湊
今日は早めに帰宅できると思ってたのに、 部長に付き合わされたせいで終電ギリギリだよ
ここの地下鉄、遅い時間は人が少なくて怖いんだよな
上り下りの線路に挟まれる形でホームがある平凡な駅だが、飛び降り防止措置がないせいでよく自殺者が出ることで有名だ
改札を抜けて階段でホームに降りると、意外にも人が多かった
ただ皆虚ろな表情で立ち尽くしている
湊
そう思いながら、若い男性サラリーマンの後ろに並んだ
しばらくして、放送アナウンスが流れる
放送アナウンス
するとベンチに腰掛けていた中年男性が俺の横を通って白線前に立った
湊
と思う間に、男は飛び降りていた
高速で進入してきた鉄塊にぶつかった男の身体は人の形を保てなくなり、一瞬でひしゃげて擬音化できないような耳障りな音を立てた
そして衝突点から周囲に赤い飛沫が撒き散らされた
衝突した位置に近かった俺は、 真っ正面からその鮮血を浴びてしまった
快速電車の先頭車両がホームを通過した頃にようやくブレーキ音が響いた
湊
慌ててハンカチで顔を拭いていると、階段を降りてきた一人の乗客が俺の隣の列に並んだ
そいつの顔を見た俺は全てを把握し、全速力で階段を駆け上がった
コメント
2件
なるほどです!
解説 飛び降り自殺をした男性が隣の列に並んだ。正面から鮮血を浴びたのは、まわりの人が全員幽霊だったから