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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

兵舎内 手洗い場

em

……さて、どうするか。

ひとらんらんとの戦いに、勝算がないわけではない。 問題は『その後』だ。

新人幹部と言われる中でも、随一の実力者であるひとらんらん。 普通に戦うとなるとかなり厳しい相手であるのに、二人の実力者との戦闘の後であり、体調も万端とは言えない。

(なお、鬱先生はカウントされていない模様)

この戦いはイベントという体を取ってはいるが、半ばエーミール虐めに近いものがある。

それは無理もない。 と、エーミールも思ってはいる。

旧知とはいえ、総統であるグルッペンに対して、反抗的な意思を持っている。他幹部との根深い因縁もある。 信用をしろという方が、無理である。

このイベントを機に、エーミール対しマウントを取りたい輩にも囲まれている。 それは間違いない。

だからこそ、エーミールは勝たねばならない。 参謀長の地位を確固たるものにし、絶対的な権力を手に入れなければならない。

em

(ゾムさん……)

弱いままでは、いつまでもゾムを守れない。 弱いなりにもゾムを守りたい。

勝ち続けなければ。

ゾムを守るために、エーミールはもう負けるわけにはいかない。 たとえ何モノが相手であろうと。

em

(力を…力を貸してください。ゾムさん)

エーミールは目を閉じ、頭の中で何度も何度もゾムの戦い方を反芻した。 少しでも、彼に近付くために。 もう二度と負けないために。

闘技場の片隅。

sho

エミさん遅ない?
そろそろ時間やで。

ut

不戦敗か?

tn

いや。まだもうちょい時間ある。

ht

……トントンさん。開催時間、あと20分ほど延長できませんか?

tn

そら別に構わんが……
エミさん休ますだけになるで?エエんか?

ht

それは構いません。
お互い、万全の状態で戦いたいので。

tn

殊勝な心掛けやなぁ……って、ちょっと待て。
その右手に持っているペットボトルは何や?

ht

これは、ただの強力炭酸水ですが。

tn

お、おう…
(イヤな予感しかしねぇ……)

ut

らんらーん。
炭酸水、何に『使う』ん?

ht

それはもちろん

ひとらんらん・鬱 「炭酸水オ○ニーだよな〜!!」

tn

あーーーーーーッッッ!!
やっぱり、やっぱりぃぃぃッ!!
却下に決まってるやろ、そんなモン!!

ht

何を言います。
『万全の状態』たることが、戦いに赴く武士(もののふ)のさだめ。

tn

モノノフに全力で謝れ。

ht

だいじょうぶです。10分もあれば、余裕です(親指サムズ・アップ)

tn

そういう問題ちゃうわッ!!

osmn

やったー。げどちゃんの試合、間に合っためう〜!

ht

あ。オスマンさん。お仕事お疲れ様です!

osmn

めう。
ホント、クソザコ会合日程、どうにかならんかね。

ht

オスマンさん来たことですし、俺は『時と精神の部屋』に籠もりますね。

tn

いや、単なるオ○ニーやんかーい!!

osmn

いやー、トンち。若い子は発散すべきときにしとかないと、集中力保たへんよ。

osmn

ダイジョーブ! げどちゃんなら、10分もかからんて!
会合先で、いいオカズももろてきたし!(キリッ)

tn

だーかーらー…
そーゆー問題とちゃうねんてぇ…

4戦目 FIGHT!!

em

よろしくお願いいたします。

ht

よろしくお願いしますッ!!

ht

(エミさんの目が、今までと違うな。本気の…いや、本気以上のエミさんが相手となれば、不足はない)

ht

…初手木の棒とか生ぬるいことしないで、最初から得意の得物で行きませんか?

em

いいですね。
よろしいですか?総統閣下。

gr

構わんぞ。
お互いにぬるい戦いなど、する気はないのだろう?

ht

では俺は、愛刀を使わせてもらう。

em

私は……そうですね……

gr

審判控え室前にある武器置き場から、好きなの選んでもいいぞ。

em

ありがとうございます。では、これで。

エーミールが取り出したのは、長さ2m弱の鉄パイプだった。

gr

ほう。

ht

仕込み杖の方ではないんですね。

em

アレはあくまで暗器ですからね。
それにひとらんさんが相手なら、このくらいのハンデは欲しいです。

gr

ははっ。リーチを取ったか。さすがだな。

ht

それでは…参るッ!!

抜刀一閃。 幼い頃から剣道を続け、四人の中でも随一の戦闘力を持つ、ひとらんらん。 長物武器でリーチを取ったとはいえ、エーミールは防戦一方だった。

ひとらんらんの一撃はシャオロンよりも重く、それでいてコネシマのように素早かった。

おまけにエーミールの動きもよく見ており、防御から一転攻撃態勢に移ろうとすると、即座に鋭い突きを入れ、エーミールの攻撃を封じ込める。

em

(基本の動きは剣道のソレか…。けれど、剣道にはない柔軟な剣筋もあって、動きが読み辛い…)

em

(……オスマンさんから、かなり学んだ上に、相当に場数を踏んでいる。…実に素晴らしい。さすが、オスマンさんが褒めるだけのことはある)

ht

守っているだけでは勝てませんよ、校長!

ひとらんらんの上段からの振り下ろしを、エーミールはかろうじて流して避けた。 大振りでわざと隙を作り、エーミールの攻撃を誘っている。

攻撃に転じたところを搦め手で動きを封じてくると読んだエーミールは、ひとらんらんの攻撃を流して距離を稼ぐ。

ひとらんらんの言う通り、防戦一方では突破口は見いだせない。 防いでいるだけでも、気力と体力は削られる一方である。

em

(どこか……)

連戦の蓄積疲労と年齢による体力差がある以上、長期戦になればなるほど、不利になるのはエーミールのほう。

em

(けれど…)

em

(負けるわけにはいかない!)

em

(ひとらんさんにも、……この組織にもッ)

エーミールの視界の隅に、先程の鬱との戦いで、鬱が片付け忘れた木の棒が見えた。

em

…………ッ!

em

(ゾムさん!力を貸してくださいッ!!)

ひとらんらんの攻撃をかわしながら、エーミールはじりじりと後退を続ける。

tn

……まさか、場外負け狙っとるんちゃうよな?

gr

と、思うじゃーん?
まあ、見てろ。そろそろエミさん仕掛けて来るぞ。

トントンの言う通り、エーミールは場外まであと少しというところまで押されてきた。 そして、足元には先程目に入った、鬱の落とした木の棒。

ひとらんらんの攻撃をかわして体を横回転させるエーミール。 回転の動きを利用し、落ちていた木の棒を、ひとらんらんに向かって蹴り上げた。

ht

!!
小賢しい真似を…ッ

最後っ屁のようなエーミールの攻撃を、ひとらんらんは愛刀で薙ぎ払う。

osmn

!!
げどちゃん、来るぞっ!

ht

え?

とひとらんらんが口にした瞬間、小石混じりの土がひとらんらんの顔面目掛けて飛んできた。 隙を作った僅かの間に、エーミールは闘技場の砂利を掴み上げ、ひとらんらんの顔面に向かって礫を投げる。 咄嗟のことに、ひとらんらんは両手で顔面をガードしたその特

鬼気迫る表情のエーミールが、ひとらんらん目掛けて突進してきた。

エーミールの鉄パイプは、ひとらんらんの水月を正確に捉え、渾身の一撃で突き上げた。

ht

ぐ、あッ!?

osmn

げどちゃん!!

体をくの字に曲げ、地面に倒れ込みそうになったひとらんらん。 エーミールは畳み掛けるように、鉄パイプを横に持ち、ひとらんらんの抑え込もうとしていた。

gr

まずい。
トン氏、ロボロ。
エミさんを止めろ。

地面に倒れ込んだひとらんらんの首を鉄パイプで押さえ込んだエーミールは、腰からナイフを抜き、ひとらんらんの心臓に振り下ろす

直前のすんでのところで、ロボロがエーミールの右腕を抑え、ナイフを取り上げた。 左側から回り込んでいたトントンが、同じくエーミールの手から鉄パイプを抜き取っていた。

殺意に満ちたエーミールの眼。エーミールを押さえるロボロとトントン。 そして、地面に転がる自分。

ひとらんらんは、自分の敗北を察した。

ht

参りました。

...

vs ひとらんらん 勝者 エーミール (TKO) 対戦成績 3−1

新幹部によるエキシビションマッチ 3−1で、エーミール新参謀長の勝利です

gr

エミさん、落ち着け。
戦いは終わりだ。

グルッペンの言葉に、ようやく我を取り戻したエーミール。 慌てて周囲を確認すると、対戦相手のひとらんらんは、苦しそうに喉を押さえ、オスマンに抱えられ立ち上がっていた。

一方の自分は、トントンとロボロに両脇を抱えて押さえ込まれていた。

tn

ようやく気ィついたか、エーミール。

rbr

やり過ぎや。
危うくひとらん殺すトコやったで?

em

あ……

em

申し訳ありません、ひとらんさん……

ht

気にしないで、エミさん。

ひとらんらんは何度か咳をし、喉の調子を整えた。

ht

エミさんは、俺を《敵》として認識を切り替えたことで、本気以上の力をもって挑んでくれた。
俺のこと、評価してくれていた証拠だ。

ht

何より「どんな手を使っても勝つ」というのは、敵も同じだということを、身を以て知ることができた。

em

……良くも悪くも、ひとらんさんの剣は、まっすぐです。
ですが、戦争は綺麗事では済まない。

em

わかっていただけて、嬉しいです。
オスマンさんについていけば、自ずとその道も見極めできるでしょう。

ht

ありがとうございます。
勉強になりました。

em

しんぺいさんに、怪我を診てもらってください。

em

オスマンさん、すみませんが、よろしくお願いいたします。

osmn

めう。
任された。

osmn

いくよ、げどちゃん。歩ける?

ht

はい。

osmn

JKの隣はJKって決まっとんねん。
歩けるんやったら、自分で歩いてね。

ht

……手厳しいなぁ、オスマンさんは。

オスマンとひとらんらんのなごやか(?)なやり取りを見送り、トントンもまたエーミールを立たせようとした。

その瞬間、エーミールとトントンの背筋に冷たい何かが走る。 トントンは異変の正体に気付いた。

tn

……ロボロ?

【🦋】幹部 vs em 【完結】

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コメント

9

ユーザー

ボクが知ってるひとらんはもっと 純粋で初心なかわいいひとらんらん なんだぁぁぁぁぁぁ!!! 。゚(゚´Д`゚)゚。ウワァァァ

ユーザー

炭酸プレイ…os氏を思い出すのは我だけか?

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