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二年前
俺が担当した患者は
世間から離れているような、孤独を纏った子だった
俺の
経験したことの無い種類の人間だった
これは
あの子と俺の関係だからこそ
言えることだった──
俺は看護師になって八年目を迎えようとした時
突然 赴任を命じられた
新しい病院に赴任して
最初に担当した患者が
あの子だった
病室の扉を開けると
小説を読む男の子がいた
肌は雪のように白く
黒い髪は、窓から差し込む光に照らされていた
桃色の頬は、その黒髪でより一層濃く見えて
一言で言えば
大和撫子
見た目的に男子高校生だ
大人である俺が思っていいことでは無い
そう分かっているのに
その美しさから目を離せなかった
あの子
名前は菊だった
菊は
返事をしなかった
黙々と小説を読み続けた
また返事をしなかった
看護師さんは
俺を連れて病室を出た
アーサー
そう言い渡された俺は
昼食の時間までは休憩室に居て良いと言われたため
休憩室へ向かった
病院は迷路だ
通りすがる看護師さんに道を聞き
あまり迷うことなく辿り着くことが出来た
フランシス
アーサー
突然話しかけてきたのは
金髪ロン毛
フランシス
フランシス
フランシス
アーサー
席についてスマホを取りだした時だった
フランシス
アーサー
フランシス
フランシス
アーサー
アーサー
この時は 菊のことがあまり好きではなかった
まだ精神的に子供だった俺は
無視をされたことに腹を立てた
フランシス
俺の肩に手を置いて、微笑んできた
会話ができない
それだけで怖かった
俺は上手くやって行ける気がしない
きっと
いや確実に
菊は口を開かないのだろう
俺はそう思った時
舌打ちをした
俺が休憩室から戻ってきた頃だった
その時
菊の手に持つ小説を見てみれば
ページが全く進んでいなかった
目線をよく見れば
自分の親指を見ていた
小説を
読んでいないのか?
そう思った俺は
近づいて話しかけた
アーサー
どうせ返してくれない
聞いてすらくれないだろうと思った俺は
強い口調で話しかけた
菊
微動だにしなかった顔が 少し俺の方へ向いた
少し首を傾けた菊のさらさらとした髪が垂れた
アーサー
その美しさに見蕩れてしまった
アーサー
アーサー
追って言葉をかけたが
また体制を戻して
自分の親指を眺め始めた
その行動が不思議った
というより
不気味だったんだ
それからあっという間に2ヶ月という月日が経った
菊は軽い心臓病なため
薬を飲めば 酷い症状などは出ず、何の病もない人と同じように暮らしていた
それと同時に
菊は話してくれなかった
何時も
読んでいない
ぐちゃぐちゃになった小説を手に持って
親指を眺めていた
それだけで絵になったんだ
でも
本当に絵のようだった
その体制から全く動かないんだ
俺はもう話すことは諦めた
どうせ話してくれない
何度声をかけても
まるで俺がいないかのように
無視をし続けられる
そんな日々が続いて
今はもう
冬だった
一気に気温が下がり、秋は来なかった──
それと同時に
菊の病態は悪化していく
この病院に来て初めての冬 酷く体調を崩した菊を見た
菊
酷い咳をして
呼吸が苦しくなる
酸素が足りてない
俺は急いで酸素マスクを用意し、つけようとすると
菊
菊が初めて発した言葉だった
その言葉を無視して、急いで酸素マスクをつけると
菊は落ち着いて目を閉じた
落ち着いて、酸素マスクが外れた頃
それは夕方だった
菊
長い間声を出していなかった菊は
声が枯れて、話すことに慣れていなかった
アーサー
菊
菊は俯いて涙を流していた
膝の上に乗る小説に沢山の涙が落ちる
初めてだった
菊の声も
菊の涙も
病状が悪化したからこそ、 知れたことだった
だからといって、 これが言い訳なんかない
アーサー
俺が問いかけると
菊
その瞬間だった
俺に怒りが湧いたのは
アーサー
菊
アーサー
アーサー
俺はこの時、なんと言えば善かったのだろう
菊
俺には分からない
菊が死ねばいい理由など
俺には分からなかった
アーサー
アーサー
ただ
思うままに伝えたんだ
菊
話すだけで息を切らす菊は
立ち上がった
その時だった
菊
菊は倒れた
膝を着いてしゃがみ、頭を抑えていた
アーサー
菊
菊
酸素が全身に行き渡らず起こった 立ちくらみだろう
アーサー
菊
たくさんの息が混じった叫びだった
菊が何をしたいのか分からない
俺は菊の気持ちを聞かず、ベッドに戻した
体力もない菊は無気力に外を眺めた
俺はどうすれば良いか分からなかった
こんな俺が
菊を
追い詰めたのか──
コメント
1件
深夜に書いたのでおかしな部分が多いかもです…… 朝起きて書き直すかもです。 新作書いて消してを繰り返していますがそんなところもあいすべきですね。