🌹 第2話 運命って、信じる?
次の日の放課後、昨日の約束どおり図書室へ向かうと、菜月はもう席に座っていて、私を見つけると小さく手を振った。
菜月
紬さん、こっち
その声だけで、なんだか胸が軽くなる。 隣に座ると、菜月は昨日の続きみたいに自然に話し始めた。
菜月
昨日の本さ、あれ映画化してるの知ってた?
紬
え、知らなかった!
気になる…!
気になる…!
菜月
じゃあ、今度一緒に観よ。紬さんがどう感じるか知りたい
そう言いながらページをめくる指がきれいで、ふと横顔を見てしまう。 菜月は気づいてないふりをして、本の話に戻った。
すると菜月がふと、空を見上げながら話し出した。
菜月
紬さ……“運命の赤い糸”って信じる?
紬
えっ、急に?
腰が引けるほど唐突な質問だったけど、 菜月の声は落ち着いていて、どこか真っ直ぐだった。
菜月
なんか今日読んでた話に出てきたんだ
菜月
誰にでも一本だけ、どこかで誰かと繋がってるってやつ
紬
うーん……ロマンチックだけど、あるのかなぁ
菜月
あると思うよ、僕は
即答だった
菜月
だってさ
菜月
たった一度の偶然が、本当は何年も前から決まってたことだったって…...
菜月
そんなの、素敵じゃない?
夕日で赤く染まった菜月の横顔は、 少し大人びて見えた。
なんとなくドキッとして、 返事が遅れた私を見て、菜月はくすっと笑った。
菜月
紬さんは信じないタイプ?
紬
......信じたい、かも
菜月
じゃあ、いつかさ。
紬にも“この人だ”って思える誰か、見つかるよ
紬にも“この人だ”って思える誰か、見つかるよ
そう言って、菜月は優しく私の方を向いた
その目が、少しだけ切なくて―― 私はなぜか胸がきゅっとなった。
その日、初めて知った。
菜月は“ただの優しい子”じゃない。 どこか繊細で、深くて、 内側に静かな情熱みたいなものを持ってる。
それが、少しこわいような…… でも惹かれるような。
そんな気持ちが、ふわりと胸に灯った。






