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6 - たった一人で戦い続ける者達1

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2025年06月23日

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第六話 たった一人で戦い続ける者達1

あはっ……

やっちゃうよ~ん!

きりやん

ねぇ君たち

きりやん

最近町に下りてるかい?

シャークん

おう、おかえり

きりやん

あぁ疲れた

帰ってきたきりやんはソファに寝転んだ

シャークん

こないだ図書館に行ったとき以来行ってねぇな

きりやん

きもちいー

きりやんはソファの上ででろんと溶けた

大きな桜の木が一本だけ立っている 広い平原に

スマイルは二階建ての立派な家を建てた

その家には現在――

三人の男が住んでいる

一人は家主のスマイル

もう一人は その助手であるシャークん

そして最後の一人は この土地を所有する聖職者きりやん

家の周辺には畑が広がっている

以前スマイルが管理していた

陰鬱で荒れ果てた

雑草(薬草)は見る影もなく

きりやんによって美しく整地されていた

きりやん

いや農業楽しいわ

きりやん

俺転職しようかな

シャークん

何採れた?

きりやん

にんじんとじゃがいも

シャークん

今日はシチューでもすっか

きりやん

お、いいねぇ

きりやん

何肉のシチューですか?

シャークん

ニワトリとウサギ、どっちがいい?

スマイル

ブタ

とんとんと足音を鳴らしながら

二階から家主のスマイルが降りてきた

シャークんは階段を見上げてた

シャークん

おい~豚肉はねぇから買ってこい

スマイル

狩ってくる

スマイルは意気揚々と

倉庫から斧を取ってきた

その様子を見たシャークんは

まためんどくさそうにげっそりとする

シャークん

お~いそれ処理すんの誰だと思ってんだよ

シャークん

めんどくせぇ

きりやん

あ!

きりやんは起き上がった

きりやん

牛肉も入れて肉混ぜ混ぜシチューにしようぜ!

シャークん

数日分の食材なくなってもいいならやるけど

きりやん

あ、ダメです。やめます

きりやんは再びソファに沈んだ

それを後目に

出ていこうとしているスマイルが

シャークんの視界に入った

確かにこの野山には野豚が生息している

今までシャークんも何度も狩ったし

なんならスマイルに生息地を

教えてもらったほどだ

シャークん

おいスマイル

シャークん

ほんとに狩るなら自分で処理しろよ?

シャークん

俺やんねぇからな

スマイル

えぇ……

玄関の扉に手をかけて

スマイルは振り返った

スマイル

あぁ……じゃぁいいや

シャークん

なんだよこいつ

きりやん

やりたいことしかやんねぇな

スマイルはごとりと斧を

玄関近くの壁に立てかけた

きりやん

(あれ誰が片付けるんだろ……)

そんなことを考えながら

スマイルもシャークんも

この野山に詳しそうな印象を覚えた

きりやん

ねぇ、シャークんとスマイルはいつから二人で一緒にいるの?

シャークん

ん~?

シャークん

あんまりカレンダーとか気にしたことねぇんだよな

シャークん

確かでも……もう五,六年前になるか?

きりやん

へぇ……

スマイルから返事はなかった

スマイル

俺も図書館行った以来町下りてない

きりやん

なに?

きりやん

急に話掘り返さないでくんない?

スマイル

お前が聞いたんだろぉ

スマイルがソファの前に立つと

きりやんは起き上がって

ソファに座りなおした

その隣にスマイルが腰をかけた

きりやん

最近さぁ、町めっちゃ雨降ってんだよね

スマイル

雨?

スマイル

それが何?

きりやん

いやそんだけ

スマイル

ふーん

シャークんが料理をする音が部屋に響く

きりやん

……お前らじゃ話にならん!

沈黙に耐えかねたきりやんが

ソファから立ち上がった

スマイル

急になんだよ

きりやん

なんか情報出ねぇかなって期待したんだよ!

スマイル

どういうこと?

きりやん

もういいもういい

きりやん

ちょっと外の空気吸いにいってきま~す

きりやんはそのまままた

外へ出て行ってしまった

シャークんとスマイルは

顔を見合わせて首を傾げた

きりやん

お~い、吸血鬼さーん

さぁっと風が吹いて

桜の木の葉がざぁっと音を鳴らす

きりやん

……え、いないの……

きんとき

ちゅう

きりやん

ぅおわっ!びびったー

きりやんの背後に現れた

きんときはぺろりと舌なめずりをした

にこにこと笑顔なきんときに

きりやんは首筋をさすった

きりやん

え?吸った?

きんとき

吸った

きんとき

もっと背後に気を付けたほうがいいんじゃない?

きりやん

あぁ……うん、気を付けるわ

きりやん

ご忠告どうも

きんとき

いえいえ

きんとき

それで何か用?

きりやん

町町

きりやん

町に雨が降ってるの!

きりやん

知ってる?

きんとき

そりゃ町を拠点にしてますからねぇ

きんとき

知ってますよ

きりやん

あぁよかった

きりやん

やっと話通じる人に出会えた

町の異常現象について

話がしたかったというのに

シャークんもスマイルも

まったくと言っていいほど町に無関心だ

きりやん

長くない?あの雨

きんとき

確かにずっと雨だね

きんとき

なのにここは雨降ってないしなんか変だね

この山と町は隣接しており

気候はいつも同じだ

なのに町にだけ雨が降っていて

山はお天道様が照らしている

きりやん

でね?俺聖職者でしょ?

きりやん

気付いちゃったわけなんですよ

きんとき

何?

きりやん

あの雨――悪魔の仕業だ

きりやんがきらりと眼鏡を光らせる

きんとき

はあ……

きりやん

何が言いたいかと言うとね?

きりやん

……あーもうめんどくさいな

きりやん

君のことあの家の住民に説明していい!?

きりやん

あいつらにも説明したいから一緒に聞いてくんない!?

きんとき

俺が吸血鬼だとか精霊だとか言わないならいいよ

きりやん

あ、いいんだ

きりやん

じゃぁ俺の友達ってことで紹介しよう

きりやん

なんでバレんの嫌なの?

きんとき

化け物扱いされたら危害加えられるかもしれないでしょ

きりやん

あぁなるほど……

きりやん

いや普通に吸血鬼のほうがこわいけどね?

きんとき

それはガチでそう

きりやんは魔族のスマイルには

すぐに人間じゃないことが

バレるだろうなと思ったが

スマイルは自分に

敵意がなければ余計な詮索は

しないようだったので

大丈夫だろうと余計な心配は

頭の隅に追いやった

きりやん

わかった

きりやん

じゃぁ行こう

きんとき

はいはい

きりやん

ただいまー!

三十分ほどで帰宅したきりやんは

元気よく扉を開けた

きりやん

はい皆さん集まって集まって~

シャークん

今手ぇ離せねぇわ

シャークんは夕飯を作っており

椅子に座って本を読んでいるスマイルは

完璧にきりやんを無視していた

きりやん

(そういうとこが興味なさすぎって言われるんだぞ……)

きりやん

あ、きんとき

きりやん

飯食ってく?

きんとき

いいの?

きんとき

いただいちゃうよ?

きりやん

いやそういう意味じゃないからね?

きりやん

うち今晩シチューなのよ

きんとき

あぁ、食う食う

きりやん

じゃぁどうぞ

きんとき

お邪魔しまーす

スマイル

えっ?

スマイルが顔を上げて目を丸くした

家主の許可なく他人が入ってきたのだから

驚きもするだろう

スマイル

だ、誰?

きりやん

俺の友達のきんとき君です

きんとき

こんちわー

きんとき

きんときです、よろしくぅ!

ガチャン――ッ!

大きな音が鳴って全員が台所の方を見た

台所からふらふらとシャークんが出てきた

きりやん

シャークん?

きりやん

なんか落とした?怪我した?

スマイル

薬なら棚にあるけど――

シャークん

きんとき――、本当にきんとき?

シャークんはきんときを見て

ばっと口を塞いだ

そんなシャークんにきんときは首を傾げる

きんとき

――?

きんとき

俺はきんときですけど

きんとき

あなたは誰ですか?

シャークん

(俺を――知らない?)

シャークん

(いやでも普通に考えてあり得ねぇ)

シャークん

(同じ名前の別人?)

シャークん

(でも顔……あんな顔だったっけ)

シャークん

(あんま覚えてねぇ……)

ふらふらとシャークんは後ずさると

裏口の方に駆け出していった

三人はそれを静かに見送った

きりやん

……え、シャークん行っちゃったけど

スマイル

様子見てくる

きりやん

あ、うん

スマイルは重い腰を上げて

シャークんの後を追いかけた

裏口のドアは少しだけ開いており

シャークんが慌てて外に

飛び出していった事が窺えた

スマイルが外に出ると

ぽちがスマイルを出迎えた

スマイル

シャークんどっち行った?

ぽちはわん、と大きく吠えると

スマイルを案内するように歩き出して

スマイルはその後を追って歩き出した

シャークんは桜の木のふもとにいた

地面に手をついて必死に何かを掘っていた

スマイル

シャークん?

シャークん

土まみれになった顔が振り返る

よほど急いでいたのか

シャークんは肩で呼吸をしていた

スマイル

急にどうした?

シャークん

……スマイル

シャークん

あのきんときってやつ……人間かなぁ?

スマイル

シャークん

いや、人間じゃねぇかも

スマイル

なんでそう思ったの?

シャークん

……俺昔きんときと会った事あるんだよ

シャークん

あの、あんま詳しく説明できねぇんだけど

シャークん

会った事あるんだけど……

シャークんは言いづらそうに

視線を右往左往させる

スマイル

会った事あるんだけど?

シャークん

きんときはそん時――

――死んだんだよ

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