桃side
まろが倒れた騒動から三日。
生徒会長が教室で突如倒れた、 と一時期校内で大騒ぎが起きた。
まろが教室に行くだけで、 クラスメイトとかすれ違った同学年の子全員に「大丈夫?!」って聞かれる
だが暫くするとまろが普段通りに過ごしているのをみて安心したのか、 みんなはその出来事に対し触れることはなくなった。
__それよりも、今の全生徒の興味は違うものに移っていたのだ。
いふ
体育館のステージに上がりマイクに向かって話すまろの言葉に、 体育座りをするみんなの肩がピクリと動く。
先週の金曜日に準備した手元の資料をちらちら見ながら、 まろは『文化祭』の説明をし始めた。
いふ
いふ
いふ
いふ
いふ
いふ
いふ
ある程度説明をし終わったところで、まろは小さく息を呑み込むと、 優しく王子様のように微笑む。
そして悲しそうな、 それでいて嬉しそうななんだか儚げな表情を浮かべ、 言った。
いふ
いふ
「これで説明を終わります」とまろは深くお辞儀をしてから、 ステージの横についている階段を降りて俺の後ろに座った。
教師
ないこ
両手を絡ませて天井に向かって大きく腕を伸ばすと、 体育座りで固くなっていた体が段々と解れていく。
眠気が取れず大きなあくびをすると、周囲で騒がしく話す同級生たちの声が俺の耳に入り込んできた。
女子1
女子2
女子1
男子1
男子2
男子1
話題はもちろん文化祭のことばかり。
俺は文化祭に参加したことがないので、どんな出し物があるのか未だによくわかっていない。
だがお化け屋敷、 喫茶店等文化祭の中で人気なものはいくつか存在するらしく、 想像はつかないが今からでも明るい雰囲気が校内を包み込んでいた。
ないこ
テンションが上がって、 変なものにならなければ良いが。
クラスメイトたちに若干の不安を抱きつつ、自分の教室に戻り席に着いた俺は、そっと五時間目の会議に思いを馳せた。
・・・・・・そもそも、変なものだったら生徒会が許可してくれないか。
男子3
クラス
五時間目終了間際。
黒板には女の子の学級委員の字で、でかでかと「たこ焼き屋」と書かれていて、男の子の学級委員がそれを掌でドンと叩く。
男子3
ないこ
俺らのクラスはなんと、たこ焼き一本で勝負に出ることになった。
しかも屋台として出店するのではなく、校内で教室で喫茶店的なものとしてやる、と言うのだ。
もっと無難なところへ行くと思っていた俺は、クラスメイトたちの満ち溢れたやる気にまろと共に苦笑する。
いふ
ないこ
いふ
ニカっと歯を見せて笑ったまろに、 「当たり前じゃん」と返すと、 クラスの女の子の学級委員が全体に呼びかける声が聞こえてきた。
女子3
女子3
「仕事早いねぇ」とまろが小さく呟き、クラス全体でハモった「はーい!」という大きな返事に俺たちはまた苦笑を漏らしたのだった。
女子1
女子2
女子1
男子1
男子2
男子1
ないこ
女の子にデザイン画を渡されて、 クラスの男の子何人かと「たこ焼き屋」と書かれた看板を作っていた俺は、他人事のようにそう思う。
決して俺は楽しくないとか、 そんなのではなくて、 いつも笑顔のクラスがさらに明るく盛り上がっている。
その感覚がなんだか不思議だった。
ちなみに今まろは生徒会の仕事で席を外していて、 この教室にはいない。
みんなだって塾とか、勉強とか、家の手伝いとか色々あるはずなのに、ギリギリまで残れる人は残ろうとする。
そこまで文化祭を楽しむ気でいるのだ
男子3
すると、 看板を共に製作していた学級委員の男の子が同じく共に製作していた男の子と話している声が聞こえてきた。
男子4
男子3
男子4
どうやら不足したものがあるので買い物に行きたいが、遠くの画材屋に行くのが躊躇われるらしい。
確か前一度だけ、夏休みに中学生組の宿題で絵の課題が出た時、絵の具を買いに画材屋へ行ったことがあった。
あの画材屋への道は少々険しく、 上り坂や下り坂が繰り返し続いたり、信号が無い横断歩道があったりと危険な道も多い。
だが俺はその時、 中学生組から教えてもらった安全な道を知っているので、多少遠回りにはなるが行けると感じた。
ないこ
気づけば口がそう動いていた。
突如話しかけられた二人の男の子は一瞬目を丸くした後、 俺の方を向いて「いいのか?」と尋ねてくる。
ないこ
そう言ってにっこり笑った俺に、 二人は多少躊躇したものの「じゃあ・・・・・・」と予算を俺に託した。
男子3
ないこ
女子2
必要なものを持ってジャージを羽織り、教室を出ようとするとクラスの女の子一人から声をかけられる。
ないこ
女子2
女子2
ないこ
「紫と水色のミシン糸と赤と黄色の絵の具」と頼まれたものを脳内で繰り返しながら、騒がしい教室を後にした。
ないこ
少しして画材屋で買ったものが入っているビニール袋の中身を確認すると、高校への道を歩き始める。
ないこ
ないこ
予想を大幅に超えてきた文化祭の準備の楽しさに、鼻歌を歌いながら青とオレンジが混ざった空を見上げる。
そういえば、 最終下校時刻っていつだっけ。
遅れたら荷物も取りに行けないし、みんなにも迷惑がかかるしで取り返しのつかないことになってしまう。
そうならないためにもなるべく早く帰ろう、そう思って早足にした時のことだった。
ないこ
あいつと、再会したのは。
???
コメント
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えっ?えっ!? 嘘?まさかまさかまさか!! ええええ!?嘘やん嘘やん! 楽しみやん...!!