気がついたら、本田は自室の真ん中でまるで魂が抜けた廃人のように座っていた。
本田菊
いつから戦争を嫌悪するようになったのだろう。
いつから戦争に憎悪することを覚えたのだろう。
民の傷つく顔を見てからか?
自身の国が壊されていくのを見てからか?
大切なものが一つ一つ消えていくのが辛かったからか?
民のためと思っていたことが民のためではなかったと気がついたからか?
それとも、責められることがたまらなく恐ろしくなったからか?
本田菊
本田菊
なら、どこで間違えた?
どこの選択で間違えてしまった?
ミッドウェー海戦からか?
太平洋戦争からか?
日中戦争?
盧溝橋事件?
二・二六事件?
五・一五事件?
満州事変?
シベリア出兵?
二十一か条の要求?
第一次世界大戦に参加したのが間違いか?
いや、もしかしたら、日露戦争、日清戦争……
いや、開国を始めた時からかもしれない。
本田菊
民には死んでほしくない。
本田にとって国民というものは自身の体の一部のようなものだ。
国民が死ねば本田は死ぬ。
本田が死ねば、国民は死ぬ。
どちらにせよ、どちらとも必要不可欠な存在なのである。
本田菊
本田菊
本田菊
本田菊
本田菊
本田菊
本田菊
ギリ、と爪を噛んだ。
ぷつ、と血が、出てきた。
本田菊
本田菊
また、原爆以上の力が落とされたら……?
そんな想像をして、身震いをする。
本田桜
ふと、襖の向こうから姉の声が聞こえてきた。
本田菊
本田桜
姉の桜が襖を開け、本田の目の前で正座をした。
本田菊
本田桜
本田桜
……おかしい。
なぜだか、すべてを知っているような口ぶりだ。
そして、なんだろう。
この、胸騒ぎは……
本田菊
本田は世界会議で話された内容を桜にすべて話した。
桜は頷きもせず、ただ聞いているだけだった。
本田桜
本田菊
戦争なんてしたいわけがないだろう。
あんなにも苦しんだのに。
またその苦しみを味わえって?
たまったものじゃない。
本田菊
本田菊
本田桜
本田菊
桜は笑っていなかった。
それどころか、本田のことを睨んでいた。
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田菊
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田桜
本田菊
桜が言っていることは、きちんと理解できた。
ごもっともだ。ごもっともなのだ。
だが、もう嫌なのだ。
戦争だなんて代物はもう見たくもないのだ。
たしかに、小さな戦争が本田の体のあちらこちらで起きているかもしれない。
それでも、大きな戦争よりは可愛いものだ。
だから、できることなら、
戦争だけは、したくは、ない……
コメント
7件
あぁ、うぅ…泣きたくなってきた。 この作品の世界どうなっちゃうんでしょう… 戦争だけは絶対駄目だけど戦争をしなくちゃ駄目な状況……って考えたら虚しすぎて本当に泣いちゃいます( ; ; ) この作品が未来に起こるかもしれない世界と考えると本当に嫌ですね…… 平和がいいです。
戦争で得られたものなんて ほぼ苦しみでしかなかったですからね… 本当に、今の日本が戦争に巻き込まれないことを願うばかりです