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僕と私と君とあなた。

第10話 - 僕と私と君とあなた。⑩

2019年07月18日

#ミステリー

#嘘

#恋愛

#秘密

#青春

iamS

里穂は交通事故に遭い、意識が戻らない中、消し去られていたはずの自分の過去を見ていた。

福島光

りーーっ！！

バタンッ

牧瀬涼太

光…ちゃん…。

福島光

りー！春休みくらい外出てこいよ！
名前呼んでも出てこないから、強行突破で勝手に入ってきちゃった！えへへっ

牧瀬涼太

うっ、うぅ…。

福島光

りー…？

牧瀬涼太

私、私は汚いのっ！！
もう光ちゃんにも会えないの！

福島光

なんでだよ…。
りーは汚くない。綺麗だよ！

牧瀬涼太

…だって、だって…

牧瀬涼太

身体中、触られて、舐め、られて…、色んな汚いこと、してるんだよ、私…！

福島光

…誰にされた。

牧瀬涼太

誰だってもう関係ない…

福島光

関係なくない。絶対に許さない。
何があってもぶっ飛ばしてやる。

牧瀬涼太

無理…だよ。

牧瀬涼太

だって…。私の、お父さん、だもん…。

福島光

…。
え…？

福島光

ゆ、許せないよ…。
りーの父ちゃんだって、そんなん許せるわけないよ…。

牧瀬里穂

"光は…知ってるんだ…。"

牧瀬里穂

"それなのに、綺麗って言ってくれたんだね…。"

牧瀬涼太

私、生まれ変わりたいよぉ…。

牧瀬涼太

キラキラして、可愛くて、素敵な友達がいて、好きな人がいて…そんな女の子に生まれ変わりたい…！

福島光

りー。
生まれ変わろう…。

福島光

…そうだよ！！そうしよう！！

牧瀬涼太

…へ？

福島光

りー、付いてきて！！！

光は涼太の手を引いて、目的地へと全力で走った。

コンコンッ

福島光

爺ちゃーん！爺ちゃんいますかー？

爺ちゃん

おー、光かぁ！

ガチャッ

爺ちゃん

おぉ、涼太も一緒じゃったか！

爺ちゃん

中に入りなさい。

バタンッ

爺ちゃん

どうした？そんなに息を切らせて…。

福島光

爺ちゃん、一生の頼みがあるんだ…。

爺ちゃん

はて？なんじゃろな。

福島光

りーを…、りーをどっか遠くの高校へ行かせてやってくれないか？！

牧瀬涼太

…！

牧瀬涼太

ひ、光ちゃんも一緒じゃなきゃやだよっ！！

爺ちゃん

ほう…。

福島光

頼むよ、爺ちゃん。
涼太は…今の環境では辛すぎるよ…。

爺ちゃん

…。
(光は全て気付いているのか…。)

福島光

高校へは、りーは女として、あたしは男として入学するんだ！

牧瀬里穂

"…え？"

牧瀬里穂

"光は…元から男の子でしょ…？"

福島光

あたし、調べたんだよ！！

福島光

大人になったら、性別を変える手術も受けられるんだろ？！

福島光

それまで…それまでの間だけで良いから、爺ちゃん…頼むよ…っ！

牧瀬涼太

光…ちゃん…。

牧瀬涼太

お爺ちゃん、お願いします！！

牧瀬涼太

私、本当に自分のことは女の子だと思って生きてきました。

牧瀬涼太

お父さんから受けてることも、自分の身体のことも、今の自分の環境、全部変えたいの。

牧瀬涼太

私、キラキラした女の子に生まれ変わりたいの…！！

爺ちゃん

…うむ。

爺ちゃん

ちと急すぎでな、今すぐに出来るとは言えんが…

爺ちゃん

東京に古い付き合いのツテがあるでな、話すだけ話してみてやろうかね。

光・涼太

…！！！！

福島光

爺ちゃん、有難う…！！！

牧瀬涼太

う、うぅ…ぐすっ。

爺ちゃん

まぁまだ中学が残ってるでな？

爺ちゃん

二人とも、来週には入学式じゃぞ？

福島光

えへへっそんなのは良いんだよ！

福島光

中学校はどうすっかなぁ〜？

牧瀬里穂

"ここから先は、絶対に見ちゃ、いけない気がする…。"

牧瀬里穂

"早く、覚めて！！夢なら早く覚めて！！"

・・・

福島光

なぁ、りー？
高校生になったら、お互いさっ、何て名前にしようか？♪

牧瀬涼太

光ちゃんは気が早いよ〜っ。

福島光

なんでー？別に良いじゃんか！

福島光

そうだなー。あたしは漢字考えるのもめんどくさいし、光(ひかり)って書いて光(ひかる)でいっかなぁ？

牧瀬涼太

あははっ、ほとんど変わらないじゃん！

牧瀬涼太

そうだなぁ…私は…
"里穂"が良いかなぁ。

福島光

お、なんだ！りーも考えてたんじゃん！

牧瀬涼太

…お母さんと同じ"りほ"がつくでしょ？それに、昔、お母さんから、男の子が生まれたら"涼太"、女の子だったら"里穂"にするつもりだったって、聞いたことあったから…。

福島光

…ん。そっか！

牧瀬涼太郎

里穂として産まれてきてたら、今とは違う今があったのかなぁ…。

福島光

涼太でも里穂でも、あたしが側で守ってた事には何も変わりないけどなっ！

牧瀬涼太

…うんっ。

・・・

福島光

じゃあ、そろそろ帰るけど、大丈夫か？りー…。

牧瀬涼太

うんっ！大丈夫だよ…！

福島光

…やっぱ、うちんち泊まり来いよ！なっ？

福島光

…てか、りーの母ちゃんはこのこと知ってんのか？！

ガタッ

牧瀬涼太郎

何の話かな？

光・涼太

…？！！

牧瀬涼太

な、何でもないんです…！

牧瀬涼太

お父さんが帰って来ているとは知らずに、うるさくしてごめんなさい…。

福島光

あの…！

福島光

…涼太にひどいことすんのはやめてもらえませんか？

牧瀬涼太郎

…福島商店のとこの光ちゃんだったかな？そろそろ帰りなさい。

涼太郎は不敵な笑みを光へ向ける。

牧瀬涼太郎

涼太はこっちに来なさい。

涼太は強引に連れて行かれそうになる。

福島光

け、警察に通報しますよ！！！

涼太郎の足が止まる。

福島光

自分の子供に暴力したり、その、変なことしたり…全部伝えます！！

牧瀬涼太郎

…ふふふっ。

牧瀬涼太郎

君みたいな子供がそんなことを言ったところで何か意味があると思うのかな？

福島光

…っ！

牧瀬涼太郎

随分生意気なことを言ってくれるんだな。

不敵な笑みを浮かべたまま、涼太郎が光の方へ近づいて行く。

牧瀬里穂

"えへへ…もう、ダメか…。"

牧瀬涼太

わ、私の光ちゃんに触るなぁっ！！

ドンッ

牧瀬涼太郎

…なっ！！！！

一瞬の出来事だった。

牧瀬里穂

"…。"

涼太が咄嗟に父親を突き飛ばした先には、階段があり、涼太郎はバランスを崩し、そのまま階段の下へと落下していった。

牧瀬家は地主の家で、立派な家だった。洋風な作りで、階段も長く、そして高く、涼太郎が地上まで落下し終わる頃には…既に死んでいた。

牧瀬梨穂子

な、なんの騒ぎですか？！

凄まじい音がしたであろう、梨穂子がすぐに1階のリビングから顔を出す。

牧瀬梨穂子

…！！！
ひぃっ！！！

牧瀬梨穂子

涼太郎さん、涼太郎さん！！

牧瀬梨穂子

た、大変、す、すぐに救急車を呼ばないと！！！！

牧瀬涼太

わ…私が、私が、殺しちゃったんだ…。

ガタガタと身体を震わせる涼太を光はぎゅっと抱きしめる。

福島光

りー、違うよ。今のは事故だ。

福島光

そもそも、あんな奴はりーの父親じゃない。

福島光

あいつは、りーの本当のお父さんじゃなかったんだよ。ただの悪党だ。

福島光

そいつがただ足を滑らせて階段から落ちただけだ。…いい？

牧瀬涼太

…お父…さんじゃ、ない…？

福島光

そうだ。

牧瀬涼太

私の…せいじゃ、ない…？

福島光

そうだよ。

福島光

…それから、りーは涼太じゃない。
今日から里穂だ。女の子の里穂。
涼太は今日でお終い！さよならするんだよ！

牧瀬涼太

り…ほ…？

福島光

そうだよ。
それで"俺"は…

福島光

"光(ひかる)"だ。
里穂のヒーロー！
スーパーマン！！

牧瀬涼太

ひか…る？

福島光

そうだよ！

福島光

俺たちは今までも、これからも、ずーっと一緒。
俺が里穂のこと、ずっと守るからね。

福島光

約束！

牧瀬涼太

ヒー…ロー…。
約束…。

牧瀬里穂

"そっか…。そうだったね。私は、すっかり無かった事にしてたんだね…。"

それから、里穂は精神的ショックが大きすぎたと診断され、精神科へ通った。

警察の事情聴取にも光は同行したが、全ては事故だった、たまたま居合わせた光と里穂が目撃してしまったんだと説明。

里穂はと言うと、自宅療養が必要だと言うことで、中学1年生の間はほぼ学校へも通えなかった。

福島光

梨穂子さん、爺ちゃん。
くれぐれも、宜しくお願いします。

牧瀬梨穂子

…ええ。わかったわ。涼太の…里穂の為だものね。

爺ちゃん

すまないのぉ…光…。

梨穂子と里穂の祖父には、里穂は女の子として生きていく道を選んだ決意をしたということ、自分は男として振舞っていくことを話した。

そして、里穂には自分が女であるということは決して言わないでくれと頼んだ。

精神科医によれば、父親の死に直面したショックから、現実逃避してしまう涼太の心が、自分の都合のいい方へと記憶を書き換えてしまっているんだろうとのことだった。

福島光

(まぁ、あたししか事実は知らないんだけどね。)

そう、精神科医の言うことは半分は正しいが、半分は間違っている。

事実は、自分が父親を殺してしまったと言う罪悪感と精神的ショックを受けたところに、光が洗脳させる暗示をかけたからだった。

それが、里穂の安心材料となり、逃げ場となっていたのだった。

・・・

牧瀬里穂

…。

ポロポロ…

福島光

り、里穂？！

里穂の目からは涙が流れていた。

福島光

俺の声、聞こえるか？！

福島光

里穂、里穂っ！！

ガラガラッ

牧瀬梨穂子

光ちゃん？！どうしたの？！

福島光

里穂の目から、涙が！！！

牧瀬梨穂子

？！！
里穂！！！…里穂！！！

牧瀬里穂

…ひ、ひ、か…る？

福島光

里穂！？そうだよ！！俺だよ！！

牧瀬梨穂子

…！！大変！！
先生を、先生を呼んでくるわね！！！…

牧瀬里穂

…ずっと…、ごめ…んね？

福島光

何がだよ！！良いからあんま喋んな！！

福島光

ずっと…ずっとお前が帰ってくるのを待ってたんだぞ…！！

牧瀬里穂

ぜ…んぶ、

福島光

え？

牧瀬里穂

ぜ…ん、ぶ、

牧瀬里穂

おも…い、だ…し…た、の。

福島光

…え…。

牧瀬里穂

も…う、じゅ…ぶん、だよ。

牧瀬里穂

たく…さん、ありが…とう。

福島光

何言ってんだよ、里穂！

牧瀬里穂

ひ…か、るは、じ…ぶんの、しあ…わせ、みつけ…て…？

バタバタバタッ

医師

牧瀬さん！！

医師が梨穂子と祖父と共に病室に入ってくる。

医師

牧瀬さん、わかりますかー？！

牧瀬里穂

コクッ

里穂が静かに頷く。

医師

…意識が回復した！！！
奇跡だ！！！

・・・

意識が戻ってからの里穂の回復は早く、ほどなくして普通に会話も出来るようになった。

しかし、光は"全部、思い出した"という里穂の言葉が頭から離れず、なかなか里穂と向き合えないままだった。

如月優花

本当に本当に良かったよぉーー！！泣

牧瀬里穂

心配かけて、ごめんね、優花ちゃん…。

一ノ瀬美智香

全く、人騒がせなんですから！
福島くんのこと、どれだけ悲しい顔をさせたと思ってるんですかっ！

牧瀬里穂

…えへへ、そうだよね。

牧瀬里穂

ほんとに…ごめんね。

病室の外

滝沢悠人

むむむむ…。

福島光

な、なんだよ、悠人。

滝沢悠人

なーんで里穂ちゃんの意識が戻ったって言うのに、そんなくらーい顔してんだよっ、光！

福島光

…里穂、全部の正しい記憶を思い出したみたいなんだ。

滝沢悠人

…。

滝沢悠人

…えっ？！

滝沢悠人

眠っている間にってこと？！

福島光

…たぶん。

滝沢悠人

ちゃんと里穂ちゃんと話してないのか？！

福島光

…うん。

滝沢悠人

〜〜〜もーっ！

滝沢悠人

光は僕ちんがいないと本当にダメダメなんだからっ！

ガラガラッ

滝沢悠人

ほれっ二人ともー！

滝沢悠人

里穂ちゃんの意識が戻ってから、まだ光と里穂ちゃん、ゆっくり話せてないんだってぇ！

滝沢悠人

だから、ちょっと空気、読んであげよ？

如月優花

そーなの？！
ご、ごめんなのだ…。

一ノ瀬美智香

では、また明日…。

滝沢悠人

(美智香ちゃんは明日も来るつもりなのね♪ふふっ)

如月優花

優花も明日来るからっ里穂ちん！！

そう言って優花は、小さな里穂の身体を優しくギュッと抱き締める。

ガラガラッ

如月優花

今日は光っちに譲ってあげるのだ！

福島光

…おう、さんきゅな。

如月優花

優花はお腹が空いたし…
一ノ瀬ーっ！！クレープ食べに行くよ〜っ！！！♪

一ノ瀬美智香

さ、さっきも食堂で何か食べてたじゃないですかぁ〜…

滝沢悠人

すっかりいつも通りの優花に戻ったね♪

福島光

…。

くしゃくしゃっ

悠人が光の頭を優しく撫でる。

滝沢悠人

ちゃんと、気が済むまで話してこいっ！

福島光

お、おう！

悠人はエレベーターの方へ歩き出す。

福島光

悠人！！

福島光

本当に…有難う。

悠人は振り向かずに、歩きながら手をヒラヒラっとだけ振って、行ってしまった。

福島光

…よし！

ガラガラッ

福島光

里穂…。

牧瀬里穂

光…！

福島光

ごめん、我慢出来ない…

光は里穂に駆け寄り、そのままきつく抱きしめる。

福島光

本当に本当に、里穂がこのまま戻って来なかったらどうしようって、

福島光

毎日ずっと不安だった…。

福島光

里穂がいないと、生きてる意味がないんだ…。

福島光

里穂がいない毎日なんて、本当に耐えられなかった…！

牧瀬里穂

…ごめんね、光…。

牧瀬里穂

毎日ずーっと、手握ってくれてたんでしょ？

牧瀬里穂

お母さんから聞いたよっ。

福島光

当たり前だろ？だって俺は…

牧瀬里穂

里穂のヒーローだから、でしょ？

牧瀬里穂

ふふっ

福島光

…里穂。俺、ヒーロー失格だよ。

福島光

里穂のこと、守れなかった。

牧瀬里穂

…ううん、光はずっと守ってくれてたよ。

牧瀬里穂

でもね、意識が戻るまでの間、私はたぶん、神様に教えられたんだとおもうの。

福島光

…え？

牧瀬里穂

里穂は光に甘えすぎだぞー！
ちゃんと現実と向き合いなさい！
って！

福島光

そんなことねーよ！！

牧瀬里穂

ううん、そのお陰で全部、全部思い出したの。

福島光

…。

牧瀬里穂

お父さんを死に追いやったのは私。

牧瀬里穂

光は元々女の子。

牧瀬里穂

今も、女の子。

福島光

ちがっ…

牧瀬里穂

違くないよ。

福島光

里穂はわかってない！

福島光

俺が何の為にこうしてるか…！

福島光

里穂と、里穂とずっと一緒にいたいから…！

牧瀬里穂

うん…。そうだとしても…

牧瀬里穂

女の子の光が、男の子の涼太を好きになってくれた事に変わりはないでしょ…？

牧瀬里穂

光は…私を本当の女の子だと思ってない。

福島光

そんなこと…！

牧瀬里穂

ある…でしょ？

牧瀬里穂

光は同性愛者でもなければ、性同一性障害でもない。

牧瀬里穂

私はこれから、どんどん女の子になっていくんだよ？

牧瀬里穂

心だけじゃなくて、身体も。

牧瀬里穂

ちゃんと、想像したこと…ある？

福島光

あるよ、何回だって！！

福島光

だから、俺も一緒に手術を受けて…

牧瀬里穂

私は…光の為に手術を受けたいんじゃない。自分の為に受けたいんだよ。

福島光

そんなことわかって…

牧瀬里穂

光は？私の身体が女の子になるから、だから自分も男の子になるって？

福島光

…っ！

牧瀬里穂

そもそもの基準が…違うんだよ、光。

牧瀬里穂

私は女の子なの。心はずぅっと昔から女の子なの。

牧瀬里穂

心が勝手に叫んでるの。

福島光

…。

牧瀬里穂

光は？

牧瀬里穂

心が男の子になりたいって勝手に叫んでたこと、ある？

福島光

それは…。

牧瀬里穂

限界が…あるよ。

牧瀬里穂

男の子になりたいって思ってない光が、男の子のフリをし続けるのには、限界があるんだよ…。

牧瀬里穂

身体も女の子になった私の事を、光は本当に愛せる…？

牧瀬里穂

胸も膨らんで、男の子についてるべきはずの物がなくなるんだよ…？

福島光

そんなこと、わかってるよ！

福島光

…それでも俺は…！

牧瀬里穂

…光は、まだ服を脱がした私の姿が、男の子だから、安心してるんだよ…。

福島光

そんなことねーから！！

福島光

確かに、男になりたいって本能で思ったことはない。

福島光

でも、里穂がずっと俺の隣にいてくれるなら、男にだって、何にだってなれるんだよ…。

牧瀬里穂

理想…論、だね。

福島光

里穂は…一体俺にどうして欲しいってんだよ…。

牧瀬里穂

…。

牧瀬里穂

終わりに、しよう…？

福島光

…は？

牧瀬里穂

もう、解放してあげるから、光は自由になって？自分の人生をちゃんと歩んでいって欲しい…。

福島光

…なに、言ってんの？里穂

牧瀬里穂

それに、私は罪を償わなきゃいけない。

牧瀬里穂

あんな人…自分の父親だなんて思いたくけど…お母さんに打ち明ける。

牧瀬里穂

自分だけ、都合よく幸せになんて、なったらダメだよ…。

福島光

里穂、ちょっと待てよ…

牧瀬里穂

今まで…

牧瀬里穂

ずっと、ずっと、ずっと…

牧瀬里穂

本当に有難う…。

福島光

…ねーよ。

福島光

俺は認めねーからなっ！！！

ガラガラッ

光はとにかく走った。何を言われてるのか、どうしたら良いのか、自分は間違ってるのか、何なのか、わからなくなっていた。

無我夢中で病院の出口を出た。

滝沢悠人

…！

滝沢悠人

光っ！！

福島光

…！！

福島光

な、な…んで、お前…。

滝沢悠人

なんちゅー顔してんだよ〜…。

滝沢悠人

僕が光のこと置いて先に帰っちゃう訳ないでしょー？

滝沢悠人

…おいで。

福島光

…っ！

悠人は光のことを強く抱きしめる。

滝沢悠人

光だって、泣いていーんだよ？

福島光

うぅ…うっ…。

滝沢悠人

ずっと、ずっと、

滝沢悠人

里穂ちゃんだけの為に、
生きてきたんだもんね…。

滝沢悠人

よしよし…。

福島光

ど…どうした、らっ、良いの、かっ、もう、わかんなっ…

滝沢悠人

一回、休憩しよ光。

滝沢悠人

考えること、休憩しよ？

福島光

…う、ん、。

悠人は光が泣き止むまで、ずっと優しく抱きしめながら、頭を撫でた。

光は子供のように泣きじゃくった。

…そんな姿を病室の窓から見つめる姿があった。

僕と私と君とあなた。

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iamS

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