霜月舞白
( 寒… )
木枯らしが容赦なく 丸出しの首に吹き付け、
指先が凍る帰り道。
朝飛雄にマフラーを 貸したのは良いものの、
カイロを土に落として 捨ててしまったから、
いつもより早足で 家までの道を歩く。
霜月舞白
( 予備持っておけばよかった )
これからは予備のカイロ 鞄に入れておこう。
そう決意した、その時。
霜月舞白
わっ
後ろから温かい何かが 首に触れた。
驚いて振り返ると、 そこには久しぶりに見る顔が。
及川徹
やっほー、久しぶり舞白ちゃん
霜月舞白
及川
及川徹。中学の頃の同級生だ。
そこそこウザイ性格をしてるが、 悪いヤツではないと思う。
及川の手には今まさに 欲していたカイロがあった。
及川徹
こんな寒い日にマフラー忘れるとか
及川徹
舞白ちゃんって結構おっちょこちょいだよね
霜月舞白
私が忘れたんじゃない
及川徹
?
霜月舞白
はぁ…
呑気にハテナを浮かべる 及川に呆れながら、
横並びで歩を進める。
及川徹
そういえば舞白ちゃん彼氏できた?
霜月舞白
できないけど
及川徹
うそー?中学の時モテてたじゃん
霜月舞白
モテてるかと彼氏ができるかは別問題
及川徹
そういうもんかな?
及川徹
及川さん絶賛彼女募集中だから貰ってあげてもいいよ
霜月舞白
遠慮しときます
及川徹
ちぇっ
霜月舞白
どうせ彼女に振られたんでしょ
及川徹
なんで分かるの?
霜月舞白
彼女に振られてすぐに別の女探す男とか論外
及川徹
辛辣
及川徹
舞白ちゃんそんなんだから彼氏できないんだぞー!
及川徹
あっかんべー!
こういうめんどくさい性格だけど、
凍えそうだった私に カイロを貸してくれたコイツは
きっと根は優しいんだと 思う(思いたい)。
「彼氏」という言葉に 飛雄の顔が思い浮かんだのは、
私だけが知る秘密。