猫で
こんな薄茶のまん丸子犬じゃない
蓮
ほら
蓮
散歩
蓮
行くぞ
蓮
……チョコ
君がいなくなって
もう動物なんて飼うもんかと 思っていたけど
公園に捨てられてたガリガリの子犬が うちに来て
まん丸になった
そしたら
かわいいなんて
かわいいなんて思いたくなくても
小さなまん丸子犬は……
蓮
おい!
蓮
そんなに引っ張るなって!
蓮
ほら、首が苦しいだろ!
君がいなくなって
まだ1年しか経ってないけど
蓮
ははっ!
蓮
こら、チョコ!
蓮
そんなに飛びついたらひっくり返るって!
この子犬は君の生まれ変わりだと 思うことにする