詳細設定 ※青行灯:百物語をすると出てくる妖怪で、行灯の上に現れるだけで、特に怪異を起こす訳ではない。これ以外の情報がないので、青行灯はオリジナル設定にさせて貰ってるよ。 ※ページが変わる毎に視点が変わるよ。 ※野田ニキ、和ニキと小林ニキは同期設定なので、上下関係なし。 納得できた方だけ、どうぞ
最近、鬼が出るという噂で、巷は持ちきりだ。
魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する都では、日夜、陰陽師が妖怪を調伏(ちょうぶく)し、都を守っている。だから、鬼が出る事自体はそう珍しい事ではない。
確かに、そう珍しい事ではないのだが、今回の鬼は、名だたる陰陽師を持ってしても、調伏出来ず、手を焼いている状態だった。
その上、その鬼は今までの妖怪と、少し勝手が違っていた。
何故ならば、気づいた時には、『それ』はそこにあったのだから。
最初『それ』は、人の感情から切り離されただけの、一つの思念に過ぎなかった。
『それ』は形を持たなかった。
しかし、長い年月を隔てるうちに、何時しか『それ』は自我を宿した。
目に見えぬ畏れが、姿を持った瞬間だった。
『それ』は自我を持った事で、相応しい形を手に入れた。
手や足が生え、より人に近い形へ
牙を持ち
小さな二本の角を額に生やし
死装束を纏(まと)いて
暗闇を行灯で照らす。
畏れを喰らふ妖怪、青行灯として顕現(けんげん)した。
青行灯が顕現してからは都は、百物語をすれば鬼が現れると噂が広まり、それが都の外へも口伝(くでん)された。
噂を耳にした者達は、皆鬼を畏れ、臆(おく)した。青行灯が現れた以降から、夏の風物詩である怪談話は、九十九話までは語るが、百話目を語る事を人々は自ら禁じた。
青行灯は人の畏れから生まれし鬼。それ故に、人の畏れる心を喰らふ。
百物語を完遂(かんすい)しようがしまいが関係はない。畏れを感じた時点で、魂は鬼の腹の中。
ただ、青行灯はそこにいるだけで、人々は勝手に戦(おのの)き、蜘蛛の子を散らすように逃げる。逃げる。
小峠華太
今日も今日とて、青行灯は悪戯に人の前に姿を現せては、人間の逃げ惑う様を、愉快そうに見下ろしている。
最近、顕現したばかりとは思えない程に、青行灯は禍々しい妖気を纏っている。
それもその筈。畏れを喰らえば喰らふほどに妖力が増幅し、羅刹へと近づいているからだ。 ※羅刹:人をたぶらかして、血肉を食らう悪鬼(あっき)。男は醜悪(しゅうあく)だが、女は美麗とされている。
小峠華太
小峠華太
鬼門に位置する山に鬼は住む。 ※鬼門:北東の方角。鬼が出入りする方角ことを意味している。
青行灯は山へと視線を向ける。
小峠華太
青行灯は次の標的を、同族の鬼に絞ったようだ。
小峠華太
ゆらりと行灯の中の蝋燭(ろうそく)を揺らめかせ、青行灯は闇夜に溶けていった。
和中視点
自然と眉間に皺がよる。
和中蒼一郎
和中蒼一郎
野田一
野田一
野田一
小林幸真
小林幸真
毎度、毎度、嫁を娶れと二人揃って、口うるさい。
和中蒼一郎
せっかくの酒宴の酒が不味くなる。
野田一
和中蒼一郎
地位や名誉に惚れて、寄ってくる者などと閨房(けいぼう)を供にする気など起きぬ。
ただそれだけだ。
野田一
和中蒼一郎
小林幸真
野田一
これ以上、言葉を続けても俺が首を縦に振る事はないと分かっている為か、この話はそのまま流れた。
そして、宴も酣(たけなわ)に差し掛かった頃、目一鬼が酒席へと駆け込んでくる。 ※目一鬼:目が一つの人食い鬼
一目鬼(まひとつおに)
和中蒼一郎
和中蒼一郎
一目鬼(まひとつおに)
野田一
一目鬼(まひとつおに)
小林幸真
一目鬼(まひとつおに)
一目鬼(まひとつおに)
同胞を目の前で喰われた事が、余りにもショックだったのだろう。目一鬼は、歯をガチガチと鳴らし、体を震わせ、恐慌状態に陥っている。
和中蒼一郎
巷に現れる鬼は、畏れを糧とすると見聞する。
これは不味い。
一目鬼(まひとつおに)
臆するなと助言するも、時既に遅し。目一鬼の手が砂となり、崩壊し始める。
そして、二秒とかからずに、目一鬼は砂塵となり、消えた。
目一鬼が消滅するのと入れ替わりで、別の鬼が、ひらりと蝶のように、庭園に舞い降りた。
小峠華太
その鬼は、青行灯と名乗った。
白雪のような肌に
射干玉(ぬばたま)のような髪が映え
蒼眼(そうがん)に強い意思を秘め
禍々(まがまが)しい妖気を纏っていた。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花を地で行くような、それはそれは美しい鬼だった。
小峠華太
目があった瞬間
これだと思った。
和中蒼一郎
野田一
和中蒼一郎
野田一
和中蒼一郎
烏天狗(野田)は、苦虫を噛み潰したような顔をして、青行灯に視線を向ける。
野田一
小林幸真
小林幸真
和中蒼一郎
和中蒼一郎
和中蒼一郎
野田一
小林幸真
烏天狗と猪笹王(小林)は、さっさと帰って行った。 猪笹王:いのささお。猪の妖怪で、自分の要望を聞き入れない人を食べるよ。人間にも変化できる。
俺は庭園に降り立つ。
和中蒼一郎
和中蒼一郎
小峠華太
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
小峠華太
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
真名を明かす事は、人だけではな、妖怪の世界でも禁忌(きんき)とされている。真名を告げられた、青行灯は仰天した様子を見せる。 ※真名:真の名を知られる事は、名前を知られた相手に支配されるという、呪術的な効力を持つものと考えてられていた。
故に、親・伴侶以外に自分の真名を教えてはならない。
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
青行灯の周りに、無数の青い鬼火が出現する。
小峠華太
次の刹那、俺に向けて、青行灯が鬼火を弾丸のように飛ばしてきた。
軌道を読み、体をずらすことで、鬼火を回避するが、どうやら、追尾型だったようだ。鬼火は軌道を変え、俺の着物の裾を焼く。
鬼火は尽きぬ怨嗟(えんさ)から出来たもの。水を掛けたとしても消えぬ。
故に鬼火を消す術はなし。
和中蒼一郎
しかし、それは人間に限った場合の話。俺は鬼。鬼火程度、どうとでも出来る。
体の周りに妖気を練り込んだ気流を発生させ、着物を焼く鬼火を消し飛ばす。
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
今度は、俺から仕掛けさせて貰う。
地を蹴ると同時に、爆発的な加速をみせ、一気に青行灯の懐へと潜り込む。
小峠華太
一足遅れて気づいた、青行灯はガード体勢をとろうとするが、既に俺が懐に入り込んだ後だ。もう遅い。
気脈が流れる場所、臍の下へ、拳を叩き込む。
小峠華太
そして、拳を叩き込んだと同時に、妖気を流しこみ、一時的に気脈を絶つ。
小峠華太
気脈が絶たれれば、妖気は練れない。妖気を使えなければ、妖怪といえど人と同じ。
小峠華太
青行灯はその場に沈むも、相も変わらず、ギロッと直も俺を睨(ね)めつけてくる。
抵抗する術はないとうのに、それでも屈服はしないという気概をみせる青行灯の姿に、俺は一刻も早く、屈服させ、蹂躙(じゅうりん)したい欲に駆られる。
和中蒼一郎
俺は青行灯を担ぎ上げた。
華太視点
布団の上に、そっと下ろされる。
抵抗しょうにも、最悪な事に妖気が練れねぇ。
和中蒼一郎
妖気を使えない俺が、今、暴れたところで、赤子の手を捻るようなものだ。
小峠華太
和中蒼一郎
そういうと俺の上に、男は覆い被さってきた。
和中蒼一郎
どうやら、この男は俺を抱きたいようだ。
小峠華太
俺を抱こうなんざ、酔狂な野郎もいたもんだ。
和中蒼一郎
まあいい。房中術の心得くらいはある。
小峠華太
力で屈服させるのが無理ならば、内から喰い破ればいいだけだ。
俺から、男の首の後ろに手を回す。
俺が手を回したのを合図に、男は俺の柔肌に牙を突き立てた。
そう、内から喰らえばいいだけ。
ただそれだけだった筈なのに。
小峠華太
男から、もたらされる快感に堪らず、布団を足の指で引っ掻き、快楽を逃がそうとする。
和中蒼一郎
男が動く度に、体内に快感と妖気が濁流(だくりゅう)の如く、流れ込んでくる。
和中蒼一郎
それだけでも厄介なのに、追い討ちをかけるように、焔(ほむら)のような熱が、俺の神経を焼き切ろうとする。
内から喰らう筈が、気づけば、俺の方が侵食されている。
どうしてこうなった?
小峠華太
とうの昔に、俺の容量を越えていた。
小峠華太
それなのに、止めどなく妖気が、俺の中に入り込んでくる。
和中蒼一郎
快感漬けにされて、今にも気が狂いそうだ。
小峠華太
俺はとうとう、陥落(かんらく)した。
小峠華太
この快楽地獄から解放されたくて、解放されるには、俺に快楽を与え続ける男に、許しを乞う道しか残されてなかった。解放される為に、自ら真名を口にした。
和中蒼一郎
なんとか繋ぎ止めていた意識が、そこでプツリと切れた。
小林視点
マジかよ。
俺は思わず、目をひんむいた。
小峠華太
三つ指をつき、客人を出迎える様は貞淑な妻、そのもの。
昨夜、傍若無人に振る舞った奴とは思えない程の、あまりの変わりように、思わず呆気(あっけ)に囚われてしまった。
小林幸真
小峠華太
小峠華太
小峠華太
ご寵愛ねぇ。丁寧な言い回しに変えただけで、ヤったって事だろ?まどろっこしいから、はっきりとそう言えばいいのによぉ~
和中蒼一郎
玄関で話し込んでいると、酒呑がやって来た。
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
和中蒼一郎
妻としての役目ねぇ、つまり、俺に抱かれるのが仕事ってか。
和中蒼一郎
小峠華太
酒呑の言葉に、青行灯は湯気が出そうな程に、顔を赤らめた。
和中蒼一郎
和中蒼一郎
小峠華太
あんだけ嫁は娶らんと豪語(ごうご)していたのに、凄い溺愛っぷり~。
和中蒼一郎
小林幸真
小林幸真
俺の妻だと周りを牽制する為、まぐわって、体の奥にまで、酒呑の妖気を注ぎ込んでおいて、よく言うよな~。
お陰で、三里先まで酒呑の妖気がぷんぷんと漂ってくんだぜ? ※一里は3.4km
小峠華太
照れんな。
和中蒼一郎
小林幸真
突然、風が吹き荒れ、烏天狗が姿を現わす。
和中蒼一郎
野田一
和中蒼一郎
野田一
小峠華太
野田一
和中蒼一郎
和中蒼一郎
小峠華太
和中蒼一郎
酒呑の手が青行灯の腰のあたりを撫でており、言葉とは裏腹に楽しもうとしているのは見え見え。
野田一
和中蒼一郎
小峠華太
野田一
和中蒼一郎
野田一
二人が話ている隙に、俺は青行灯に近寄り、鼻をひくっかせ、匂いを嗅ぐ。
小林幸真
小峠華太
小峠華太
青行灯が声をかけると人型二体と鼬が一匹姿を見せた。
小峠華太
小林幸真
小峠華太
小林幸真
おもちゃ見っつけ。
これはいい暇潰しが出来そう~
速水泰輝
速水の首を掴んだ。
小林幸真
小峠華太
俺に首を絞められているせいか、速水は手足をばたつかせる。
小林幸真
小峠華太
小林幸真
速水泰輝
相変わらず、速水は手足をばたつかせながら、青行灯に助けを求める為に、前足を伸ばす。
小林幸真
速水泰輝
小峠華太
小林幸真
おもちゃは手に入った。面倒くせぇ、祝言の準備も手伝わなくて良くなった。俺の目論見通り~。
首を握ったまま、速水に話しかける。
小林幸真
速水泰輝
俺は変化の術を教える為に、速水を連れて、道場へと歩を進めたのだった。
かくして、青行灯が酒呑童子に嫁いだ事で、巷を騒がせていた怪異は収まった。
しかし、今回は、酒呑童子が青行灯をたまたま気に入ったお陰で、解決しただけに過ぎぬ。
そもそも妖怪とは、人の死後、魂の存在になった時に、大事に祀られた者は神様に、人に祀られず、大事にされなかった者が妖怪に転じるのだ。
だから、大事にして貰えない事に妖怪は怒り、人間に仕返しているだけに過ぎぬ。
皆様は、ご先祖様を大事になさっていますか?
気をつけなけいと、ご先祖が妖怪となって、貴方のもとに現れるかもやしれませぬ。
ゆめゆめお忘れなきよう。
なにはともあれ、妖かし奇譚(きたん)は、これにて終演。
あとがき 仙狐→天狐→空狐→九尾の狐の順で変化していくんだけど、妖怪から何故、神化するのか、神と妖怪の違いは何かと思って調べてみた結果、滾ったので書いてみた。 和ニキは狐でも鬼でも似合う。野田ニキは刺青と同じ鵺でも良かったけど、修験者の格好も似合いそうだから、今回は烏天狗にしてみた。 あきたかなら、夫婦鬼の前鬼後鬼、仙石は仙猫遊女、佐古は入内雀(にゅうないすずめ)、守若が青鷺火(あおさぎのひ)とかも良さそう。 話とは関係ないが、二日前、シティーハンターみてきた。やっぱり、銃撃戦やバトルシーンが格好いい。バグ大は速射が求められるから、オートマチックなのは仕方ないんだけど、リボルバー式の銃のハードボイルドな格好良さは、オートマチックでは出せない魅力がある。それに主人公とヒロインのくっきそうでくっつかない恋愛模様が素敵。 ヒロインの香は、銃の腕はノーコンなんだけど、それには理由がちゃんとある。相棒の忘れ形見であり、愛しているからこそ、人殺しにさせたくなくて、わざと銃の照準が合わないように細工している。主人公の普段は女にだらしないけど、決める時に決める、そのギャップの格好よさは筆舌しがたし。エンディング曲の『get wild』も格好いい。アニメと一緒に視聴すると曲もアニメ双方ともに魅力が増す。もう直ぐ映画終わりますが、古いアニメなので、興味ある方は見てみて下さい。バグ大とは違った格好よさがあるアニメです。
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