翼
……はぁっ、はぁ
思わず逃げてしまった…
翼
……今から戻っても
行きづらい……
翼
翼
……なんで、なんて
翼
……知らないよぉ…
翼?
そんなわけないでしょ?
翼
……っ!!?
バッと振り返る
翼
……誰?
翼?
わたしよ?
周りには誰も居ないのに、
声だけが私の頭にこだまする
翼
……誰よ
翼
誰なの!!?
肩に手を置かれて、 今度は来た方を振り返る
翼
っ……!!!?
私の目に映るのは……
翼
わ、私……?
翼?
そうだよ
翼?
私は貴方
翼?
貴方は私
翼?
ずっと、生まれた時から一緒だったじゃない
ニタァッと、そいつは笑う
翼?
『死にたがってきた理由が分からない?』
翼?
笑わせないでよ
翼?
そうやって逃げちゃって
翼
いや……
翼?
友達関係が上手くいかなくて、
翼?
いじめられ始めて
翼?
両親からの暴力
翼?
挙げ句の果てには捨てられて?
翼
そ、んなこと……
翼?
そんなこと?
翼?
そんなことで今ここにいたりしない?
翼?
バカじゃないの?
翼?
そんな事で今ここにいるのが事実よ
翼?
あなた……
ギュッと、目を瞑る
耳も塞いだ
何も聞きたくない
やめて……消えて
翼?
わたしのクセに……弱いのね
翼
っ……!!!
……そう
私は無力で、
とても弱い
翼
……あんたに、言われる筋合いはない
翼
私は、私が1番分かっていればそれでいいの
翼?
翼?
……バカにしてんの?
翼?
私は貴方なの
翼?
貴方は私なの
翼?
私が、貴方のことを充分に分かってる
翼
……私は、1人なの
翼
独りだから、
翼
あんたなんて知らない
翼
あんたは私じゃない……!
絞り出した声は、 彼女に届いただろうか
翼?
……あっそぉ
翼?
じゃあ【赤の他人】から言わせてもらうけど、
翼
……なに
翼?
今なら死ねるよ?
翼
……は?
翼?
誰もいない
翼?
今ならやっと死ねるよ?
翼?
私が手伝ってあげるよ?
そう言って、彼女は私の手を掴んだ
翼
っ…!!
翼
まっ……
翼?
はい
ポイッと、崖に放り込まれた
翼
……あ
私が感じるのは、一瞬だけど宙に浮いてるような重力を感じない事で、
私が見えるのは、高さがあって小さく見える下の地面だけ
翼
私は……
死にたがってきたハズなのに
翼
っ……
翼
思っちゃダメ……
翼
わかってる事なのに……
落ちていく感覚がスローに感じてる今、
思わずには居られなくて……
翼
……助けて…
翼
まだ、
まだ、
翼
…死にたくない……!
その瞬間、誰かに抱きかかえられた
悠
待ってました
翼
……!
悠
……間に合ってよかった
悠
ちゃんと、届いたよ
翼
……ゆ
悠
あとは、俺に任せて
安心したのか、私はすぐに意識を失った







